5話 シェイルⅢ
ブクマ、ポイント、感想、誤字報告お待ちしています
食事後、スバルはシェイルの部屋にいた。
『で?聞きたいことってどんな事なの?』
再びその質問をするスバル。
シェイルの様子からして、かなり重要なことではないか、と考えるスバル。
しかし、初対面の、今日はじめて会った少女に、聞かれることなどあるのだろうか。
ホテルのスイートルームくらいある、広い部屋。
窓際にあるソファーに腰かける。
明るい色のソファーに反して、部屋の空気は重く、暗く感じる。
その原因であるシェイルは、いったい何があったのだろう?
暗くなる原因は、スバルにあるのだろうか。
『貴方は、アキヤ・スバル、と名乗ったわよね』
『うん』
かなり真剣な様子で聞いてくるシェイルに、気圧されながらも答えるスバル。
シェイルは、ソファーの近くにある机から、紙を一枚取り出し、何かを手早く書いてスバルに見せた。
『その名前はこう書く?』
そこには、秋谷 昴と漢字で書かれていた。
『うん、そうだよ。漢字も知ってるんだね』
驚いたスバルはそう言う。
スバルの答えに辛そうな声を出すシェイル。
『ど、どうしたの?』
シェイルの泣きそうな声に、スバルは慌てて聞く。
シェイルは、ふかふかのカーペットの上にストンとへたりこんでしまった。
顔をうつむかせたまま、ポツリと小さくスバルに聞くシェイル。
『貴方は……ある大学院で、同じ研究者から……論文発表の権利を奪われ、濡れ衣を着せられたことは、ある?』
『!!?』
そう質問されたスバルは、目を見開いて驚いた。
スバルは転移者である。
それはつまり、この世界にいる人々は、スバルの元いた世界で起きたことを、全く知らないはずである、ということなのだ。
それなのに、シェイルは知っていた。
スバルの事を知っていたのだ。
『うん。……あるね』
『そ……う』
思ったより低くなってしまったスバルの声に、シェイルの沈んだ声が帰ってきた。
やっぱりそうだったんだ、と小さく呟いたシェイルは、ポケットの中からカプセル薬のようなものを取り出し、飲み込んだ。
何をしているんだろう、と思わず首をかしげるスバル。
そんなスバルをおいて、シェイルは、帰ってきてからずっとかぶり続けていて頭巾をとった。
すると、今まで隠れていた顔が見えるようになった。
シェイルは、後4~5年すれば、絶世の美女となるであろう美少女だった。
ほっそりとした輪郭に、スッとと通った鼻梁。
人形のような、というような表現の似つかわしい、可愛さを残した美女の卵であった。
この世には、神に愛されたような、と言っても過言ではない美少女は存在したのだな、と頭の片隅で思うスバル。
しかし、スバルは他のシェイルの容姿に目をとられていた。
それの一目見た感想は、白い、だった。
ただただ白かった。
白髪、とは違う光沢のある、綺麗な白い髪だった。
白銀のようなキラキラとした、肩までかかる髪が目を引いた。
次いで、瞳も見えた。
大きな双眸。紅玉のような赤と、青玉のような青。
シェイルは、オッドアイだった。
いかにもファンタジーというような容姿である。
驚いているスバルの前で、シェイルは正座をし、背をピンッと伸ばした。
シェイルの空気が落ち着いたものにか変わる。
そして、昴に向かって問いかける。
『貴方は、私が何故異世界、という存在を知っているのかを聞きましたよね』
『う、うん』
『私が異世界、そして日本語の事を知っているのは、貴方がいた世界と同じところに住んでいたからです』
『えっ!?それってつまり……』
『私は転生者、と言われる存在。正確に言えば、前世の記憶を持った状態で転生した存在です』
『つまり、同郷、ってこと?』
『そうなります』
『そうなんだ~』
『もうひとつ』
シェイルは一瞬躊躇った後、こう続ける。
『申し訳ありませんでした』
そして、頭を深く下げる。
『え!?なっ何?僕何もしてないよね!?』
初対面の少女に謝られ、テンパるスバル。
シリアスな空気を木っ端微塵に壊せる焦りかただ。
『私の兄が大変ご迷惑をお掛けしました』
『えっと、兄?』
『はい。私の元兄。大和光希です』
『なっ!?』
もう聞くことが無いと思っていた名前を聞いて、驚愕するスバル。
『私はシェイル・ステラ。そして、前世の名は大和美和。大和光希の、妹でした』




