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イクスアルディア戦記~俺とピエロと暗黒剣~  作者: 斎藤秋 & 弧滓 歩之雄 & 林集一 & 魔王さん
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第51話 聖邪の旅立ち

「さて! じゃあ今からどうするかの作戦会議だ!」


 不死王の脅威からは一旦は抜け、ジョンは人気のない場所でメンバー全員に話しかける。


「如何せん状況は最悪だ、不死王の再封印に必要なのはユニコーンの心臓と不死鳥の核。さっきも言った通りユニコーンを殺して心臓を取ろうって言うのは……」


 そこまで言ってジョンはチグリスのほうへ横目を向ける。

 視線の先の青髪の少年はムスっとした顔をしながら両手で大きなバッテンをつくり意見をアピールする。

 そしてそのチグリスの行動に、トラヴィスも頷いた。


「ユニコーンにはこちらも世話になったからな。ダーユニコーンにズタズタにされたこの美しき肉体を、治療……いや瞬間的超回復も伴い、より美しい筋肉に仕上げてくれたのも他ならぬユニコーンだ。肉付きはまあまあと言った所だが中々見どころのある馬だぞアレは」


「あぁ、チグリスにとっては勿論、俺たちにとってもユニコーンは恩人、いや恩馬だ。それを仇で返すような事は俺だって考えちゃいない。と言う訳でとりあえず次、成体不死鳥の核を取るとなると……」


 ジョンがそこまで言った所でトルトとミレイがげんなりした顔で口を挟む。


「ジョンさん……不死鳥の成体は貴方も見たでしょう、アレは人間の適う相手じゃないですよ」


「不死鳥の赤ちゃんにもあれだけ苦戦した。大人は無理」


 二人の反応にジョンも頭を掻き渋い顔をしながら同意する。


「あぁその通りだトルトにミレイ、ハッキリ言ってどちらも取るのはまず不可能、そして何よりそもそも時間が全く足りん」


「あら? 時間が足りないというのはどういう事でしょうか?」


「あぁん? 聞いていなかったのかよそりゃお前、アンサマーとやらの話だと……」


 ジョンはそこでハッとして声がした方向へ振り向いた。

 いつの間に現れたのか、そこには綺麗な銀髪を三つ編みで束ねゴスロリ衣装を着こなした少女が立っている。


「へ……ヘリミアか!?」


「お久しぶりですジョンさん、ミレイさん、トルト様」


 そこでヘリミアは、スカートの両端を小指と薬指で軽く摘まみながら深くお辞儀をした。

 突然の来訪者にトルトとミレイもぽかんと間の抜けた顔をする。

 トラヴィスとチグリスは突如現れた知らない少女に多少警戒するが、ジョンたちの反応をみて警戒するべきか戸惑っている。

 ヘリミアはそんな二人の方へ目を向け、それぞれ個別に同じようなお辞儀をした。


「初めまして紳士の方々、わたくしトルト様のとある契約を結んでおります魔族のヘリミアと申します。以後お見知りおきを」


「む……あぁトラヴィス・サザーランドだ。よろしく頼む」


 戸惑いながらも返事を返すトラヴィスとその隣でぺこりとお辞儀を返すチグリス。

 二人にもトルトが魔族の婿候補である事、ヘリミアと広陵遺跡を探索した事は話してある。それらと合点が行って受け入れてくれたのだろう。


「それでジョンさん、時間がない、とは?」


 挨拶はそこそこに、ヘリミアは先ほどジョンが言いかけた事を聞き返してきた。

 それに対しジョンは鼻息を荒く答える。


「ああ! その様子なら不死王の復活は知っているみたいだなヘリミア! そんでアンタらの魔王様の四天王、アンサマーってヤツ知ってるだろ? アイツの話じゃあ不死王は今現在『自分が生身である事を忘れているから昼の間は出てこない』ってこった! つまり、日没になれば奴は町に出てくる! この町にゃ腕利きの冒険者は沢山いるが、そんでも不死王の強さは異常だ! 下手すりゃこの町は今日滅ぶかも知れねぇ! 迷わずの森にしろバレンタイン火山にしろ行くだけで何日もかかる! ハッキリいって取ってこれても意味がねえ!」


 慌てながらもはっきりと饒舌に話すジョンに、ヘリミアは若干の呆れ顔をみせた。


「ジョンさん、あのボンクラ道化師の言う事など……」


 そこでヘリミアはハッとした顔をし、自らの口を右手でふさぐ。

 そして数秒考え込み、再び口を開いた。


「そうですね、町が滅ぶ可能性があるというに落ち着いてもいられませんよね。それならば私に提案があります」


「提案……?」


 ヘリミアの言葉をミレイが聞き返す。ヘリミアはその場の全員の眼をしっかりと見て、全員に向かって自分の考えを話し出した。


「まずアンサマー・ロレット、彼はその性質はアンデッドのソレに近いです。それ故に彼は魔王様の命を受け、スパイとして不死王の監視の任務に就いている。彼ならば話術か呪術か、なにかしら不死王をまだしばらく地下につなぎ止めておく方法があるという事です」


 その言葉に一同の眼に希望が灯る。ヘリミアはそれをしっかり把握し、今度はトルトに向かって話しかける。


「トルト様、貴方の腰にあるソレは『憤怒の怨剣』ですね? お嬢様の婿候補でありながら、その女に色目を使われるとは少し考えモノではありますが、とりあえずは保留にします」


 ヘリミアのその不意の言葉に、トルトは滝のような汗を流しだした。

 短剣と化しているパンドラからは刺すような敵意がヘリミアへ向けられる。


「トラヴィスさんも、質はともかく呪われた武器を複数お持ちのようで。つまりミレイさんと含めて三人呪いの武具を使いこなすものがココにいます」


 ヘリミアはそこで一息置き、力説を続ける。


「そこでわたくし達は二手に分かれて目的の物を取りに行きましょう。ミレイさん、トルト様、トラヴィスさんはその呪いの力を活かしてバレンタイン山脈へ、おっしゃる通り人間の力で不死鳥に勝つことは不可能ですが、皆様の呪いを上手く使いこなし噛みあわせれば不死鳥の核を抜き取る事が出来るかも知れません。詳しい方法は後で説明いたします」


 そして今度はジョンとチグリスの方へ向き言い放つ。


「ジョンさん、チグリスさんは聖の気が強いですね。トルト様達三人とは逆に、貴方がたならばユニコーンを殺すことなく心臓を貰う事もできるかも知れません、しかしなにぶんコチラは繊細な要素が使いため、御及ばずながらわたくしも同行いたしましょう」


「聖と邪……俺達にそんな事が、出来るのか?」

「ど、どっちにしても信じてやるしかないんじゃないですか……?」

「ヘリミアが言うなら、不死鳥退治、頑張る」

「ふむ、ではまずはその方法とやらを教えて貰いたいものだな。この筋肉ならば不可能と言う事はないだろう」

『皆さんやる気ですね』


 ヘリミアの言葉にジョンたちはざわめきながらも肯定的に話を聞き入れている。

 不死王という驚異の前に何かにすがりたいという気持ちもそうだが、やはりヘリミアが過去に広陵遺跡にて協力的だった事の信頼から来る事が多いだろう。

 ヘリミアはそこで静かに一息をつき、胸中で真の狙いを呟いた。


(これで聖剣持ちのジョンさんとトルト様を離し、私は聖剣側に行けるわね。さて、ここからが本番ね……)

新年明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いいたします!

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