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イクスアルディア戦記~俺とピエロと暗黒剣~  作者: 斎藤秋 & 弧滓 歩之雄 & 林集一 & 魔王さん
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第2話 見付けにくいものでした。


 

 冒険者組合(アドベンチャーギルド)職人組合(クラフトマンギルド)農協組合(ファーマーズギルド)の提携を受けている『馬の横顔亭』は今日も様々な人々でごった返していた。そして店の外もごった返していた。

 

「どうしてこうなった」

 

 本日結成された3人組パーティーの中で比較的まともな位置に居るジョンは喧騒の終わりにそう呟いた。

 

◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 馬の横顔亭を出たジョンは、ひたすら無言で抜き身の剣をマウントで殴り続けるビキニアーマーの少女ミレイと2人、ピエロの中年トルトを待っていた。今日は月の影響で暗黒剣の魔力が増幅されているからか、ミレイは暗黒剣を押さえ込むのに時間がかかっているようだ。

 

「それにしても、よく正気を保てるな。素手で暗黒剣を殴り付けるなんて痛くないのか?」

 

「多少痛い、でも、抑えつけなければ死ぬ」

 

 ミレイは無表情のまま大きく振りかぶり暗黒剣を殴り付ける。

 

「まぁ、その結果がその手なんだろうな……。呪われた暗黒剣の所有者にして素手喧嘩(ステゴロ)の強者ミレイ。何と言うか、暗黒剣の使い方間違ってる気がするけどなぁ~」 

 

 君子であれば危うきには近づかないのだが、ここは酒場『馬の横顔亭』真ん前の通りともあって、女性に絡む酔っぱらいは雲霞の如く自然発生する。そのゴロツキの数は半ダース。

 

「へっへっへ、ねーちゃん達楽しそうじゃねーか。俺達のロングソードも可愛がっちゃくれないかねぇ」

 

「俺は女じゃないぜ、出直しな」

 

「へっへっへ、別に男でも女でも良いんだなこれが……へへへ」

 

「はぁ……。ヴン殴って良いか?」

 

「へっへっへ、殴り疲れた所をそのまま組みしだいておっぱい揉んでやるぜ」

 

「へっへっへ……って犬かお前らぁアアアア!」

 

 ジョンは綺麗な右ストレートをゴロツキに向かってぶっ放つ。それはゴロツキの頬に吸い込まれるようにして命中し、ゴロツキの身体を斜め後ろに仰け反らせる。    

 

「良いパンチしてるじゃねぇか……」

 

「ハッ、お前も良い身体(ぼうぎょりょく)してるじゃないか」

 

「あっ、私の出番ありますかね?ジョンさん」

 

 出遅れた中年ピエロのトルトが入口より丁寧に話し掛ける。

 

「出来る事をしろ出来る事をッ!」

 

「じゃあ、失礼して……。ここに有りますは研ぎに研ぎたるよく斬れる短剣にござい。今からこの短剣でお手玉をしてみましょう!どんどん増えますよ」

 

「この状況で!?」 

 

 ジョンはチラッとミレイを見るもまだ無言で剣を殴っているのを確認しただけだった。トルトは何故か大道芸を始めている。

 

「クソッ、俺1人でやるしかないのか……!」

 

 先程までは反撃を許す隙もない位に一方的だったジョンの攻撃は、疲労により徐々に精彩を欠き、時々ゴロツキからの鉄拳反撃を許すまでになった。しかし、ゴロツキは反撃こそすれ、それは当たるレベルの攻撃とはならなかった。一応ゴロツキにも流儀があるらしく、一対一を守って戦っていた。

 

 ジョンは戦闘中チラチラとミレイとトルトーを見るが、ミレイは相変わらず剣に対する凶戦士(バーサーカー)となっているし、トルトはお手玉をしている短剣の数が増えていた以外は変わらず、こちらを見向きもしない。

 

「あいつ少し無愛想なだけで普通にピエロ出来るじゃねぇか……!」 

 

 5分後、剣を殴り終えたミレイも合流して、無事にゴロツキをしばき終えた。戦闘を終えたミレイ達の足下には夥しい血痕と死屍累々のゴロツキ達、そして通りすがりの方々が投げていったお捻りの銅貨が転がっていた。

 

「ふぅ……じゃあ、さっさと冒険者組合(アドベンチャーギルド)へ行こうか。余計な時間食ったわ」

 

「あっ、待って下さい」 

 

 トルトは6本まで増えた短剣を背中のケースへ仕舞い、落ちている銅貨を拾い集めた。そして、均等に分けてゴロツキの前に積んだ。

 

「この銅貨、半分はゴロツキさん達に残しておきましょうか。夕飯代位にはなりますから」

 

「はい、これはミレイさんの分」

 

「はい、これはジョンさんの分です」

 

 ジョンは目を花丸にしてのびているゴロツキの上で数枚の銅貨を受け取りつつこう呟いた。


「どうしてこうなった」

 

「さて、行きましょうか冒険者組合(アドベンチャーギルド)。私の病気を治すために」


 3人組は当初の目的通り、冒険者組合(アドベンチャーギルド)へと足を運ぶ。そして、「依頼を受けました」と言う紙を貰うと言う簡単な手続きをしてから再び『馬の横顔亭』に戻ってきた。各々が目的地に滞在する間や往復期間の食料や水等を買うためだ。と言っても大体が調味料と非常食程度で、基本的には現地調達なのだ。

 

 買い出し中に、食事をして居るゴロツキ達を遠目に見付けたが、特に何も争い事は起こらなかった。それどころか、こちらを見ながら手に持ったチキンを左右に振って来た。この手の暇人は後腐れなくて良い。ただ暇で馬鹿なだけなのだ。因みにあのゴロツキのうち1人は「ゴロツキ」と言う名前らしい。会話の端々にしょうもない情報を拾う。

 

 買い出しは特に滞りなく行われて、ジョン・ミレイ・トルトの3人は馬車へと乗り込んだ。

 


 


 

 

 

後書き

※この話で覚えておく事

・トルトは器用。

・ジョンは普通に強い。

・ミレイは暗黒剣を殴るお仕事。

・ゴロツキはゴロツキ。    

 



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