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イクスアルディア戦記~俺とピエロと暗黒剣~  作者: 斎藤秋 & 弧滓 歩之雄 & 林集一 & 魔王さん
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第39話 不死鳥と微覚醒


 

「これは逃げた方が良いかな?」

 

「多分」

 

「逃げましょう」

 

 意見がまとまり、皆足を船へと向けて走り始めた時に、チグリスの方から光が走り、チグリスが口を開いて叫ぶ。

 

「ぷふぁっ!皆さん!多分、これチャンスだと思います!そのまま船の近くの海まで誘導して下さい!このくらいの大きさなら、【水操作】で大量の海水ぶっかけたらいけるかもしれません!」

 

「こんな所でユニコーンの角使っちゃうの?!」

 

「走りながら字なんか書けないでしょうが!」  

 

 ジョン達は口だけ話しながら猛烈な勢いで走り、山を下って行く……!

 

「来るぞッ!」

 

 上空をホバリングしていた不死鳥の幼体はバレーボールで言うスパイクを打たれたかの様に爆発音を響かせて鋭角に急降下してくる。

 

「ミレイ!」

 

 ミレイは不死鳥の一撃を間一髪まで引き寄せて避けた。避ける際にカウンター気味にバックスラッシュを振り切ると斬った手応えがあった。

 

「暗黒剣なら……いける!」

 

 抉る様な回転を掛けた卓球のボールが地面をバウンドするように急角に曲がってジョンへと突っ込む。この速度でこの距離、この角度での突撃は人間には避けられない一撃であった。不死鳥の嘴が笑みに歪む。しかし、ジョンは―――

 

「なぁああああ!」

 

 聖剣を正面に構えて斬りかかる。しかし、ただ斬るだけでは斬ると同時にジョンの身体をも焼き尽くしてしまう。

 

 ジョンは咄嗟にラストクアとフロネシスの戦いを思い出していた。フロネシスは盾を叩いて自分自身を盾の敵と認識させて自らの姿を消した。それがいけるならコレもいけるはず―――!

 

 ジョンが知っている聖剣の能力は剣身によるエネルギーの反射。しかし、それだけでは、聖剣と対になるはずの聖盾の能力に遠く及ばずに不恰好だ。

 

 ジョンは不死鳥の肩口から反対側に突き出るように降り下ろすのではなく、猛牛の突進を剣で斬りかわす様にして聖剣を振る。すると聖剣は肩口に引っ掛かり、跳び箱を跳ぶようにして不死鳥の突撃をかわす事が出来た。

 

「やっぱり―――!この聖剣はエネルギー操作の能力がある!」

 

 不死鳥の一撃をかわした(・・・・)際にイメージしたのは、エネルギーの塊として不死鳥の身体である炎を操り、火の塊として固定して、衝突のエネルギーを利用して飛び上がる事。  

 

 不死鳥を飛び越えたジョンは、今起こった事を理解出来ずに動きのにぶった不死鳥に向かって走り、背後から一太刀を入れる……!すると……!

 

 不死鳥の身体である炎が大幅に削り取られて聖剣へと取り込まれる……!

 

 不死鳥は金切り声を上げて急上昇する。摩訶不思議な現象に距離を取るべく逃げたと言う所だろう。

 

「ま……魔法剣?」

 

 ジョンは炎を纏ったままの剣を振ると、燃える斬撃が飛び、岩に激突すると熔岩が爆発するかの様に燃え飛び散った。

 

「これは……俺達だけでいけちゃうんじゃないの?」

 

「とりあえず船までは戻りましょう!」

 

「○×◇▽~!」『剣を振り回して!』

 

 走りながら、口で呪文を唱えながら、手で字を書くとはチグリス少年の器用さたるや……。

 

「ん?振り回せ?おお! そう言う事か! やーい! 不死鳥のおたんこなーす!」

 

 聖剣の使い方を土壇場で身に付けて調子に乗ったジョンは、不死鳥を挑発しつつ剣を一定のリズムで振り回す。 

     

 ゥン……ゥン……ヴン!ヴン!ヴン!

