第40話 やっと……話せましたね
風呂、それは心のオアシス。
誰が作ってくれたのかは知らないけど、心底感謝している。
今日は素材を無事届けると、ついに正真正銘の万能薬を分けてもらえることに成功した。
万能薬は塗っても風呂に入れても効能があるということなので、どうせなら風呂に入れようということで満員一致。
誰が最初に入るというのは、
「まぁ、トルトでいいよ。正直一番厄介なのもあるしな」
『そうですね。僕のもあとでいいです』
ジョンに同調するようにチグリスも板で意思を示す。ミレイは親指を立てた後、呪いの武器を見てくると言って部屋を出た。
「皆…良い人過ぎるんゴ…いいパーティ過ぎてワロチ……」
トルトはわざとらしく涙をこぼす。今のトルトは少し面倒そうだと皆が判断したのは勿論ある。
「ではwww速攻で治してくるンゴwww」
脱衣所でピエロ顔以外を体からはぎ取ったトルトは、宣言通り万能薬を入れた風呂に……
「うーむ……俺氏、短剣の呪いも同時に治るのか実験してみたくなったナリ……」
カタカタと震える呪いの短剣。確か想いを果たせなかった少女が、喉を突くのに使ったものだったか。
自分の喉をつくほどの想いとは、残念ながらトルトは想像できない。
「ま、成仏? 出来るか試すくらいはいいよね」
浴室に入ると、今まで嗅いだことのない香りが脳内まで届く。
決して不快ではないが、ぼんやりとするような、落ち着かないような…しかしずっと留まっていたいような、とにかく言い表しにくいもので満たされている。
思考が低下しそうになるまま、体は浴槽へと糸で引かれるように進んでいく。
トルトは軽く片足を突っ込む。じんわりと熱が伝う。しかしもう片方を突っ込むと今度はひんやりと心地よい冷たさが染みる。
「………ふぅぅぅぅぅぅ……総合的には気持ちいい……これで女の子と一緒だったら最高だったンゴ……あ。ヤバww短剣握ったままだったんゴwww」
不透明な湯の中から短剣を慌てて取り出す。湯に付けたら錆びるのだろうか。現に短剣もカタカタと震えており……
「ンゴ……?…………は?」
短剣はみるみるうちに大きくなっていき、ついにはトルトが持てなくなるほどに巨大化する。それは浴槽の底に落ちることなく空中で制止したままやがて巨大化を止める。
そしてまばゆい光に浴室が満たされ……
ドボーーンッッ!!
「………………」
「………………やっと…話せましたね…マスター」
全裸の銀髪少女(貧乳)が、頬を紅潮させながらトルトの体に乗っていた……。




