第8話 ゴーレム見学ツアー
「で、どうだったんすか?妖精さんは」
広陵遺跡入口にて丸一日食っちゃ寝をして、だらけきっているパーティーを代表してトルトが口火を切る。妖精が戻ってきたのだ。
「結論としては有るみたいですわ。死体からキノコが生えてる一角があって、10本以上はあるみたいです。直線距離で行けば5時間で歩ける距離なんですけれど、途中に大きな鉄製のゴーレムが居るみたいです。4mは有るみたいで、そう簡単には倒せなさそうだと言っていました。かなり頑丈な奴でしょうね。迂回路は丸1日以上はかかるみたいです」
ヘリミアは戻ってきた妖精の報告を聞きつつ、その記憶を読みながら、見ながらそれを皆に報告する。
「ゴーレムか……こっちは刃の付いた武器しかないってのは都合悪いな。魔法でどうにかならないか?」
ジョンの言葉通りパーティーの武器の種類は斬ると言う一点に壊滅的に片寄っていた。ジョンの長剣、ミレイの暗黒剣、トルトの短剣は全て斬る為の武器だった。ヘリミアに至っては素手。加えて言えばジョンはサーコート、ミレイはビキニアーマー、トルトはピエロ服、ヘリミアはゴスロリ風の服で、ジョンを除けば冒険するには不適格な格好でもあった。
「もう殆んど有りません。帰りの崖を昇る位しか残ってませんわ」
「ミレイ、暗黒剣はどうだ?」
「無機物は食べない」
「トルト、何か透明なカードみたいなので虫をバラバラにしてたけどあれ、使ってどうにかならないか?」
「いや、無理ですよ。いつもの短剣ならまだしもあんな切れ味良いカードでお手玉とかしたくないですよ!しかもあれも斬る為の武器ですよ!」
「何だ、あれは性格変わったら使えないのか。しかしまぁ、打つ手段がないな。打撃出来る様な武器を持ち歩かない俺たちが悪いのか?」
ミレイはボロボロの鞘に包まれた暗黒剣を差し出すように見せる。
「まぁ、確かに鞘に入れていれば打撃武器かもしれないがそれは少し威力が足りない。
流石に4mある金属製の巨人に蹴りくれて倒す訳にもいかないし、ハンマーとまでは贅沢言わないが、フレイルだかメイスが人数分あればどうにか……なるかならないかだな」
ジョンは頭を掻いて苦笑する。金属製の鞘とはいえ相手も金属なのだ。本来ならばフレイルやらメイスでも戦いを挑む相手ではない。
「壁を壊すのはどうかしら?」
魔法力の消費を無駄にしたくないヘリミアも負けじと提案する。
「多分この壁は鉄じゃ効かないくらい硬い。少なくともここ1,000年間は建ってるからな。並みの建材じゃない」
「ああ、ガイドブックにも書いてましたよ、鋼鉄の突型円盤破砕機で4日頑張ったら穴が開いたと、我々ならどれだけ掛かるか分かりませんね」
「トルトってよくわからん情報沢山持ってるよな」
「ゴーレムが実は知能派で謎々に答えたら通してくれるとかは?」
まさかのミレイからの提案だった。
「それは願望であって対策ではないですね」
まさかのヘリミアに切られた。
「探せば良いんじゃないですか?メイスだとかハンマーだとか、言えばここダンジョンですし、副葬品とか有るかもしれませんからね。どうせ5時間は歩かないといけないので、その途中であるでしょ」
半ば投げ遣りなトルトが答える。
「もし無かった場合は?」
ミレイが現実に戻す。
「無かったら?引き返してヘリミアさんの家の壁に飾ってあった2m位あるツーハンデッドソードとゴブリンキングのウォーアックスを拾ってくるしかないでしょうな」
「……よし!道端で落とし物拾い作戦にするか!」
僅かな可能性にノリノリとなったジョンの一言により、行き当たりばったりな作戦が決行される事となった。
「作戦名はゴーレム見学ツアー何てどうですかね?」
「見学だけで帰るつもりか?作戦立案者がそれを言うと角が立つぞ?」
「失敗した時に見学できてハッピー。成功したら予想しなかった副収入ゲット。どっちも素晴らしいとは思いませんか?」
「どうせ作戦名なんて使わない。好きにして」
「何遊んでいるのですか?早く行かないと帰りは真夜中ですわよ」
「はーい、さっさと行きましょうか」
一行は再び広陵遺跡の内部に突入する。
広陵遺跡の内部は升目に区切られた街の上に厚い鉄板で蓋をしたような構造になっており、上下左右端から端まで賽の目状に区切られていた。その賽の目の中に複数の玄室があり、その1つ1つに主たる棺と遺骸、財宝や副葬品を秘めていた。しかし、1,000年の間に植物が跋扈し、一部に変形や崩落を認めるまでとなった。有力な王族や貴族の墓は特別に強いゴーレム等を使って今も護られているとされる。また、中心に行けば行くほど位の高い者が眠っていると言う。
一行は入って直ぐの玄室を探ったが目ぼしい鈍器は石棺の蓋程度しかなかった為、あまり人の手の入っていない中央部の方で鈍器探しを行うべく、先を急いだ。
天の声「作戦名?タイトルに使ったよ!フハハハハハ」