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神々の箱庭  作者: チャーリー フール
第2章 はじまり
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44話 事件-暴走-

シェイル視点です

 ケンゴの様子がおかしい。

 そう気付いた時にはもう手遅れだったわ。


 上空、というアドバンテージを得て私は、神力を圧縮して創った剣を振っていたわ。

 向こうは焦っているはずなのに、その剣技に乱れはなかったわ。


 私の戦闘法は、魔術で相手を牽制して剣で一撃必殺。

 牽制の魔術を使う暇を与えさせないのだから、彼の経験と技術は本物ね。


 現在の私は凝縮された神力剣の力で半強制的に身体強化をしている状態。

 まずいわね。

 このままでは私の体が保たないわ。

 筋肉がズタズタになってしまうわ。


 そう若干の焦りを感じ始めていたら、僅かにケンゴの動きが鈍くなった。

 それを機に斬り込もうと接近する。


 そこでおかしいと気付いたの。


 体内から、黒とも紫とも言えるような靄がでてきている?

 剣を握る手にも力はなく、全身から力が抜けていて、気だるげに身を屈めている。


 戦闘中にそんなのあり得ない。

 罠?


 ケンゴがグルン、と首を回してこちらを見る。

 虚ろな目と、目があった瞬間、背筋に寒気が走った私は、羽根を使って上空に逃れる。

 それは正解だったわ。


 彼から溢れている靄のようなものが、一瞬で広場中に広がり立ち込めた。

 私が殺した妖精の守人の構成員の身体が腐り、ドロリと溶けたのを見て、ゾッとする。

 スバルをおばあちゃんの結界内に避難させておいて本当に良かったわ。


 ぼんやりとはしてられないわね。

 だって、その靄が私の方に昇ってきているんだもの。


 旋風、と唱え、風の魔術で散らす。

 でも晴れない。

 仕方ないわね。


「晶化!」


 氷最上級属性、つまり、魔術属性を使う。


 そもそも、システムの補助を受けたものを魔法と言うだけであって、初級属性であっても、システム外の存在が使うのは魔術になるのよね。

 私もよく初級属性の魔術を使うわ。

 魔術属性だと、消費するMPの負荷が重いもの。


 氷最上級属性は結晶。

 世界の結晶を司っているわ。


 あの不気味な靄を全て結晶に変え、粉々に割る。

 靄が晴れたのは良いけど、ケンゴの姿も一緒に消えているわね。


 一体どこに、と辺りを見渡す。

 刹那、悪寒を背後に感じ、慌てて空中から右手の屋根に飛び移る。


 後ろを振り返ると、濃紫の靄を纏った右手を振り下ろしたケンゴがいた。

 あのままあそこにいたら、今頃私も物言わぬ肉塊どころか、塵も残っていなかったでしょうね。


 先程まで蔓延していた、血の鉄のような臭いに代わって、腐敗臭が鼻につく。

 腐敗。

 これはどう考えても彼のスキルが暴走しているわね。


 属性スキルというのは、魔法、耐性、付与(グラント)能力など、何らかの形で、上級属性まで解放、つまり扱えるようになり、かつ最上級属性への適正があり、かつ複数のチェック項目を一定数の適正が確認できなければ、完全解放されない仕組みになっているの。

 とてつもなく手順が多いのよね、これ。


 そして、完全解放されていなければ、本人の意思では制御できないし、完全解放されればされたで、その膨大な力を制御下におけず、暴走させてしまうのよ。


 取り敢えず、あの暴走を止めないと街中に被害が及んでしまうわね。

 広場の溶けた石畳を見ながらそう思う。


 意識はもう飲み込まれているようね。

 あそこにいるのは破壊の意思のみ、といった所かしら?


 もう一度剣を構えて彼に接近する。

 神力を微量放出して、状態異常を防ぐ結界にする。

 これであの靄はほとんど気にしなくて良いわ。


 剣を持っていないため、動きが今一つであるのを利用し、斬り込む。

 廃退の力が凝縮された右腕を斬る。

 斬り落とす事はできたけど、同時に剣も割れてしまう。

 結構本気で創った物なのだけど!?


 右腕を失った事でできた隙に、相棒の名を呼ぶ。


「アンジェ!」

「わかってるよ!」


 私の呼び掛けにすぐさま答えるアンジェ。


 左手でアンジェの手を掴み、もう片方の手でケンゴの腕をとる。

 触れた瞬間、結界の耐久値がガリガリ削られていくのを感じる。

 属性スキルの力は伊達じゃないわね。

 それでもおかまいなく掴み続ける。


 スキルの暴走を止めるのは至って簡単。

 スキルを封じれば良いのよ。


 私は、天使であるアンジェと力を合わせれば、世界の根本であるシステムに干渉する事ができるわ。

 システムは、魂のステータスや、スキルなどを管理しているから、そこに働きかければ、固有スキル〈スキル封印〉位獲得させられるわ。


「礎たる世界の要よ、我が呼び掛けに応え給へ」


 祝詞に時間がかかり、結界がさらに削れる。

 薄くなった結界を突き破り、腐敗と廃退の力を持つ靄が腕にまとわりつく。


「──ッ!」


 刺すような痛みと不快感が腕を貫く。

 熱さが痛みと共に右腕でのたうつ。


 それでも、奥歯を噛み、無視して詠い続ける。


「我願うは固有の佑助。彼の者へ授け給へ──!」


 ケンゴのステータスにスキルが追加されたのを確認する。

 固有スキルの欄に、確かに〈スキル封印〉があり、ユニークスキル〈蝕王〉を灰色表示にして、封じている。


 空中からケンゴを連れて降りる。

 流石に空中から放り出すなんて事はしないわ。


 地上に降りて、痛む右腕を修復させる。

 結界に神力を注ぎ込む余裕すらなかったから、肘から先は焼け爛れ、一部紫色に変色しているわ。

 かなり痛い。


 まぁ無くならなかっただけ良いのかしら?

 1から腕を作って修復するのは流石に大変だもの。


「ぅ……」


 小さく呻き声がして、ケンゴの意識が覚醒する。

 ケンゴは既にボロボロね。

 神の力を破る力は諸刃の刃だったのでしょうね。


 火傷、腐敗、裂傷。

 私の右腕にあった傷が全身にあるような感じね。


「……生きてる。何で、ってあぁ。しかし、どうしてだ?」


 極めて訝しげな顔をして、聞いてくる。

 何でって、それは。


「だって、一方的な自滅じゃつまらないじゃない」


 そう、笑って返す。


「はっ、以外と戦闘狂なんだな。あぁ、何か最期にスッキリした感じだ」


 思い残すことはない、という風に満足げに言うケンゴ。


「最期じゃないわよ」


 目を瞑るケンゴにそう言う。

 聞こえてるかはわからないけど。


 最期なんかにはさせないわ。


「あと1人。そろそろゲームも閉めましょう、マール公」

いよいよ2章もクライマックスです

次話以降もお楽しみに!

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