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イクスアルディア戦記~俺とピエロと暗黒剣~  作者: 斎藤秋 & 弧滓 歩之雄 & 林集一 & 魔王さん
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第30話 決戦!ダークユニコーン

  「……どういう事だ?」


 フロネシスからの予想外の提案にグリマルドは思わず聞き返した。

 その様子をみてフロネシスは口角を吊り上げ答える。


「簡単な事だ。お前の狙いが聖剣と聖盾、つまりは私と相対する理由が聖盾なのであれば、コレを渡せば無理に争う事はあるまい?」


 それを聞き、ジョンは無表情を保ちながらも困惑した。

 聖盾とやらの具体的な価値はわかりかねるが、自分たちをなすすべもなく眠りに陥らせたユニコーンの催眠魔法を簡単に防ぎ、恐らく世界で一品物で魔族のお偉いさんが狙っている物。簡単に手放せる物とは思えない。


「……」


 グリマルドの沈黙を迷いととってか、フロネシスは更に畳みかける。


「なに、私の目的はそこの裏切り者の捕縛だ。本来であればお前と戦う理由はない。お前は先ほどこう言ったな? 『これで勝てないなら撤退だ』と。お前としても我々と真正面から戦うのは得策ではないと思っているのだろう? それは我々も同じだ、ダークユニコーンなぞ従えた魔族をまともに相手したくはない」


 いつも間にか『私』から『我々』になっている事に、ジョンはやや顔を引きつらせる。

 しかしこの交渉が上手くいけば余計な戦いを避けられるのも事実。この場は沈黙に徹する事にした。


「そこで、だ。今からそこのラストクアを捕えるまで手出しをしないというのであれば、お前にこの聖盾はくれてやろう。……こちらとしても高い払いだが、命と天秤にかけるなら安いものだ」


 似合わない饒舌でそこまで話すと、場にしばし沈黙が訪れる。

 得意顔のフロネシス。神妙な顔をするグリマルド。無表情に沈黙したままのラストクア。

 ジョンはその三人を見比べながら、内心自分のすべきことを考えていた。


(交渉が成立したならどうすればいい? 『魔族が手を出さない事』を信じてもう一人の男を攻撃か? それとも嘘を警戒して俺くらいはグリマルドとやらの方を見張っておくべきか?)


 そんなジョンの思考は、グリマルドの笑い声で掻き消された。


「……フッ」


 まさに堪えていた笑いが漏れ出したような声。それを口火にグリマルドは高笑いを始める。


「ハーッハッハッハッ! 全く! 魔族に契約を持ち出す副団長殿も大層なモノだが団長殿はそれ以上ですか! 全く胆の座った人間共ですね! 『聖騎士』が聞いてあきれる! お前たちほど邪悪な人間等相違ないのではないか!」


 その言葉にフロネシスは顔をしかめた。ラストクアは相変わらず沈黙を貫いている。


「お前達!」


 グリマルドはジョンの方をみて声を張り上げる。突如話しかけられたジョンは目を丸くし、『え? 俺?』という意味を込めて自らを指さす。


「そう、お前達だ! この男に教えてやれ! ヘリミアがお嬢様の婿契約をしたというのであれば何かしら奴から恩恵を貰っただろう? 奴は一度かお前たちを裏切ったか? 奴は契約を曖昧なモノにしてその場を去ったか?」


 グリマルドの言葉に、ジョンはヘリミアの行動を思い返す。

 

 トルトが婿候補になる事の条件として、ヘリミアに広陵遺跡攻略の手伝いを依頼した。その結果、移動から戦闘まで自身の貴重らしい魔法力を多量に使って全面的に協力してくれた。そして別れの際はトルトに探知魔法と称して婿候補の刻印を入れて去って行った。

 仕事はしっかりとこなし、取り立て準備も万全である。その事実を、ジョンはしっかりと答える。


「いや……」


「そうだろう! 魔族と契約するとはそう言う事だ! 我々は約束を守る! お前たち人間のように呼吸をするように相手を裏切ったりなどはしない! 残念でしたね団長殿! 私の契約者は副団長ラストクアだ! 先に私に声をかけてくれていればお前達に手をかしてやったモノも!」


 その言葉に、フロシネスは怒りの表情を露わにし剣に手を添えた。


「裏切らない……? よく言う、私の部下たちを欺き、殺害し、アンデッドに変えた貴様が……一体どの口でそれを言うのだ!!」


「おお恐い。嘘は言っていないぞ団長殿、『聖騎士団を欺き、殺害し、アンデッドに変える事』も契約内容の1つなのでしてね? さて、そう言う貴方は部下の仇討をするつもり満々ではないですか! 始めから私に聖盾を渡す気などなかったのでしょう?」


 グリマルドがそこまで言った所で沈黙していたグリマルドが口を開く。


「おしゃべりはここまでだ。さあグリマルドよ、俺との契約に従い奴らを殺せ」


「ええ、言われるまでもなく」


 グリマルドはそういうと手をかざす。

 それを合図に2体のダークユニコーンの目が赤く光る。


「な……なんだ!?」


 ダークユニコーンの赤い目を見た瞬間、ジョンは金縛りのような感覚に陥り自分の意思とは別に膝を地面についてしまう。


「フンッ!」


 そこでフロシネスが聖盾を高く掲げた。

 するとすぐにダークユニコーンの目の光が修まり、ジョンの身体も自由を取り戻した。


「チッ……やはり聖盾持ちを相手に絡め手は下策か……ならば!」


 グリマルドが再び手をかざすと、ダークユニコーン二体がそれぞれジョンとフロネシスに向かって突撃を開始した。

 ジョンとフロネシスは剣を構える。しかし、その前に割って入るように3つの人影が立ちふさがる。


「ヌゥンッ!!」


 一人はトラヴィス。ジョンに迫るダークユニコーンに大バサミのような武器で斬りかかった。ダークユニコーンはその一撃を角で受ける。

 一人と一匹の力は見事拮抗し、その場で身体を震わせながら押し合いが始まった。

 そこにもう1人、チグリスが大きくジャンプしながら更にダークユニコーンに斬りかかった。

 ダークユニコーンはすぐにトラヴィスとの押し合いを止め、チグリスの攻撃を躱す様に間合いを空ける。


「ハッ!!」


 最後の一人はトルト。フロネシスに迫るダークユニコーンを複数のナイフ、そしてそのナイフを注目を集めさせておいて認知されにくいように複数の透明の刃をブーメランのように軌道変化させながら投げる。

 

 複数の刃が身体に刺さり、ダークユニコーンは発狂した。そのまま突進の軌道があらぬ方向へ行き、近くの木に激突する。

 トルトはその様子を見ながらも、微塵もダークユニコーンから警戒を解かずジョンとフロシネスに叫ぶ。


「私達がお馬さんを引き受けます! お2人はメイン2人を!」


「かたじけない!」


 トルトの言葉にフロシネスは剣を抜き、迷わずラストクアに突撃した。


「覚悟しろラストクアァァァァァッ!」

「フロシネス団長! この聖剣の最後の錆にして差し上げましょう!!」


 ジョンはその様子を見送り、残りの一人グリマルドのほうへ目をやった。

 予想外のこちらの行動に、明らかな不快感を見せ瘴気を身体から迸らせている黒ローブの男がジョンの瞳に映る。

(で、必然的に俺はこの一番ヤバそうなヤツの相手になるのね!)

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