3話 シェイルⅠ
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麻のゆったりとしたワンピースをゆらして少女は老婆に近づく。
「おばあちゃん、いつものは?」
「用意できてるよ。ホラ」
「ありがと」
少女は、先程老婆が奥から持ってきた包みを受け取っている。
おばあちゃんと親しげに呼んでいるが、どんな関係だろう?と昴は考える。
そういったのを思考の片隅でしながら、ポイッと渡された包みをどうしよう、と途方にくれていた。
『それ、もらっておいたら?』
『わ!?』
すぐ隣から可愛らしい声がした。
いつの間にか少女が隣にいたのだ。
驚いて落としそうになった包みを慌てて掴む。
『それはアンタにあげるよ。さっき問題を解決してくれた礼だとでも思ってくれていいよ』
「あ~、成程ね。おばあちゃんの魔力を感じたけど、何かあったのね、やっぱり。大丈夫だった?」
「あぁ、この若いモンが先に追い払ってくれたからね」
「そう、それはよかった」
『あ、あれ?ちょっといいですか?先にってことはおばさん1人であれ平気だったんですか?』
それじゃほんとにこれ僕に渡す必要って……と慌てる昴。
『貰っておいて損はないわよ。ん~、それは剣を使う人が着れば、ステータスに補整がつく装備のようね。ということは貴方は剣を使うの?』
『んにゃ、若いモンが使うのは刀の方だろうね』
『えっ、えっと少し聞きたいことがあるんですけど、ここって魔法とかステータスとかがあるんですか?』
さっきから、魔力やらステータスやら補整やら、ゲームに出てきそうな単語ばかり出てきて、そう聞いてしまう昴。
昴の質問に二人は目を丸くして──と言っても片方は頭巾で瞳は見えないが──顔を見合わせる。
やっぱりこの世界では当たり前の事だったかな、と軽く焦る昴。
次いで、転移者とか、頭がおかしい人ってことで兵士さんとかに引き渡されてしまうんじゃ……と心配する。
幸い、その心配は杞憂だった。
「おばあちゃん。おばあちゃんの知らない単語なかった?」
「あぁ、剣道は聞いたことがあるが、6段というのは初耳だね」
「成程、彼は当たりよ、おばあちゃん」
「ほう、それは朗報だね。こうも警戒心無く言うのだったら来てから日が浅いと見るべきだね」
「そうね。まだ接触されてないことを祈るわ」
頭にたくさんの疑問符をつける昴。
それを見た少女は、苦笑をして、昴に質問してきた。
『貴方は転移者?』
『えっと、多分』
『そう。じゃあ貴方は知らなくても当然ね。そうよ、ここは貴方の考える異世界。魔法やステータスが実在している世界よ』
『う、わぁ、ほんとにそうなんだ……』
思わずといった風に声を出す昴。
ネットにはまっていた昴は、オンラインゲームなどに思いっきりはまっていたのだ。
興奮するのは当然だろう。
『さて、話を戻すけれど、その装備、もらっておいたら?おばちゃんの店にあるものは必ずどこかで輝くからね』
『いや、でも僕一文無しですし』
昴がそういうと同時に、彼のお腹の虫が鳴いた。
居心地が悪くなり視線をさ迷わせる昴。
『一文無しは本当みたいね……』
若干呆れながら言う少女。
『礼にお金なんざ要らないよ』
腹の虫の声を軽くスルーして、話を続ける老婆。
『あ、ありがとうございます、……あ名前』
礼を言い、名乗っていないことに気づく。
『…………』
『?』
小さくしわがれた声で聞き取れなかったのでもう一度聞く。
『骨董屋のエディ婆でいいよ』
『はい、わかりました』
続いて少女の方を見る。
『人の名前を聞くときは自分の名前を先に言うのが礼儀よ』
『あっ、ごめんなさい。えっと、僕は……』
『冗談よ』
『…………』
フフッと笑う少女。
目深に被った頭巾で、表情はほとんどわからないけど、軽く上がった口角が見える。
『私はシェイル。シェイル・ステラよ』
よろしくね、と笑いかけられた。




