表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イクスアルディア戦記~俺とピエロと暗黒剣~  作者: 斎藤秋 & 弧滓 歩之雄 & 林集一 & 魔王さん
22/55

第20話 呪いのパーティー


 

「お、自由に歩けるな」

 

 落とし穴に辿り着くまで他の場所に向かう事が封じられていたかの様になっていた足取りも回復し、道を引き返す事が出来た一行は、来た道を戻って再び立て看板の場所に来ていた。

 

 

『北 神秘の泉

 東 落とし穴

 西 宝箱

 南 出口   』

 

 

「さて、ここは一気に神秘の泉に向かうか」

 

「えー、宝箱取りに行きましょうよー」

 

 ジョンの提案にトルトが噛み付く。

 

「いや、ここは何か怪しい。昨日のような感じだと多分、宝箱を取るまで引き返せない可能性がある。宝箱まで延々と歩かされるのはごめんだ」

 

「いや、見えてるんですよ、ほら」

 

 トルトの指を指す方向には確かに緑色のカーテンに阻まれつつも人工物の様な色があった。

 

「よく見えるな、あんな遠く」

 

「多分、100mも無いんじゃないでしょうか?」

 

「うーん」

 

 確かに手元に転がってる宝箱は取っておきたい気持ちにはなるが、そもそも宝箱を設置した何者かの意図が気になる。そもそも設置する意味がわからない。迷ったら…聞いてみるか。

 

「多数決だ、何処行きたい?」

 

「神秘の泉ですな!」

 

「勿論宝箱です」  

 

「出口」

 

 トラヴィスは真面目に神秘の泉でトルトは宝箱を堅守、ミレイはまぁ、戦闘以外はあんなもんか。しかし、パーティーがバラバラになるってのも問題だな。ああ…迷う。迷わずの森で俺だけが迷っている。

 

 …………。

 

「まぁ、俺も宝箱に1票でちゃちゃっと取りに行くか、考えていても進まねぇ!」         

 

  ジョンの一言で宝箱のほうへ向かう事になった一同は、100メートル程の距離を歩きながら雑談をしていた。


「しっかし本当に妙な森だな! 誰が立てたかわからねー看板に何のためにあるのかわからない宝箱」


「何故かアンデッドが湧いて出きたかと思えばレッドスケルトンのような強敵に、喋るスケルトンなんてのもいますね」


 ジョンが今現在の事を口にし、トルトが昨日の事を振り替える。それに対してミレイが口を挟んできた。


「スケルトンは喋らない」


「ん? あぁミレイは他のアンデッド相手にしてたから知らねぇんだな。俺も初めて見たが、いたんだよ。いつの間にか近くに立って居やがってな、反射的に倒したからよくわかんねーけど」


「普通、スケルトンは喋らない」


 昨日ミレイ以外全員が目撃した事実に、ミレイは頑なに反論する。

 

 ジョンはただ事実を話しているだけである。にも関わらずまるで『自分がウソをついている』とでも言いたげなミレイの反応に、やや眉を潜めて言い返した。


「居たもんは居たんだよ、俺もスケルトンが喋るなんて聞いたことねーよ。だが、言ってしまえば喋る剣なんてものもお前と出会って初めてみたぜ?ミレイ」


 そこまでいうとミレイは立ち止まった。それに釣られるように全員が立ち止まり、ミレイのほうへ顔を向けた。


「喋るスケルトン、本当にいた?」


 ミレイがとても悲しそうな、困ったような顔をして聞いてくる。

 

 そんな顔をされるとは思わなかったジョンは思わず困惑した。そのジョンの変わりと言わんばかりにトルトがミレイに答えを返す。


「ええ、私もトラヴィスさんもみました。人語を話すスケルトン、確かにおりましたよ」


 そう答えると、ミレイはより悲しそうな顔をし視線を落とす。そしてすぼめた口で小さく呟いた。


「そっか、いたの……」


「ミレイ、一体どうしたのだ?」


 ミレイの普通でない様子にトラヴィスが心配する。

 

 ミレイはそのトラヴィスのほうを、やや睨むように頬っぺたを膨らませながら口を開いた。


「会いたかったの!」


 思いもよらない答えにジョンは困惑を深めながら思わず聞き返した。


「会いたかった? 喋るスケルトンにか?」


「スケルトンは普通喋らない。それでも喋るのは|《暗黒剣》この剣と一緒! すっごく可愛い証拠! だから会いたかったの!」


 ぶーっ、と機嫌を悪くするミレイを見ながら、相手が言っている事を整理した。


 ミレイが言う『可愛い』は『呪い』の類いを意味する。

 ミレイの持つ喋る暗黒剣が開放された時の尋常でない力は既に2回見ている。

 更にミレイが日常的に暗黒剣を殴って押さえつけているように、管理の大変さもよくわかっている。

 喋るスケルトンはそれと同等の存在。

 それと同等の『呪い』……


「なぁミレイ、その呪い(可愛さ)は倒してしまえばもう無くなってしまうのか?」


「喋るくらい可愛いのなら、多分最初に触った人か最後に壊した人に憑く。私に言ってくれれば良かったのに……」


 そこまで聞いて、ジョンはトラヴィスの方へ向いた。そこで目に写ったのは青白い顔をしたハゲ頭。だが、恐らく自分も同じような顔色をしているだろうとジョンは確信した。


「と、止めを指したのはトラヴィスだよな?」


「さ、最初に攻撃したのはジョン殿だろう?」


「いやでも俺はちょっと小突いただけだし! 倒れた後も骨は動いていたし!」


「いやいやあの一撃で大体粉砕されていただろう?! 私は後始末をしたに過ぎない!」


 突如意味のない言い争いを始めるジョンとトラヴィス。その隣で膨れっ面のまま突っ立ってるミレイ。

 

 その3人をそれぞれ見やって、トルトは怪しげな店で貰った短剣を器用に指だけで回しながら、まるで他人事のように溜め息を放った。

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