第33話 解呪
すいません。リア不都合で遅れました。
一同は迷いの森から『馬の横顔亭』のある町まで帰還した。
ジョンは日常に戻れたことに安堵し、背伸びをしながら口を開く。
「あー、長い旅だったな……さて、トラヴィスが戻るまで2週間だっけか。それまでにやる事はやっておくか」
「二股ユニコーンの角を依頼主のドエーフさんに届けるのですね?」
「いや、その前に教会だな。この聖なる角使って解ける呪いは解いておこーぜ」
「解ける呪い?」
ジョンの言葉にミレイが眉を潜めながら口を挟む。ジョンがそちらをみると、ミレイだけではなくトルトもチグリスもやや呆けた顔をしている。
「そりゃそうだろ、大体みんな呪われてんだからな。代表はミレイ、お前だろ?」
「私はいい。それに教会で解けるとも思わない」
ミレイの呪いを解くのが難しい事は、旅立つ前にも教会の神父に言われた事である。
しかもそれに加えミレイ自身もその気が全くない様子でジョンは何も反論が出来なかった。
「じゃあトルトの短剣」
「私も別に良いですよ? この短剣今の所デメリットはないですし切れ味もいいです。チー君を最初発見したのもこの短剣のおかげなんで結構気に入ってます」
トルトのまさかの言葉にジョンは唖然とした。
呪われたナイフはトルトの手の平で喜ぶようにひとりでに跳ね回る。その様子になぜかハートのエフェクトが飛び散っている様子を錯覚した。
「あ、あとチグリスも呪いで声でないんだよな?」
ジョンの言葉にチグリスは首を横に振る。
呪いに近い物ではあるが、正確にはチグリスにかけられたのは生身の人間による『沈黙魔法』である。
そもそもチグリス自身この沈黙魔法を解くために長年旅をしており、その中には『教会に聖なるモノを持っていく』程度の事は一通り試している。
それぞれの反応を見て、バツの悪そうな顔をしながらジョンは頭を掻いた。
「あっそ、じゃあとりあえず俺にかけられた呪いの解除だな」
「喋るスケルトンを壊した際に呪われたんでしたっけ? でもジョンさんも今の所呪いのデメリットないのでは?」
「今の所なんもなくても呪いは呪いだ。いつ何が起きるかわからねーのにほっとく様な神経してねえよ」
短剣をくるくる回し続けるトルトに対し、ジョンは半眼で毒づいた。
こうして一行はジョンの呪いを解くために教会に足を向けた。
◇ ◇ ◇ ◇
「おや皆さんおはようございます」
教会に足を運んだジョンたちに、以前もあった神父がにこやかに挨拶をしてくる。
時刻はもう昼下がりであり『おはよう』と言うには遅い時間であったが、そんな事はきにせずジョンも挨拶を返す。
「ああおはようさん、無事『聖なるモノ』持って来たぜ。ほら二股ユニコーンの角だ、文句ねえだろ」
「おお! こんな凄いモノを! これなら問題ないですね、それでどなたの呪いから解かれますか?」
「どなたからって言うか俺だけだ。なんか喋るスケルトンの呪い付いたらしくてな。それで他のアンデッドへの打点になったのはいいが、もう必要ねえだろうし、なんか気持ち悪いから解いてくれ」
「わかりました。それでしたら半日もあれば解けると思いますね。では解呪の祈りを行いますので奥へどうぞ」
神父の言葉にジョンは顔をしかめた。
「半日ぃ~? なんだ、解呪ってそんなにかかるのかよ、てっきり数分おまじないか何かして済むと思ってたんだけどよ」
「御冗談を、そんな簡単にモノであれば誰も困りませんよ。それとも何かご予定でも?」
「あー、まああるっちゃあるんだが、別にすぐでなくてもいい。トルト、ミレイ、チグリス、そんなわけだ、俺は数時間ココにいなきゃならねえ。お前らはその間に宿取って余った時間は散歩でもしててくれ」
本当はこの後すぐにドエーフの所へ行こうと思っていたのだが、予想外に時間が空くため行くのは夜か、もしくは翌日にする事を視野に入れる。
ジョンの言葉にミレイ達はそれぞれ返事をした。
「ん」
「わかりました。ジョンさんお祈り頑張って」
チグリスも肘を曲げつつ両手の中指を頭の上で合わせる事で大きな〇をつくる。了解の意思だろう。
「それでは、解呪のお祈りを行いますので、我が教会への寄付金はこちらでお願いいたします」
満身の笑顔で箱を押し付けていく神父に、ジョンは苦笑いをした。
「ちゃっかりしてやがるぜ」




