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イクスアルディア戦記~俺とピエロと暗黒剣~  作者: 斎藤秋 & 弧滓 歩之雄 & 林集一 & 魔王さん
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第43話 地下墓地

 


「えーこれから緊急会議を開きたいと思います」

 

 ジョンがパーティメンバーにそう宣言すると二人はうなずき、それ以外は寝たままだった。素晴らしいリーダーシップである(笑)

 

「聞けよ!!」

 

「といってもですねぇ…」


 トルトは肩をすくめながら、ちらりと店内の骸骨を見やる。


「あの対処なんてどうすればいいので?」

「飼おう!!」

「飼いませんよ!?」


 ミレイは子供のようなキラキラした目で物騒な提案をする。今のトルトツッコミ役に適した性格らしい。と言うか治ってないのか。

 

「―――でしたらマスター、すべてを殺しつくせば万事解決では?」

「うわっ!?あぁパンドラ……自分で人間になれるんでしたっけ。」

「はい! あなたの夜の性処理も完璧にこなせます!」

「あはは……それはまだ今度で……」

「うふふっ……可愛いですよマスター」

 

 呪われしバカップル?の間にジョンは手を挙げて入る。


「残念ながらその案は駄目だ。ギルドによれば生き返って嬉しいっていうスケルトンは少なからずいるらしい。まぁ寿命的には不死だしな。」

「チッ……死人風情が、現世を謳歌したいとはなんたる欲深さ……ゴキブリ以下ですね」


 トルト以外には評価がとんでもなく低いパンドラさんは、今日も唾棄するように他者を見る。やがて彼女はそのごみを見るような眼のままジョンに向き直って口を開く。


「それで? マスターに何をさせようと? もしも危険になるようならば……」

「まぁ落ち着いてくれ……そうはいっても原因は俺たちにあるわけだから……放っておいたら針のむしろにいるみたいで嫌なんだよ」

 

 確かに今はまだスケルトン大量発生による大きな被害は出ていない。しかし今後も絶対にないと断言もできない状況らしい。何せ前例がない以上、何が起こるかギルドでも予想が立てられていない状況なのだそうだ。

 

「ねぇパンドラ」

「はい!なんですマスター! あなたの質問ならば何でも!」

 

 ジョンたちは、これからパンドラとまともに会話するときはトルトを通すと誓った。


「パンドラってこの後に発生するかもしれない。厄介ごとって予想できます?」

「はいもちろん! 全て私が排除できる事案ですが、それはそれとして、大きく三つあります」

「その三つ、よければ教えてもらっていいですか?」

「仰せのままに! そうですねまず一点目。どれほどの規模の人間がよみがえってるのか。数次第ではこの街の人間だけでは対応不可能です。スケルトン用の寝床なんて無いでしょうし。まぁ殺せば解決ですが。

 二点目、街の外に出られたら本物のモンスターのスケルトンと見分けがつかないこと。倒したら自身の親族のスケルトンだった…なんて人間にとっては気分を害するのでは? まぁどちらも殺せば解決ですが。」

 「おっふ……結構大問題になりそうなのに解決案が単純かつ物騒……」


 そしてどちらも自分たちが今すぐ解決できそうな事案ではない。そちらはあとでギルドの人と相談して進めていくしかないだろう。

 

「ん?もう一つは?」

「えぇ……これが本命なのですが……本来蘇っていけないモノが復活している可能性です」

 

 しん……と一瞬その場が静まった。パンドラの表情は先ほどよりも張りつめているので余計にそう思ったのかもしれない。


「その……蘇ってはいけないものっていうと……大犯罪者とか?」

「その程度なら問題ないのですが……」

「え?」

「いえ……いくら地下墓地といっても埋葬されているのはすべて人間でしょうし。そうですね。そのあたりは警戒すべきかと。無論マスターに危険などは万に一つも触れさせませんが」

 

