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神々の箱庭  作者: チャーリー フール
第2章 はじまり
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48話 奇妙な見舞い

スバル視点に戻ってきました

 ぐらりと傾いだシェイルの体を慌てて抱き止める。

 淡い光は消え、白の綺麗な服は、シェイルが最初に来ていた服に戻り、髪の長さも肩口までになった。


 元のシェイルだ。

 ちょっと安心したような、残念なような気がしたけど、今はそれどころじゃなくて!


「ちょっ、ちょっとシェイル!?」


 顔青いよ。

 血の気ないよ!

 体も冷えてるし、肌はいつにも増して白いし、揺すっても目を覚まさない。


「オロオロするでない、スバル」

「エディ婆。え、ちょっと、これどうすれば……」

「オロオロするでないと言うておろうに、やれやれ」


 エディ婆は肩をすくめると、団子状に結わえていた髪をとく。

 さらりと伸びた髪が、深い海のような青色になる。


 え、何。

 エディ婆も変身できるのか。


「天人族、エディ・ボアナの名の下に、勝者をスバルとし、このゲームの終了を宣言する!」


 その言葉に、ようやく終わったのだと実感する。

 僕以外の皆もそうだったみたい。

 歓声をあげたり、家族で抱き合ったりして喜んでいる。


 終わった、という事で、張り詰めていた感覚がなくなり、フッと意識が遠くなった。




──2日後


「本っ当、ごめんなさいっ」


 僕はベッドの上でエディ婆に謝っていた。

 理由は当然、事後処理を一切せず気絶してしまったからだよ。


 あえて言い訳させてもらえるなら、三日徹夜のデスマーチの経験があるとはいえ、パソコンと睨み合うのと、ずっと戦い続けるのじゃ疲労のレベルが全然違うんだよ。

 領主さんたちへの怒りだけが僕を動かしてた感じなんだもの。


「いや、それなら別に構わんよ。1日戦い続けたんじゃ。普通はそうなるさ」


 エディ婆の優しさに感謝します~。


 エディ婆の協力もあって街はもうほとんど元通りなんだって。

 魔法でチャチャッと直したんだと。

 魔法すごい。


「にしても、エディ婆って家名持ちの貴族で天使だったんだね」

「まぁのう。目立ちたくないから普段はこの姿なのだがのぅ」


 今のエディ婆は、お店にいるときと同じ、白くなった髪の毛を団子状に結った老婆の姿。


「天使ってことは、エディ婆の本業は世界の監視者?」

「まぁ神との契約はしておらんはぐれ天使だからのぅ。そうなるのであろう」


 天使っていうのは、神と契約をし、神に仕える天使と、神と契約をしていないはぐれ天使の2種類がいるんだって。

 でもって、はぐれ天使の役目は世界の監視者っていうものらしい。

 前シェイルに読ませてもらった本にそう書いてあった。


「ところでエディ婆。死者蘇生ってエディ婆もできるの?」


 できたらもうチートレベルが半端ないよね。


「いや、不可能じゃ。誰にもな」

「え?」

「シェイル、あの子が異常なだけじゃ。死者の完全蘇生など、最上位の要の神達ですら不可能なのじゃぞ」


 ……え?

 え?

 ちょ、ちょっと待って、え?


 そんなとんでもないものって……でもシェイル、あの時街にいる全員蘇生させたんでしょ?

 え、シェイル大丈夫……なの?


「無事なわけなかろうて。あの子のMP、というより魔力の循環は普通の物とは違う。それを有り余ってなお、生命力を吸い尽くすほどの負荷じゃぞ」

「な!?」


 慌ててベッドの上から立ち上がって、シェイルの所に行こうとする。

 でも体に力が入らなくて、よろけてしまう。


「大人しくしておれ」

「ぐっ」


 額をデコピンされベッドに倒れ込む。

 下手に動いたから疲れてしまったよ……。


「シェイルは7年前にも1度、1人を蘇生した事があった。今よりもステータスが脆弱であったとはいえ、その後1週間寝込みおった」


 7年前……。

 3、4歳の時に。

 1週間寝込んだ。


「良いか。たった1人の蘇生で1週間じゃぞ。今となっては半日程度で目を覚ますじゃろうが、それでも今回蘇生させた人数は3桁を越えておる。……暫くは目を覚まさないであろうな」


 そんな……。

 思わず下を向いたその時、扉の向こうが騒がしくなった。


「よう!邪魔するぜスバル。見舞いに来てやったぞ!」


 …………。

 ………………は?


「前から思っていたけど……君はもうちょっと空気を読む力を身に付けるべきだと思うよ」


 あと常識も。


「わお。何か敵意がびしばしくる。何だ?スバルがそうなるって事はステラ嬢ちゃん、まだ目ェ覚ましてねぇのか?」

「空気は読めない癖に推理力は高いんだね。で、何しに来たの。ケンゴ」

「え?言ったじゃねぇか。見舞い」

「本気で言ってる?」

「本気だが?」


 一回死んで頭変になったのかな?この人。

 と、銀髪の少年を見る。


「いやいや、可笑しくなってねぇからな。オレの頭」

「いや、正常な人が殺そうとした人をお見舞いになんて来ないから」

「ま、普通はそうだな」

「普通じゃないって認めた」

「地味に面倒臭ェなお前」

「シェイルに剣向けたから敵」

「あ、なる。道理でガンガン殺意向けられてるわけだ」


 はぁ、何か疲れた。

 取り敢えず本題に入るか。


「で、お見舞いっていう珍妙で怪しすぎる建前持って何の用?」

「あ~、実はな、ルトがやった事がこの国の上の方にバレちまってな、ルトの立場がヤベェんだ」

「その前にルトって誰?」

「メカ()()・マール」

「あぁ」


 領主さんの事言ってるのね。

 やっぱ、やっちゃ不味かった事だったんだ。


「で?弁護しろって?」

「いや?弁護できることなんてねぇだろ?」

「いや、まぁ、そうなんだけど……」


 心底不思議そうに首を傾げられてしまった。

 え?

 普通はオレ達を助けろって感じだと思ってたんだけど。


「で、一応こっちに対して何か言う事あっかなっていう事をスバルとステラ嬢ちゃんに聞きに来たって訳」

「君大分おかしいよ」


 減刑じゃなくて加刑望むって。


「いやぁ、ルトが負けたのに助けられちまってする事がねぇから罰でも欲しいなって言ってなぁ」

「…………」


 もうどうツッコんだら良いのかわからない。

 頭を抱えてしまう。


「取り敢えず死んでみるかって言って」

「止めさせなさい」

「全員必死に止めたぜ。で、罰探しに来たんだ」

「あぁ~。じゃあ取り敢えずシェイルが目を覚ますまで待機させといて」


 そう言って、取り敢えず帰ってと手を振る。


「おぉ、助かるわ。あんがとな」


 そう言って、嬉しそうな顔をし、ケンゴは帰っていった。

 ……疲れた。


「お疲れ様じゃ」


 とエディ婆が言ってくれた。

 ありがとう……。




 3日かけて体調を回復させた僕は、漸くシェイルの部屋に行くことができた。

 そこには、人形のような顔をしたシェイルがベッドに寝かされていた。


「早く起きてね、シェイル。僕も皆も待っているから」






 それから2ヶ月。

 シェイルは目を覚まさなかった。

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