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イクスアルディア戦記~俺とピエロと暗黒剣~  作者: 斎藤秋 & 弧滓 歩之雄 & 林集一 & 魔王さん
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第19話 穴があったら入りたい


 

 一行はミレイの回復を待ってから歩き出す。何故か落とし穴の方向へ。

 

「なぁ、気付いたか?」

 

「ええ、私達歩かされてますね」

 

「?」

 

 ミレイは気付いても居なかったが、トルトだけは気付いていた様だ。トラヴィスは少し怪しい気がする程度は感じてるかもしれない。さておき俺達は落とし穴の方向に歩かされている。本来なら引き返すぞと言う筈の俺が、その一言を封じられたかのように落とし穴に向かって歩かされている。

 

「落とし穴あった」

 

 ミレイは落とし穴を覗き込むと、底に突き刺さった竹槍に数人分の服が引っ掛かっているのが見えた。恐らく先程のレッドスケルトンとスケルトンの衣服だろう。

 

「…蝉の脱け殻」

 

 ミレイは落とし穴の底の衣服を暗黒剣でつつきながら言い放った。

 

「はっ、スケルトンは蝉かよ。なら死ぬ前の俺達は幼虫だな」

 

 広陵遺跡の時以上に話す様になったミレイの面白い一面にジョン達は微笑んだ。その話題を広げるべくトラヴィスが昔話を始める。

 

「ミレイ!昔よく蝉取ったな!そしてよく蝉食ったな!」

 

「食べたのはあなただけ。私はとっただけ」

 

「そう言えばミレイとトラヴィスは幼馴染だったか」

 

「そうだ「そう」」

 

「込み入った事を聞くが、何故可愛いもの(呪われたもの)を好きになったんだ?あと、何故暗黒剣何て持ってるんだ?」

 

「可愛いものが好きなのはみんなと一緒。暗黒剣持っているのは…拾ったから」

 

「んー、どうやって聞けば良いかな……」

 

「トラヴィスさんに聞いてみては?ミレイさんに断ってからでも」

 

「好きに聞いて」

 

「わかった、では……ミレイだが、10才頃までは普通だった。だが、9年前の闇の道化師事件から少しおかしくなった」

 

「闇の道化師事件?」

 

「そうだ、闇の道化師事件。広陵遺跡から出てきた魔物が街を襲ったんだ。広陵遺跡は広い上に魔物の生息条件が整ってるからな、時々スタンピードが起こるんだ。そのスタンピードの先頭に立ってたのが闇の道化師と言うよく分からないモンスターだった。倒したと思ったらふっと消えてふっと出てくる。出てきた頃には全快しているから、倒し様がない。丁度レッドスケルトンみたいな感じだな」

 

「ふむ。道化師と聞いてドキッとしましたが私ではない様ですね」

 

「当たり前だ」

 

「そして、スタンピード自体は1日でカタが付いたのだが、闇の道化師はそれから3日間暴れ続けた。冒険者パーティーが1日30交代で抑えていたのだが、どうにも人手が足らず、サポートではあるが、私とゴロツキ、ミレイにまで順番が回ってきた。闇の道化師との戦い方は戦ってる様子を見世物の様に見ていたから、相手の攻撃にさえ気を付けていれば相手は可能だった。しかし、闇の道化師の目的は街ではなく、ミレイだったのだ」

 

「闇の道化師はミレイに何かを語りかけた後すぐ消滅した。服だけを残してな。その時の事は皆知っているが、その時、何を言っていたかは未だに分かってないのだ。肝心のミレイが話してくれんのでな!」

 

「ミレイさんミレイさん、もしよかったら話してくれませんか?」

 

「いいよ」

 

「!?俺達には話してくれなかったのに!?」

 

「トルトは私の仲間、同じ境遇」

 

「同じ……?」

 

「私はあの時、10年後に不死王のお嫁さんになる呪いを掛けられた。その時から可愛いもの(呪われたもの)がもっと可愛く見える様になった。だからトルトと同じ」

 

「なるほど……俺達が心配すると思って言わなかったんだな……」

 

「違う。呪いの印が見せられなかった」

 

「呪いの印?」

 

「トルトの首の奴」

 

「ああ、これですね」

 

 トルトは襟を捲ってヘリミアに付けられた山羊の印を見せる。

 

「ミレイさんはビキニアーマーですから、隠せる所がブクァォ!」

 

 ミレイの秘密を推測するトルトの肝臓(レバー)にミレイのコークスクリューが抉り込まれる。鳩尾の呪いの短剣は攻撃が決まる寸前に身震いをして腰へと移動した。

 

「それ以上は言わせない」

 

「そうか……ミレイのおっぱいの隣にあるあの印がそん…ゴブァ!」

 

 トラヴィスの肺にある空気が高速で飛来した抜き身の暗黒剣の柄によって全て体外へと射出させられる。投擲したミレイのフォームはマサカリ投法と呼ばれるそれであった。

 

「どこで見た」

 

「お風呂を覗い…ッ!」

 

 続いての一撃はゆらゆらと近付いて来たミレイのガゼルパンチ。膝を付いているトラヴィスの顎に強烈な一撃が入った。

 

「記憶無くして」

 

 ジョンの疑問の発露から僅か5分。辺りは魔物に襲われたパーティーが如き状態となった。そして、陽が傾き切っており、ゆっくりと夜へと向かっていた。ジョンはこの辺でキャンプを取るべきだと判断し、火を焚いて2人の重傷者を並べて寝かせた。

 

 目が覚めた2人は示し合わせた様に「前後の記憶がない」と言い張った。トラヴィスに至っては過去の記憶も部分的に抜け落ちたらしく、「ピンク色」に関する記憶は特に無いらしい。その台詞を言い終わる前に再びガゼルパンチからのデンプシーロールが炸裂した。トラヴィスと、トバッチリを食ったトルトは結局朝まで目覚める事はなかった。

 

 一応「俺は良いのか?」と聞いたが、「同じ女だから」と言う理由で良しとされた。そして、ミレイは戦闘の疲れがある為に先に寝た。見張り要員が全滅している為、結局朝まで俺が眠る事は出来なかった。「女だから」と言われた後に「俺男だから」と言っておけば俺も眠れたのかな…とも思ったが、トルトの肝臓やトラヴィスの顎を見るに思い直した。

 

 そう言えば、トルトが気絶している間もトルトの短剣はチョロチョロと服の内側を動き回っていてちょっと気持ち悪い。時々カタカタと震えて会話にも入ってくるし、早く呪いを解いてやらないとな。


 

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