 全員が黙り、嫌な空気が流れかけたところで、ジョンは手をバチンと叩く。

 

 「よっし。なら決まりだな。ぐだぐだしてても始まらん! とりあえず地下墓地の様子を見に行くぞ!」

 




 スケルトンがどんな状態でよみがえっているのか調査の依頼も来ていたので、チグリスとトラヴィスには情報収集を頼み、それ以外のメンバーで地下墓地に向かうことになった。

 噂の墓地は街の隅っこで薄暗い入り口を開いて待っていた。本来なら立ち寄るものなんてめったにいないが、今日に限っては大勢の者が徘徊していた。といっても人間ではないが。

 

 「ふむ……予想以上に数が多いですね……万能薬の力じゃない…だとすれば……いえ……王でなくとも……やはり臣下が復活……?」

 

 パンドラはぶつぶつと呟きながら殺意を周囲に放つ。するとまだ蘇りたてで意識がはっきりしていないスケルトンまでもが、ご丁寧に道をあけてくれる。錯覚で冷や汗すら見えた。

 

「……やっぱり持ち帰って良い?」

「駄目です」


 トルトはにべもなく拒否するが、それでもミレイは名残惜しそうにスケルトンを見つめて……

 

「……?……あのスケルトン……武器を持って……る?」


 一同は立ち止まり、ミレイが指さす方向を見る。確かにそこには、背丈ほどもある巨大な剣を携えたスケルトンがフラフラと覚束ない足取りで歩いていた。

 

「……aaa……コロス……コロス……aa……?」


 目が合った。いや厳密にはあちらには目が無いのだが、あちらの顔の向きとこちらの視線が交わった途端、あちらは不自然なほどに硬直した。


「……マスター、一瞬の間御身を離れることお許しください」

「え?……あ、はい……ですが……」

「貴様は剣を抜く必要はない。私だけで十分だ」


 柄に手をかけていたジョンとミレイは、顔を合わせて一歩下がる。それと同時に…


 「Aaaaaaaaaa!!ころす……コロス殺すコロスゥゥゥ!おレはマダ!!コロしタリネェエエエエエエエエエエエエ!!!」


 武器持ちのスケルトンは。喉も無いのに雄たけびを上げながら襲い掛かってきた。生前は相当の悪事を働いていたのか。殺意がその身を包んでいるような錯覚を覚える。しかし、


「私のマスターに刃を向けたな?………死骸風情が…」

「Aaaaaシィイイイイイイネェェェェ!!!」

「――――『冥狂死睡カースド・スクリーム』————」

 

 瞬間。その場にいる全てが凍り付いた。パンドラに全員の視線が集中していたにも関わらず、全員が目で追いきることは出来なかった。

 

「……カハッ……お……レは……」


 それがスケルトンの断末魔となった。

 まず右腕が吹き飛び……指の人間接にも満たない間隔で刻まれていく。続けて左腕が吹き飛び壁にぶち当たって砕け散る。そして…次の瞬間には両足と胴体はバラバラに斬られ、頭部は乾いた音をたてて地面に落ちると、やがて四等分に割れた。 

 息が出来ない……死に触れてしまうような気がしたから。

 紡がれたものはなんだ? 生半可な剣術でも……魔法……ましては呪いなんかでもない。

 間違いなく【死】そのものだ。

 敵にしてはいけない。それどころか……味方においてすらいいのか分からない。

 これまでの冒険が……これまでの敵が……すべて温く感じるほどの死が渦巻く。

 人間から見ればいかに凶悪なスケルトンでさえ、……彼女からすれば敵ですらない。まさにゴミ程度の存在だったのだ。

 少女は両手を刃にしたまま……ゆっくりとこちらに振り向いて、笑った。 

「さぁ…参りましょうマスター……この先にはきっと不死王……の、臣下の一人くらいならいると思います。ですので、私から離れないでくださいね?……ふふっ」

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