 

「ははッ!今ならフレイムタイラントだって余裕だぜ!」

 

「ムム……!遠距離攻撃を取られてしまったら私の立場が……まぁ元々なかったですね」 

 

「やーいトルトのおたんこなーす! じゃなかった不死鳥のバーカバーカ! お前のカーチャンでーべそ!」

 

「あっ、その単語は言わないで下さい、来ます(・・・)から」

 

「」   

 

 挑発しつつも剣を振り回しながら逃げ回るジョン達を警戒して、追い掛けつつも距離を取っていた不死鳥が高度を落として先回りする様にして真正面10m斜め上に立ちはだかる。すると……炎の翼が紙吹雪の様にばら蒔かれて、翼の風圧で乱れ飛んでくる!

 

「あぶねぇ!」

 

「……ここは僕が!水を操る詠唱の全てよ!水を産み出す力に変換されたまえ!水撒き!」

 

 チグリス少年が掌を前に突き出して捻ると、スプリンクラーの様に水が飛び出して、不死鳥のばら蒔いた炎に当たって霧散した。

 

「コレぐらいなら……突っ切れェエエエエ!!」

 

「ええ……?」

 

「わかった」

 

「……!」

 

 ゴオッ!皆が身を低くして炎の嵐に突っ込む。そして、この島に来て幾度となく受けた火傷の痛みが全身に蘇る。

 

「アッチィィィィ!だが、抜けたぁぁ!船が見えるぞ!あと200mっ!」

 

「ミレイさん大丈夫でした?」

 

「問題ない」

 

《アヅゥウウウウウ》         

 

「ごめんなさい!水を操る魔力全部使っちゃいました!詠唱も途切れたので、船のある岸まで行っても水の塊を出せません!ジョンさん」

 

「任せとけ!狙うは次の攻撃……!炎の翼を仕掛けようとした時ッ!」

 

 不死鳥は再び正面へと回り込み、炎の翼を展開する……。動きを止めて大きく羽ばたいた。

 

「今だァァァァァアアアア!そりゃあっ!」

 

 ジョンはぐるぐる回して溜めていた剣の風圧エネルギーを解放した。その風のエネルギーを帯びた斬撃は両翼いっぱいに広げた炎の翼を帆にして、不死鳥を海の方向へと吹き飛ばして行く……!

 

 バァン!

 

 きりもみ状に吹き飛んで行った不死鳥が海へ触れた瞬間!轟音と共に水柱が上がる。

 

「グギャアアアアアアケーッ!」

 

 海に触れた不死鳥は、水柱が再び海へ降り注ぐと同時に、全身を黒い煙の様にして消え去った。

 

「勝ったか!?」

 

「勝ったー」

 

「やりましたよ!」『victory!』  

 

「やりましたね!皆さん!」

 

「おお「やったなお前達ぃ!」おお「お前達ならやると思ってたぜ!」おおお!」 

 

 海際に辿り着いたジョン達は、船に乗っている船員達の大歓声に迎えられた。そして、海に飛び込んだ水夫に嘴の回収をお願いして、ミレイ以外の全員が仲良く火傷回復風呂の世話になった。

 

 こうして短いようで長かった俺達の旅は一端の区切りを迎える。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 


 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 「万能薬」―――。それはただならぬ材料を錬金術最高の秘技にて合成させて作られる。

 

 広陵遺跡で拾った、冬虫夏草ならぬ春人秋樹(しゅんじんしゅうじゅ)。それは人の身体に寄生し、死して数百年の後に宿主の身体を再現すると言う再生の象徴でもあった。

 

 迷わずの森の神秘の湖でユニコーンから譲り受けた二股になったユニコーンの角は、あらゆる病を緩和し、あらゆる呪いを緩和すると言うユニコーンの角が螺旋を描く様に絡まり合っており、癒しの象徴として知られている。

 

 最後に、今回手に入れた不死の不死鳥の嘴、それは文字通り不死の象徴であった。

 

 

    

 

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