45話 事件-最後の一人-
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──あと1人。そろそろゲームも閉めましょう、マール公。
そう言いながら、おばあちゃんの結界の中にいる人物に話しかける。
「それには賛同ですね。では、妖精の守人の最後の1人、創始者も参加させていただきましょうか」
私の呼び掛けに応える声。
これで最後。
彼さえ倒せばゲームは終わり。
そう考えながら身体中に込めていた力を抜き、神力を霧散させる。
神力が抜けた事により痛みが主張してくる腕を抑える。
筋が何本かイッてるだけね。
「光の癒し」を施して回復させる。
それでも体の怠さは抜けない。
さっさと終わらせるべきね。
「アンジェ。下がってて」
「ちょっとシェイル!?」
「大丈夫よ。それに干渉の際に負荷を大分肩代わりしてくれたでしょう?アンジェの方が休憩が必要よ」
「……わかったよ」
「後で大仕事手伝ってもらうから、しっかり回復しておいてね」
「うん、いってらっしゃい」
1つ息を吐いて意識を切り替える。
メカルト・マール。
彼は魔法と精霊術を使った戦闘のはず。
そこは私の得意分野でもあるわ。
静かに体中に力を込めなおす。
青白い光の放電が走り、耳元で弾けるような音を鳴らす。
空気は急速に冷えて、氷の世界が顕現する。
対して彼は、白い光を纏い、光球を幾つも宙に浮かべている。
その付近には、赤、黄、青など、様々な色の小球。
そういえば、彼は非常に珍しい全属性適正持ちだったわね。
相対するならステータスも調べておきましょうか。
名前:メカルト・マール
年齢:600歳
HP:6000/6000
MP:8000/8000
戦闘スキル:〈片手剣の鬼才〉〈探索〉〈五感強化〉〈魔闘法〉〈統率の鬼才〉〈物理攻撃耐性〉〈魔法攻撃無効〉
演算スキル:〈HP自動回復〉〈MP高速回復〉〈思考加速〉〈並列思考〉〈魔力制御〉〈魔法付与〉
生活スキル:〈全言語理解〉〈火炎耐性〉〈大地耐性〉〈疾風耐性〉〈流水耐性〉〈雷光耐性〉〈氷結耐性〉〈樹木耐性〉〈重圧耐性〉〈呪耐性〉〈鍛冶耐性〉〈大空耐性〉〈奇跡耐性〉〈濃闇耐性〉〈魅了耐性〉〈静寂耐性〉〈痛覚無効〉〈交渉〉〈範囲多重結界〉〈空間収納〉
固有スキル:〈精霊眼〉〈領主〉
ユニークスキル:〈精霊術─光の子〉
習得魔法:火:【火】【火炎】
土:【土】【大地】
風:【風】【疾風】
水:【水】【流水】
雷:【雷】【雷光】
氷:【氷】【氷結】
木:【木】【樹木】
重:【重】【重圧】
毒:【毒】【呪】
芸:【芸】【鍛冶】
空間:【空間】【大空】
光:【光】【聖光】【奇跡】
闇:【闇】【濃闇】
心:【心】【魅了】
無:【無】【静寂】
何ともまぁ、綺麗なステータスね。
完全に魔法特化型。
魔法に関しては舐めてかかれなさそうね。
別に、合図があったわけではない。
誰かが声をあげたわけでもない。
ただ、呼吸があったのかのように、同時に魔術と魔法を放つ。
私の氷と、彼の光球がぶつかり、真昼のように空を明るく照らす。
私は続けて準備していた魔術を使う。
「氷龍、雷龍」
氷と雷の龍が、両脇の魔法陣から現れ、マール公に向かう。
「氷弾、雷閃」
それに続くのが氷の礫と雷の刃。
息をつかせる間も与えず放つ。
これに耐えられる魔物はほとんどいないわ。
なのだけど、
「やれやれ、少々痛かったですかね」
マール公はあっさり煙の中から出てくる。
傷一つないわね。
それと少々と言うのは嫌みかしら?
〈魔法攻撃無効〉は伊達じゃないわね。
「では、次はこちらからです」
空中に浮かんだ光球が目にも止まらぬ速さで迫ってくる。
私の目には止まって見えるけれどね。
〈範囲多重結界〉の“魔法結界”に神力を加えてパワーアップさせる。
私の半径2mにできた結界に当たり、次々に爆散していく。
元々光属性は癒しの属性で、破壊は闇属性なのだけど?
結界がガリガリと削られているから、逆回復効果ね。
結界を解除し、羽根を使って上空にふわりと避ける。
「小手調べはこれくらいで良いでしょう」
「賛成ね」
幾つもの魔術と魔法の乱舞。
それは空を照らし、石畳の上で爆ぜ、数多の瓦礫を生産し、地を抉り、空気を焦がし、街を白く染めたわ。
止まらぬ魔の応酬。
でも、長期戦では私の方が有利だわ。
魔術、魔法。
それは共にMPを消費するもの。
でも、私は決してMPを消費しないわ。
それが私のMPが∞の理由。
MPは、魔力を放出し、体外に出すことで消費とする。
体外に放出して魔法を放った後に、魔力は空気中に霧散してしまうもの。
でも、私は違うわ。
術式と回路を組み合わせた物を、体に埋め込んでいるから、放出した魔力を体内に還元できるの。
術式というのは回路、つまり魔法陣が文字列化したようなものよ。
魔力が体内に還元されるのであれば、MPは減る事がない。
そして、空気中を漂う魔力さえ吸収できるからこその∞。
彼の魔法すらも利用できる無限の私と、有限のマール公。
経験という圧倒的な差があっても、長期戦に持ち込めば、私の方が優位なのよ。
「そろそろ終わりかしら?」
最後の彼の切り札。
それの対策も完璧だもの。




