第23話 激闘!乱戦!スケルトンパニック!
ジョンはレッドスケルトンの剣を叩き落として、敵の攻撃力を奪う作戦に出てそれを成功させた。
剣を失ったレッドスケルトンは攻撃手段を欠くため、以降は一進一退の物とはなったが、肉付けのあるジョンに対して、スカスカの人のシールドバッシュは圧力を維持出来るものでは無かった。
一方、トラヴィスは持ち前のマサカリやハンマー等の打撃武器を器用に使って、重量による破壊を全面に展開してレッドスケルトンの群れを制圧していた。ジョンが機転と器用さと速度を使ったオールラウンダーの剣士とするならば、トラヴィスはその重量感のある筋肉を活かした殲滅型の戦士だった。前回のゴーレム戦でトラヴィスが居たならば、もっと楽に攻略出来ていただろう。また、トルトは冷静に危機を見極めて的確にジョン達のフォローに回っていた。
一方、ミレイは1体のレッドスケルトンを打ち負かした後、その骨を執拗に砕いていた。骨は赤から次第にピンクに染まっていき、やがて白くなり無限の再生を終えた。
「倒したかミレイッ!」
「倒したけど……復活するみたい」
粉々の白い欠片となったレッドスケルトンに血の湖の血がスーッと近付き、再び骨は赤く染まり始めた。再生を始めるレッドスケルトンにその場にいた全員は撤退を覚悟した。その時、木の上からバン!と言う音が響き渡る。
『レッドスケルトンは呪いの付与された武器なら攻撃が通ります!』
チグリスの持っている木の板にはそう書かれていた。実際にトラヴィスの武器で損傷していたレッドスケルトンもピンク色になりつつあった。
「はっはっは!呪いの武器で攻撃が通るならどうにかなりそうだな!」
「しかしキリがねぇな!ミレイ!湖の何かその……呪いみたいな血は喰えないのかッ?!」
《ギエッ!喰いたくねェ!幾ら暴食でも好み位……○×△~》
ミレイは軸足の爪先が反転する程の蹴りを放って戦闘中のレッドスケルトンを盾ごと吹き飛ばす。吹き飛ばされたレッドスケルトンはジョンと戦闘中のレッドスケルトンの群れに突っ込む。
「おっ!ありがとさん!」
隊列を崩したレッドスケルトンの盾の隙間から頭蓋骨を叩き割る長剣の一撃を放つ。
「あれ、俺の攻撃でもレッドスケルトンがピンク色に変色してる……何故!?」
「例の喋るスケルトンの呪いじゃないですか?」
「はっはっは!やはり私が潰す前にジョン殿が倒していたか!」
「くそーッ!やっぱりか!なんかこの長剣さっきより重くなってる気がしたんだよな……」
戦闘中に関わらずコントの様な事をしている皆の横をすり抜けてミレイは血の湖へと向かう。そして湖の浅瀬に暗黒剣を突き立てる。
「食べて」
《●◯★#〒※~!!》
余程呪いの類いを食べたくないのか、暗黒剣がよく分からない奇声を上げている。湖の浅瀬に突き立てられた暗黒剣の周りにうっすらと透明な流れが出来ている所から血を吸い取っている様子はある。このままならいけるかもしれないとジョン達には希望が見えた。
「グッ……!……らぁ!」
ジョンのブレストプレートにレッドスケルトンの斬撃が命中する。いかに肉付きの無い骨の放った攻撃とは言え、剣で殴られた鎧には傷は付くし、衝撃は身体に蓄積する。ジョンは前蹴りを放ってレッドスケルトンと距離を取る。振りかざす長剣は刃の部分がボロボロとなり、鈍器と化していた。そして持つ手の痺れもだいぶ強くなってきた。
トルトは遠距離支援の短剣と透明なプレートを投擲し終わり、呪いの短剣のみを手に持って護身のためだけに動いていた。トラヴィスはその身に余る筋肉に溜められたスタミナから、まだ少しは余裕があったが、パーティー全体としては限界が近かった。
◇ ◇ ◇ ◇
場面は代わって、ジョン達を観察する2つの人影――
「何だあいつらは……?」
「レッドスケルトンにダメージを与えてる所を見ると、全員呪われた装備を着けている様ですね」
「つまり、我らがソフィア聖騎士団の邪悪なる者と見なして良いと言う事かな?」
「そうです、ラストクア副団長。我らが計画を邪魔する奴は皆敵です。まぁ、邪悪なる者を産み出したのも我々なのですがね」
「君を含めて我々とは呼ばないで欲しいな。我々はソフィア聖騎士団、君はフリーの魔法使い、そうだろう?」
「ははは、そうですな」
白銀の髪に切れ長の眼、銀色のチェインメイルの上から銀糸で拵えたマントを羽織る「ソフィア聖騎士団副団長ラストクア」と呼ばれた男と、その側に立つ黒いローブの男が湖に水が流れ込む雌滝の上方から乱戦を繰り広げるジョン達を暫く眺めていたが、ジョン達から見えるべくも無い離れた場所のため、やがて森の奥へと消えていった。
◇ ◇ ◇ ◇




