49話 決意
領主さんとゲームをして1ヶ月。
シェイルはまだ目を覚まさない。
僕は毎日シェイルの部屋に行って、その日1日にあった事を話してる。
別にシェイルに聞こえているわけではないのだけどね。
でも、何かを伝えていたいんだ。
「今日は街のメインストリートが直ったよ」とか「エディ婆がお見舞いに来たよ」とか。
そんな風に。
「ねぇシェイル。今日はね、またケンゴが来たんだ。他の妖精の守人とかと一緒にね。
ルトのやつ止めてくれ!あいつ待っている間に死なねぇ程度の罰探してガンガン傷つくりやがるんだ!って。
ケンゴが疲れた顔してたよ。よっぽど大変なんだろうね。領主の仕事でもさせてなさいって言っておいたよ。
あの人達ってさぁ、コント集団か何かなのかな?殺し合いしてた僕と普通に会話するとか変だよね。まぁ、それに答える僕も僕だけど。
何と言うか……毒気が抜かれた感じだよね。あんなに殺気ぶつけてたのに。もういっか、って感じになっちゃった。殺意って続かないもんだね。
うん、僕としては彼らの処遇はもうシェイルに一任しようと思うよ。
今日はこれくらいかな。じゃあまた明日ね」
また明日、と言ったけど、まだ離れがたいな。
シェイルの小さな手をギュッと握る。
1か月前、僕は見てる事しかできなかった。
シェイルが、妖精の守人と戦っていた時。
ケンゴや領主さんと戦っていた時も、僕は何もできなかった。
ただ圧倒的なその力を振るう様子を、眺める事しかできなかったんだ。
僕は、普通の人と比べたら強い。
この街でも強い方だと思う。
でも、僕は弱かった。
多分、と言うかほぼ確実に領主さんには勝てなかった。
万全の状態でケンゴに挑んでも、勝てる確率は五分五分。
相手は魔法使いで、後衛、遠距離攻撃を専門としている。
相性の問題とかもあっただろうけど、僕が叶わない事に変わりはない。
僕は弱い。
この街の人や、門兵君や、侍女さんや、店主さんを守れなかった。
シェイルが羨ましいと思ったよ。
街中の人を守る事ができて。
誰も死なせなくて。
僕にはできないよ。
だから、羨ましい。
でも。羨ましいって思う以上に、強くなりたいって思った。
強さが欲しい。
皆を守れるような。
シェイルの足を引っ張らないような……シェイルを守れるような強さが欲しい。
う~ん、我ながらシェイルの事しか考えていないな。
……切り替えて考えていこっか。
確か、当主さんは元Sランク冒険者だったね。
て事は当主さんの伝は相当なものっだって期待していいだろうね。
善は急げ、だ。
ちょっと相談しにいこう。
シェイルについても知りたいし。
立って、シェイルに話しかける。
「早く起きてね、シェイル。僕は待っているから」
1か月前とはちょっと違う台詞に、自覚する事がある。
ずっと避けていた、シェイルの膨大な力。
シェイルは一体何者なのか。
それが無性に知りたいんだ。
前にも知りたいって思った事があったなぁ。
その時は理由はわかんなかったけど、多分、今なら解る。
シェイルにいついて、僕が一番詳しくありたい、そんな自分勝手な独占欲。
そういう事なんだと思う。
相手は10歳だし、あり得ないって事で、自分に無意識にブレーキをかけてたんだと思う。
そういう感情はないって。
まぁ、前世の分の年齢を足したらシェイルの方が年上って事になっちゃうけど。
少し客観的に考えてみたら、僕の気持ちって分かりやすかったと思うよ。
シェイルの隣にいたいって思うし、シェイルの役に立ちたいって思うし、シェイルと離れるのは寂しいし、シェイルを守りたいと思ってる。
僕はシェイルが好きだ。
さっきまでのうだうだした考えをまとめればそうなる。
シェイルの側にずっといたい。
シェイルを守れるような強さが欲しい。
シェイルを好きなのであれば、当然の感情だよ。
ま~、この事は当主さんには秘密だね。
相談する前にそんな事言ったら協力してくれなくなりそう。
当主さんは強い。
元Sランク冒険者なのもあるし、冒険者ギルドサンレイズ支部のギルドマスターもやってるくらい。
その分伝も結構あるから機嫌を損ねるのはねぇ、悪手以外の何物でもないと思うよ。
あ、ちなみに当主さんは僕よりも強いよ。
だから領主さんはゲームの参加禁止にしたんだろうね。
妖精の守人の構成員が蹂躙される様子しか想像できない。
でも、領主さんと戦ってたらどうだろう。
領主さんは魔法型。
当主さんは戦士型。
魔法を使わせなかったら当主さんに軍配が上がるだろうけど、領主さんには精霊術があるからね。
接近できないで領主さんの方が勝てそうかな?
奥さんの場合だと……やっぱ経験の差が出そう。
領主さん600歳だからねぇ。
当主さんの執務室のドアをノックする。
「当主さん。ううん、ヴィクターさん。相談したい事があります」
スバル漸く自覚しました
恋愛のタグがやっと仕事をしました




