第49話 不死王ってなあに?
「じゃあまず聞くが、魔王さんの所の四天王さんが何で不死王のパシリをしているんだ?」
「ウーン。スパイって言えば良いかナ?」
「スパイってお前……まぁ死んでも復活するような奴ならスパイは適任か」
「ソウよ。信じてくれましたカ?」
「でも、記憶がなくなったらスパイの意味もありませんよね?」
それもそうだ。
「いや、その辺は記憶を調節出来ますノデご心配なく」
「まぁいい。再封印ってのは何なんだ?」
「先ずそれを話す前に不死王様の事を話さないといけませんネ」
「そうだな」
「不死王様は自己死体操やら自動蘇生やら転生の秘術やら……、つまり死んでも次がある、または死ににくい、死なない、生き返ると言った能力が沢山ある。故に不死王。分かりやすいネ」
「……それであの強さは反則だな」
「ネ、強い強い。だから、封印するのヨ。封印しとけば無害だからね。それも長持ちしないのが困り所何だけどネ誰かさんが封印といちゃうから……」
闇道化師の話は要領を得ない。ジョンは少しイラついた様子で聞いた。
「具体的には何をして欲しいんだ?」
それに対して闇道化師はオーバーアクションで「思い出した」様なパントマイムをして話し始める。
「先代の名も無き魔王様の遺骸、ユニコーンの心臓、不死鳥の核(成鳥のもの)を入手して欲しいんダ」
「先代の名も無き魔王なんて知らねーし」
「……私のお仕事は墓守なんでス。誰かさんが私の仕事場に入り込んで、先代の名も無き魔王様の遺骸を盗んでいったのです。ヘリミアチャンの証言によると『お祖父ちゃんの遺体を盗んだのはコイツら』らしいですヨ。見覚えありませんか?」
闇道化師の手元のモンタージュを見ると、ビキニアーマーの恥女、サーコートのオッサン、イケメンのピエロが描かれていた。
「……違う」
「俺こんなに不細工じゃない」
「おっ!このイケメンピエロは私ですね。はい!犯人は私ですよ」
トルトはあっさりと自白した。
「あと、申し上げますと、本来万能薬にあれほどの力はありません。恐らく魔王様の身体の一部を削り取って万能薬に混ぜたのだと思うのですが、心当たりありませんか?」
心なしか闇道化師の顔に怒りが感じられる。
「……」
ジョンとトルトの睾丸がヒュンと音を立てて引っ込んだ。
何故なら、先代の名も無き魔王様の何処を削り取ったかと言うと――。
◇ ◇ ◇ ◇
「ちんぽ」
「はい?」
「ちんぽだよバーロー!」
◇ ◇ ◇ ◇
……等と言えたら何れだけ楽か。
ジョンとトルトは天を仰いだ。
魔王の四天王相手に先代の魔王のちんぽを万能薬の合成素材に使ったとは死んでも言えない。
「ともかく、その3つを集めてくれば良いのね」
「おお、花嫁サン!話が早いですネ」
闇道化師はニコニコとおどける。
「そうです。不死鳥の討伐とユニコーンの討伐デスね」
ジョンはチラリとチグリス少年を見ると、何やら黒板に書いたり消したりしている。
「マァ討伐でなくとも構いません。入手方法は問いませんヨ」
……チグリス少年にとってユニコーンは恩人。故に討伐は出来ない。……が、討伐でなくても構わないと言うのであれば他に方法があるかもしれない。この辺は後で考えるか。
「チグリス、話は後だ。一旦『馬の横面亭』に戻るぞ」
チグリス少年は頷いた。
ジョンは一息突いて闇道化師アンサマーに話し掛ける。
「ああそれと、アンサマーとやらは死んだらその辺から復活するのか?」
「そうだネ。まぁ近いヨ。気になるならまず私を殴ったらいいヨ。良い憂さ晴らしになるからね。私は死ぬ間際に記憶を無くして再生するんダ。死ぬ訳じゃナイシ。構わないヨ。でも、多分次にすぐその辺にあらわれた私にまた同じ事を言われるカモヨ?」
「ああ、じゃあ1回だけ頼む」
「「ちんぽ!」」
闇道化師はジョンとトルトのダブル右ストレートで吹き飛んだ。
「これはミレイの分!」
闇道化師はトラヴィスにオーバーヘッドキックをかまされてミレイへとパスする。
「私はどうでもいい!」
ミレイはトラヴィスのパスを無視した為に闇道化師は地面に激突して煙のように消えた。
煙になったのを確認したトルトは腰に手をやって、満足げに背中を伸ばす。その腰には小刻みに震える“短剣”があった。




