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イクスアルディア戦記~俺とピエロと暗黒剣~  作者: 斎藤秋 & 弧滓 歩之雄 & 林集一 & 魔王さん
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第45話 覚醒のジョン 隔逝のトルト

「えー……何で俺が……。ってかトルトがご主人様……?」


 ジョンは悪態を付きつつ、聖剣を正眼に構える。


「行く」


 ミレイは右手でぐるりと暗黒剣を半回転させ肩の上へ乗せるようにしてジョンの右側に構える。


 相手は目に見えない上位ゴースト。しかし、聖剣使いのジョン、暗黒剣使いのミレイと言う恵まれた前衛が居るのであれば恐れるに足りないのかもしれない。そして、その背後でふんぞり返る中衛のパンドラ。そのまた背後で両手を合わせつつ首を傾けるポージングをしている後衛のトルト。最早戦力としてはそんじょそこらの騎士団に匹敵するだろう。



「あんまり見えない相手とかは嫌なんだよな……はあ。ねぇ?」


 ジョンが右に居るミレイにそう話し掛けると、ミレイは答える辺もなく飛び出していき、左右ジグザグに跳ねながら見えない何かを斬っている。その都度暗黒剣が《ヘブゥ》とか《ブゲェ》とか汚い音を撒き散らしている。


 ジョンはその隙に考える。聖盾の持ち主でありその聖盾を最も使いこなしているフロネシスの事を……。


「フロネシスは聖盾の『無効化』の能力を使って足音を消したり、自身の姿を消した。しかしこの聖剣はその戦いではただ斬る刃物としての役割しか果たしていなかった。

 ――聖剣と聖盾は一対の武具防具。片方だけ特に優れているとか、そんな訳はない。


 ヴァレンタイン火山島で不死鳥戦でエネルギーの操作が可能な事がわかった。では、それを応用して今回の危機は回避出来るか……?」


「ふん、聖剣の使い手もやるではないか。そこに気が付くとはな。だが、早くしろ、マスターはポージングをしてお待ちだ」


「!」


 ジョンはこんな時にトルトのポージングがどうだと言う適当な発言にキレつつも、先代魔王の武器を自称するパンドラの言葉を受け頭の片隅にあった「多分出来そうな事」が「きっと出来る」に変わった。


 ジョンは目を瞑り、剣を振りかぶる。すると、剣から光が放たれて目の前の見えない衝撃波を斬り払った。そして、目を開けたジョンの瞳は銀色に輝いていた。


「見えるな……、見える。ふはははは! 上位ゴースト! 見えるぞッ! お前案外不細工だったんだな……!」


 ジョンは飛び出して上位ゴーストと戦っているミレイに合流し、周囲に見えない衝撃波を撒き散らしながら敵を追い詰めていった。


「おー、ジョンさんの目の光、あれどーなってるんですか?パンドラさん」


「マスター、あれは聖剣のエネルギー操作で眼球のエネルギーの流れを変えて、高次元の存在を視覚出来る様にしたのでございます。もし退屈で御座いましたら夜伽でも致しますか?」


「パンドラさんちょいちょいブッ込んできますよね。夜伽はいいです。場所と状況を考えて……ね?」


「はっ!勿体無い御言葉。今後とも全力でお仕えいたします」


 トルトは「状況を考えて……」と言ったのだが、パンドラはパンドラなりに状況を見ているのだなと感じていた。ジョンが眼に光を灯した事により明らかに形勢が有利になっている。パンドラはそれを見越して休憩――夜伽だなんて口走ったのだろう。


(パンドラは素直じゃないですね)


 トルトがポージングを解除して首の傾きを直した瞬間、ジョンとミレイのクロススラッシュにより上位ゴーストは霧散した。


「じゃあ、早いとこ次に行くか!」

「次いく」


 ジョンとミレイは振り返った。


 その瞬間。トルトの腹から鋼鉄の剣が生えてきた。直後、ぬるりとした血が切っ先から雫となって落下する。


 パンドラの毛が逆立ち、トルトの背後に向かって駆け出した。


 その様子を見ていたジョンとミレイもトルトへ向かって駆け出す――様にしてそのまま倒れた。ジョンの背中には三条の深い切り傷があり、ミレイは見えない紐状の何かに身を縛られていた。




「ふ、不死王ォオオオオオオオオオオ!」



 パンドラの絶叫が地下下水道に反響した。



 ◇ ◇ ◇ ◇


◇ ◇ ◇ ◇



「ここは大臀筋、キュッとしまっているだろう?」


(はぁ、結局ついてきてしまった)


「ここは太腿四頭筋、シュッとして美しいだろう?」


(僕の呪いは解けないし……)


「ダブルバイセップス! バァック!」シャキーン


(役に立たないだろうけど……)


「左右の大臀筋を交互に上下に動かすんだ。木の棒を挟めば火だって起こせるんだぞ! はっはっは……!」コリコリコリ……


(でも、出来る事はあるはずだ……)


 パンドラの絶叫が響き渡る10分前。チグリス少年と筋肉男トラヴィスはジョン達を追い掛けてトボトボと下水道の中を進んでいた。その間の会話は二人とも独り言のそれに近かった。




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