17話 エンカウント
シェイル視点です
「何かあったの?」
エルの相当焦った声に嫌な予感がして、足を速める。
「領主の小飼、妖精の守人の1人が接触してきました」
「!!」
妖精の守人。
それは領主──メカルト・マールが、優れた者を集めた結果できた組織。
1人1人が、単体で魔物を蹂躙することができる頭脳や体術、ステータスにスキルを持ち合わせている。
「用件は何と?」
「本日中に挨拶に参じると」
迷惑ね。
とりあえず、スバルと接触させてはいけないわね。
さて、着替えましょう、とスバルを客室の方へ押す。
「門兵君はなんて?」
「父様が急にここに戻ろうとしているのよ」
「え゛?今王都に行ってるんじゃ……」
「それの対応をとるのよ」
そのままエルに、通信用の魔道具で父様に伝えるように、と目で言う。
理解したエルはすぐ父様の執務室に走っていった。
スバルは門兵君と言ってるけど、彼はステラ邸で1、2を争う優秀な騎士。
緊急時に執務室に入れるくらいの権限は持ってるわ。
スバルを客室の前まで連れていった時、私が作った警備装置の1つに、ある気配が引っ掛かった。
随分と早いお越しね。
「セクル」
となりに控えていたメイドに、スバルを出さないようにお願いして。
空間魔術を応用して接客用のドレスに着替えて、歩き出す。
おぉ、早着替え、と驚くスバルの声に、少し安心するわね。
足音も気配も隠さず、玄関へと急ぐ。
応接室に通す気も起きないわね。
用事は何かしら?
「我が家に何か御用で?マール公」
玄関を見下ろせる階段の上から、そう話しかける。
「ギルドからの至急依頼を届けに参ったのですよ」
「ギルドの者を通せば良いのでは?」
「極秘任務ですから」
……たまに本当に重要案件を持ってくるから厄介なのよね。
領主がわざわざ持ってくるような依頼。
他領からの物の可能性が高いわね。
技術支援の要請かしら?
「そうでしたか。それはありがとうございました」
そう言って封書を受けとる。
「返事はお早めにお願いしますよ」
「わかりました」
案外普通の案件だったわね。
まぁ、なにも起こらなかったのは良かったけど。
こんな人でも、領主の仕事は真面目にしているものね。
あの悪意に満ち満ちた性格がなければ最良なのだけど。
背を向けて帰るマール公を見ながら考える。
入り口に着いたところで、ふとこちらを振り替える。
……こちらじゃない?
見ているのはもう少し上のような……。
「あぁ、やはりここに居ましたか」
しまった!
慌てて後ろを見ると、案の定スバルがいた。
2人が会わないようにしていたのに!
「はじめまして。ここイザデラの領主をしています、メカルト・マールと申します。以後お見知りおきを」
見知る必要はない、と言いたいわね。
言えないけど、そんな事。
「え?あ、あぁ。アキヤ・スバルです。こちらこそよろしくお願いします」
よろしくしなくて良いのよ、スバル。
と言っても無駄ね。
エンカウントしてしまったからには、私も腹をくくって彼の事を話すべきね。
とりあえずお願いだからニコニコしながら見送らないで、スバル!
あの人はいい人なんかじゃなくて悪の見本市よ!




