第31話 聖盾最強説
すいません!旧盆で忙しく、更新したつもりになってました!
「一応聞いておくが……ここで俺達を倒すのは契約に入っているのかい?」
「入ってはいないな。だが、邪魔をするなら契約履行の障害として排除させて貰う」
「やっぱそーなるのね……。わかった、じゃあしりとりとかで勝負しない?俺、武器が壊れててさ」
「時間稼ぎか……、来ないのであれば私から行くぞ」
「もー少し時間くれないかなー、仕方ない!そらよ!」
ジョンは足元の土を蹴り上げてグリマルドの顔に目潰しを仕掛ける。
「小癪な……! 」
古典的かつオーソドックスな方法ではあるが、先程の話の内容からグリマルドがこう言った搦め手に弱いことに気付いたジョンは、卑怯と言われる事を迷わず実行し……成果を挙げた。グリマルドは両目を瞑り一瞬ジョンの姿を見失った。右手はジョンを向いたまま、左手で顔に付いた土を払う。
「武器がボロボロなのは本当なんだよな……!」
ジョンはもはや切れる刃の残っていないショートソードを投擲すると同時に半歩右に寄って左前に大きく跳躍した。すると、ジョンが半歩ずらした射線に黒い靄が走る!靄の出元はジョンに向けられた右手で、左手に刺さっているショートソードが苦し紛れの一撃のトリガーになっていた。
「残念!そこは外れだよッ!」
接近したジョンはグリマルドの懐に潜り込み、ショートソードと魔法を放った右手を掴んで一本背負いの様な形で地面に叩きつけた。
「ぐはっ!」
ジョンは直ぐ様ショートソードを抜いてバックステップで遠ざかる。
グリマルドは起き上がってゆっくりと土を払う。そして、ジョンを睨み付けるようにして言い放つ。
「何故トドメを刺さなかったのだ?」
「トドメを刺しても死にそうにないしな。第一、友達の婿入り先の上司だろ?結婚式で冷や酒飲みたくないからな」
確かにグリマルドはあの場で顔面にショートソードを突き立てられても、その結果を無かったことにする程度の魔法は使えた。ジョンはそのにおいを嗅ぎとって距離を置く選択をした。その選択は正しかった。ジョンの目的はフロネシスがラストクアを倒すまでの時間稼ぎだったからだ。
不意を突くことが出来れば先程のように接近戦に持ち込んで一撃を加える事が出来るが、それを警戒されて遠距離からヘリミアの様に雷撃や氷結する冷気を飛ばされては、この場に居る全員が束になってもグリマルドに敵わないと言う半ば事実に近い予想あった。
故に、遠ざかると言う事は場を繋ぐ意味で最良の結果をもたらした。
唯一外れた予想は、グリマルドが催眠や捕縛、使役、抵抗等の補助を得意とする魔族で攻撃魔法を使えないと言う点だけだった。
(こいつは……俺を敵に回したくないから剣を引いたと言うのか……?)
(ショートソードが貫通した左手がもう再生してやがる……やっぱトドメ指しとけばよかったか……?)
ジョンとグリマルドはお互いを警戒したままジリジリと半円状に体をズラしつつ右に進んでいった。
◇ ◇ ◇ ◇
「グッ……!」
ラストクアは振り回すような斬撃を踊るように放って行くが、そのすべてが聖盾の不思議な力に阻まれて衝撃すら通らない。
「やはり相性が悪いな……だが、時間稼ぎが出来れば充分……ハァアア!」
ラストクアは回転のギアを上げて聖盾ごとフロネシスを抑え込む。
「だからお前は“副団長”のままなんだラストクア。お前は俺が助けに来ることが前提の戦い方しか出来ない」
「なっ……く!」
フロネシスは、挑発に乗って一際強い斬撃を放ったタイミングに合わせて聖盾の衝撃無効を解除し、シールドバッシュをぶちかます。思わぬ衝撃に堪えきれないラストクアは半歩後退して体勢を立て直す……が!
「居ない!?」
フロネシスは地面に聖盾を立てたまま巨大な図体を消していた。
「ぐわぁっ!」
次の瞬間、ソフィア聖騎士団が誇る白銀の鎧の胸部分が深く陥没してラストクアが身体1つ分吹き飛ばされた。
「そこまで鎧が陥没してしまってはもう勝てまい」
フロネシスがラストクアの胸を陥没させたメイスを片手で振り回しながら背後に立ててある聖盾を回収する。
「ぞ……ぅ……か、聖盾……で、己の姿を消したか……」
フロネシスはシールドバッシュで出来た一瞬の隙に自らの盾の前に移動し、右手で自らの聖盾を軽くノックする。盾にフロネシス自身を攻撃だと認識させて、左手で聖盾を操り、フロネシスの存在を波長として伝える光を掻き消す事によって、一時的にフロネシスを目に見えぬ存在としたのだ。
「そうだ、お前が以前の様に聖盾の隙間を狙う突き主体の攻撃で俺を殺しに来たのなら多少手間取る事になっただろうがな。お前の敗因は何処までも他人を頼る所だ、ラストクア」




