25話 事件-発生3日前
スバル視点です
「え?暫く他の街に行く?」
「えぇ、1週間程ね」
喧嘩事件のあったその日の夜。
シェイルが、僕が生活している客室にやって来てそう言った。
「どこ?」
「隣の領、ラート領にある中央都市ミッドストリームと、衛星都市のプログレス市よ」
「隣の領か……」
隣の領どころか、隣の街にすら行ったこと無いからな、僕。
遠いんだろうな……。
イメージ的には他県に行く感じかな?
交通はあまり発達してない筈だし。
「そうね。片道1日くらいかしら。休みも含めるから、10日位空けるわ」
「そっか……」
考えてみたら、ここに来てからシェイルと離れた事なかったから、少し、いや結構。うーん、かなり淋しいな。
「何しに行くの?」
「う、え~とね」
あ、言葉を濁した。
でもこれは話して良いか迷っている時の反応だから、じーと見とけば……。
シェイルが小さくため息を吐く。
「……移住の手続きよ」
ほら答えてくれ──
「移住!?」
「えぇ」
そっかー、移住かー。
えぇ~。
あー、シェイルがずっといなくなるのかー。
あ、相当辛いこれ。
「いつ?」
「正確には決めてないわ。スバルが今後どうするか、はっきり定まってからにする予定よ。だから、ほら、元気出して、ね?」
あー、暫くは一緒にいれるのか。
凄く安心した。
もう心臓がショックで止まるかと思ったよ。
ショックで心臓が止まりかけるって、本当にあるんだね。
定まってはいないけど、僕の考えは暫くシェイルに話さないどこ。
シェイルの呆れた顔!
気付いてない、気付いてない。
大丈夫。
……きっと。
「気付いているけどね」
ダメでしたー!
ボソッと呟いたシェイルの声を聞いて、思わず膝から崩れ落ちる。
まぁ、シェイルだからそうじゃないかと思ってたけどね。
「とりあえず、ここか別の場所に定住して、冒険者やって、時々修行の旅に出るって感じのを考えてたよ」
「概ね予想通りね」
「予想されてたんだ」
シェイル凄いな。
「何で移住するの?」
「移住先の方が、魔道具の開発をしやすいのよ」
「へぇ~。シェイル移住したら新しい魔道具創るんだ。どんなの?」
「ティリエの技術がほとんどよ。家電とか、乗り物とか、そういった物を開発していくつもりよ」
「おぉ生活が便利になる!」
ここってそういった技術が発達してないんだよね。
魔法とかがあるからかな?
主食はご飯じゃなくてパンだし。
移動手段は、徒歩か馬か魔法か。
男尊女卑とか衛生面の問題とか。
全体的に遅れてる感じがするんだよね、ここ。
娯楽もあまり発達してないし。
子供達の遊びと言えば鬼ごっことかかくれんぼだよ。
ケイドロもない。
まぁ、ここに警察も泥棒もないけどね。
いるのは衛兵と盗賊。
ここの人達って、遊ぶ事よりも働くって事の意識のほうが高いんだよね。
これも技術が未発達なのが原因なんだけど。
「新作ができる度に行く!」
シェイルに会えるし!
「ふふ、待ってるわ」
「えっと、じゃあ、いってらっしゃい」
「いってきます」
二人で笑い合う。
事件は3日後に起こった。




