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神々の箱庭  作者: チャーリー フール
第2章 はじまり
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30話 事件-かくれんぼ-

セクル(侍女さん)視点です

 領主がゲームを始めて一晩が経ちました。

 まさか本当にこの街全体を巻き込んだ事件を起こすとは思いませんでした。


 シェイル様にスバル様の護衛を依頼された私、セクルは驚きを隠せません。

 主に2つの事で。


 1つは、領主がここまで大々的に仕掛けてきた事です。

 ステラ家は、この国どころか、国外までもが注目する家です。

 1つでも情報を洩らせば、確実に破滅する大博打なのですから。


 そしてもう1つ。

 シェイル様がここまで読んでおられた事です。


 10日、この街を空けるなら、仕掛けてくるのは3日目か4日目。5日目にはならないという事。

 範囲として、この街を巻き込むであろう事。

 最初の襲撃は、広場とスバル様の2手に別れてくる事。

 エディ殿、当主様、奥様が何らかの方法で足止めされる事。

 スバル様が鍛練の際に使用される騎士服を持っていった方が良い事。

 妖精の守人に関する情報を紙にまとめた物も持っていった方が良い事。


 その他にもたくさんの事を私に教授されました。

 どこまで先を見通しておられるのか、私には全くもって理解が及びません。


「ねぇ侍女さん」

「何でしょう」

「探知に何も入ってない?」

「はい。……それがどうかされましたか?」

「何か……誰かに見られてるような気がするんだよねー」


 視線を感じる?

 誰かに見られているとでも?

 エディ殿の店の周囲には誰も居ないはずですが──。


「「ッ!」」


 私とスバル様、2人同時に立ち上がり、警戒体勢をとります。

 ()()はわかりませんが、非常に嫌な予感がぬぐえません。

 何か仕掛けてくるのでしょうか。

ピリピリとした空気が流れ、緊張が高まります。


「スバ──」

「静かに、今探して──っ!?」


 スバル様に話しかけた直後、店中が爆炎で包まれました。

 とっさの判断で、腕を頭上でクロスさせ、身をかばいます。

 襲撃でしょうか。

 店が崩れる音がします。


 普通なら、焼け死ぬか、瓦礫に閉じ込められるはずですが、熱さも痛みも感じません。

 きつく閉じていた目を薄く開きます。

 土埃がもうもうと舞っているのが見えます。


「危なっ。短距離転移魔法覚えとおいてよかった……」

「スバル様?」

「脱出成功。ブイ」


 その2本立てた指は何でしょう。

 それはさておき、短距離転移魔法という事は、咄嗟に店の外に逃れたという事でしょうか。


「あ~ぁ。エディ婆の店が綺麗さっぱり無くなっちゃった。これはムゴイ」


 慌てて顔をあげると、黒煙が朝の空に高く上っています。

 店は僅かな瓦礫を残して木端微塵になっています。


 中に居た捕虜達は確実に全滅したでしょう。

 物と一緒に人の体が焼ける臭いが辺りに立ち込めています。

 その付近に人影が3つ。

 また襲撃ですか。


「侍女さん。2手に別れよう」

「しかしっ──」

「大丈夫。僕も一晩中起きてたお陰で〈気配察知〉のスキルが〈察知〉に進化したんだ。僕の探知能力は確実に上がってる。何よりあの人達の目的は僕でしょう?あの3人を片付けた後はしっかり雲隠れするから」


 それが嘘だという事はスバル様の顔を見なくてもわかります。

 人一人居ない住宅街ではまともなかくれんぼになりません。


 でも、止められないでしょうね。

 スバル様はシェイル様に良く似ておられます。

 決めた事は早々変えられないでしょう。


「じゃあ行くね」


 そう言うや否や、スバル様は走り始めます。

 私もその反対方向へ向かいます。


 人の居ない住宅街ではかくれんぼなどにはなりません。

 そして何より、スバル様は怪我をされていました。


 襲撃者の方へ行く前に、光魔法で回復させていましたが、完全ではありませんでした。

 シェイル様にスバル様の事を任されたというのに!


 路地から妖精の守人の一員であろう人影が出てきます。

 すれ違い様に袖からナイフを抜き、喉を掻き切ります。

 そのまま走り続けようとます。


「あっ」


 しかし、持ち上がっていた石畳に足をとられ、転んでしまいました。

 なんという醜態でしょう。

 集中力が確実に乱れています。


 コツンと、転んだ拍子に袖から落ちた珠が手に当たります。

 燃え盛る炎のような赤色の魔石。


──これを渡しておくわ

──これは使いきりの小型通信魔道具よ。使い方は──


 使い方は、魔石に魔力を込める。

 それだけです。


 願いを込めながら、魔石に魔力を注ぎます。

 赤く輝き始め、魔石が熱を持ちます。


 そのまま願い続けます。

 助けて、と。


“あら、珍しいわね。貴女が使いきりのコレを使うなんて”


 そう願う相手にようやく繋がりました。

 魔力を込めて、繋がるのを待っている時間がとても長く感じました。


 その声の主は、いつも通りで、とても優しく、かつとても頼りになり、ホッと安心します。


 私は願いました。

 この状況において、確実に頼りになる御方に。

 シェイル様……。

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