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イクスアルディア戦記~俺とピエロと暗黒剣~  作者: 斎藤秋 & 弧滓 歩之雄 & 林集一 & 魔王さん
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第22話 血の湖


 

「これは……困ったな」

 

 ジョンは頭を掻きつつ片目片眉をつり上げる。ジョンは子供の扱いはあまり上手い方ではなかった。そこにトルトのサポートが入る。

 

「チグリスさんは何故此処にいるのですか?」

 

 チグリスは用意していた羊皮紙をサッと取り出す。何度か聞かれる事を想定して準備しているのか。

 

『親子喧嘩して、家を出てきました。その際「沈黙」の魔法をかけられたので、話せません。解ける方法を探しています』

 

「何で此処にいるんだ?あの看板は何のために書いたんだ?」

 

 何かを思い出すようにして、木板にカリカリと炭塊を滑らせていく。

 

『入ってくる人が迷わないための親切心。あと、立て札を見てどう動くのか見たかった。あと、暇だったから』

 

 妥当だろう。このくらいの年の子はこんなイタズラをする事もある。字の上手さと人里離れた森の中と言う特殊な状況があったので、イタズラの域を越えたと判断されただけで、特に誰にも損害は出していない。

 

「北の方向に進んだ先の神秘の湖にユニコーン居るか?あと、お前家出は良いけど1人は危なくないか?見てたならわかると思うが魔物居たぞ」

 

 長文になるのだろうか、少し悩みながら木板と炭塊でカリカリと文字を紡いでいく。

 

『この森の奥にユニコーンがいる。そのユニコーンを狙って沢山の骸骨が入ってきた。最近森がとっても不穏な空気になっている。私はユニコーンの友達だから大丈夫』


「友達ですか、それは心強い」 

「二股ユニコーンの角が欲しくて来たんだが、それ、貰えるか?」

 

 割りと重要な事を言ったが返答軽いものだった。チグリス少年はカリカリと木板に文字を書く。 

 

『多分、骸骨を追い払ったら貰えるかも。聞いてみる』

 

「わかった。骸骨はさっきの以外は何処にいる?」

 

『分からない。でも結構戦ってたみたいだから、もう居ないのかも』

 

「じゃあユニコーンの所へ向かう様に北へ向かおう。その道でスケルトンが居たら倒しておく様にするよ」 

 

『行ってみよう』

 

 ジョン達はまっすぐ北向の道に進んでいく。途中何度か立て札があり、その通りに進んでいけばあっという間に神秘の湖に到着した。迷いの森に立て札があるならもうここは迷いの森と言う名称を変えた方が良いのではないか。いや、俺達がそうだった様に、逆に従うかどうかと言う疑惑に迷い続けるのか。

 

「これが神秘の湖か……?」

 

 一行の目の前の湖は真っ赤に変色しており、血の様な粘り気を出している。湖に水を供給している雌瀧は透明な水なので、この怪異は湖の中にあると推察出来る。ジョンはふらふらと前に出ていくミレイの腕を掴んで制止する。ミレイの眼は乙女のショッピングモールを前にしたそれだった。

 

「ミレイ、この湖は呪いの類いか?」

 

「┃可愛い《呪われてる》色はしてる。でも、中に沈んでるモノの方がよっぽど┃可愛い《呪われてる》。」

 

「って事は怪異の原因は中に沈んでるんだな」

 

「分からない。原因は別かも」   

 

 勿論、見渡してもユニコーン等は見当たらない。チグリスも明らかに普段と違うと言ったジェスチャーをしている。先ずはこの怪異から解決するしかないか。

 

「チグリスさん、どうかしましたか?」

 

 チグリスは棒を水に入れて、付着した水のにおいを嗅いでいる。その後、カリカリと音を立てて板に文字をしたためる。 

 

『この水は何かの血が混ざってる。多分骸骨達の仕業かも。強い呪いの力を感じる』


「気にはなっていたのですが、チグリス・フォールンイグアスってもしかして、あの『貴方の街の秘境観光ガイド』を書いたユーフラテス・フォールンイグアスのお子さんか何かですか?」

 

「そういや広陵遺跡行った時にトルトはガイドブック持ってたな。あれの作者か?確かにユーフラテスだかなんだか言ってたような……」

 

『そうです』

 

「そうでしたか。だから呪われてるかどうかの鑑定が出来たんですね。フォールンイグアス家は錬金術師の一族ですから。あと、恐らく此処に居るのも『貴方の街の秘境観光ガイド』執筆の際にでも来たのでしょう。話が出来ない身の上なら、街より森の中の方がとでも考えたのでしょう。ユニコーンと知り合いなら尚更ですからね」

 

 チグリスの板の『そうです』の隣に強く『その通りです!』と書き加えられた。

 

「これでチグリスさんの謎は解けましたね。あとは、この湖の謎を解いてユニコーンを探すだけです」

 

 トルトが場をまとめた瞬間、「ボコリ」と血の湖から複数の気泡が浮かび上がり、平らな水面を波紋が揺らす。     

 

「おい、何か来るぞ!」

 

 恐らく腰ほどの深さしかないだろう血の湖から腰を屈めていた様子の武装した骸骨が起き上がる。

 

「レッドスケルトン……か!この数はヤバいッ!」

 

 湖から武装したレッドスケルトンが10体程立ち上がる。先程の様に1体や、せいぜい5体程度であればミレイの暗黒剣で削り倒す事が出来るだろうが、半分不死身のレッドスケルトンが10体、更に武装しているとなれば、いずれ体力が落ちた所を蹂躙される可能性が高い。

 

「クソッ!おい、チグリスは木の上に居ておけッ!トラヴィスと俺でレッドスケルトンを足止めするから、ミレイは1体1体丁寧に潰していけ!死にたくなければトルトも働けよッ!」

 

 ジョンの号令と共にパーティーは散開し、湖の周りで死闘が起きる。ジョンが下ろしたての長剣を抜いてレッドスケルトンの群れに右手にて薙ぎ払いを放つと、レッドスケルトン達は湖を背にして左右5体づつになるように飛び退いて別れた。ジョンはそのまま右側に突進して剣戟を斬り結ぶ。左右にフェイントを織り混ぜつつ放つジョンの剣撃はレッドスケルトンの盾に悉く弾かれ、時々盾の隙間から身体を掠める斬撃が飛んでくる。

 

「つ……強いッ!生身の騎士団を相手にしているみたいだ……ッ!」

 

 カカカッ!

 

 レッドスケルトンの骨の隙間を狙って透明なプレートが突き刺さる。トルトの援護だった。それを受けて意識が逸れたレッドスケルトンの左肩にジョン砕骨の突きが命中する。そのレッドスケルトンは左肩と盾を落とした。そこを橋頭堡にして一気に攻め立てようとするも、他のレッドスケルトンの牽制攻撃がそれを許さない。

 

「何だこの連携はッ!本当にスケルトンか!」

 

 ジョンは作戦を切り替えて、牽制を繰り出す斬撃を拐って、敵の剣を撃ち落とす作戦に出た。剣さえ無ければ高々スケルトン。どうにでもなると考えての作戦だった。

 

 味方を庇うために次々と牽制の斬撃を繰り出すレッドスケルトンの剣を受け止め、全力で叩き落とす。新品の剣はあっという間に刃零れだらけとなったが、4体の武器を叩き落として、それを拾われない様に後方に蹴り飛ばす事が出来た。

 

「この剣の支払いは高く付くぜレッドスケルトン!」

 

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