40話 事件-シェイルの力-
スバル視点です
最初の魔術2つで兵士は片付いた。
物凄く、簡単に。
「じゃあ、順番に行こうかしら。セクルを殺したのは誰?」
「…………」
誰も答えない。
隠そうとして答えないんじゃない。
答えれないんだ。
シェイルの気配に圧されて。
僕が知っている誰よりも濃く、暗い、濃密な殺気。
シェイルは終始、人形のような整った笑みを浮かべている。
それが逆に怖い。
恐怖を掻き立てる。
侍女さんは、確か、あの弓使いが──。
「そう、貴女なの」
シェイルはそう言うと、弓使いを氷像に変えた。
多分、一瞬で絶命したと思う。
でも、驚くのはそこじゃない。
誰も犯人が弓使いだって言っていない。
勿論僕もだ。
そんな疑問すら読み取ったように、いや、読み取ったのだろう。
シェイルが口を開く。
「疑念が多いわね。じゃあ特別に教えてあげるわ。答えは簡単。貴方達の心を読んだだけよ」
ざわり、と空気が揺れる。
皆動揺しているんだろうね。
そういえば前、心が読める、何て事言ってたっけ。
「次はエル。……そう、貴方ね。じゃあさよなら」
また1つ、氷像が増える。
「店主さん達は……そこで倒れている人ね」
また1つ。
妖精の守人の構成員達は強い。
僕や侍女さんや、門兵君が相手取る事はできる。
でも、店主さん達や、侍女さんや門兵君すらも殺せる程度には。
でも、シェイルの足元には全く及ばない。
まるで、赤子の手を捻るように、いとも簡単に殺していく。
次元が違う、というのはこういう事を表すんだ。
「終わり?つまらないのね」
存外弱いのね、と煽るシェイル。
安い挑発ではあるけど、それが感に触れた妖精の守人の構成員がシェイルに向かっていく。
シェイルは、彼らを避けもせず、ただ凍らせていく。
氷の攻撃を抜けた奴がいても、雷が落ちてきて、そいつを焼いた。
誰1人、シェイルに触れることすらできていない。
「対魔術結界!」
1人が叫ぶ、と同時に街が薄いシャボン玉のような半透明の膜に覆われた。
対魔術?
え、それって──!
「あなたは魔術とやらを使うのでしょう!主様の手掛けたこの結界の中であなたは無力です。大人しくしなさい!」
シェイルの魔術を封じるって。
しかもシェイルの得意な武器は弓。
遠距離攻撃専門のシェイルは得意の分野を封じられたって事!?
「ふーん。確かにその術式厄介ね。簡単には解けなさそう」
「当然でしょう!いいから大人しく──」
「ねぇ、もしかして、の話なのだけど……私の戦闘スタイル、魔術と弓だけって思ってない?」
「それは──」
「思っていたようね。でも私、別に魔術封じられた位じゃ、ちっとも弱くならないのよ。残念だったわね」
ニッコリと笑って、正面で手を組み合わせるシェイル。
「いろいろ手段はあるのだけど、時間がないからこの手を使おうかしら」
そう言い、シェイルは目を閉じて、一言呟く。
「神力解放」
僕が〈世界の図書館〉の“文書記録”を鑑定しても不明としかでなかった力。
視界が真っ白の光で塗りつぶされた。
そして、そこには、白く長い髪をたなびかせ、赤と青のオッドアイを持ち、背は伸び、純白の服を着て、幼さの消えた、圧倒的な雰囲気を持つ美女がいた。




