第16話 真の買い物
「取り敢えず、呪われてない武器防具を新調しよう!アイアンゴーレム戦で鈍器が無くて困ったからな、対策は立てていこう」
ジョンが歩きながら酒場『馬の横顔亭』のカウンターに座っているミレイに話し掛ける。
「鈍器ならハンマー辺りは常備してる」
話し掛けて無いのにジョンにトラヴィスが返答を返す。
「ねぇ、ミレイさん。このむさ苦しいオッサンはついてくるんですか?」
「ついて来る。呪い並みのストーカーだから」
「オッサン、あー、トラヴィスって呪いの武器なのか?」
「武器と言われたら武器だが人と言われても人だな!呪われている如くお嬢さんに付いていくが」
無駄に筋肉をアピールしてくるハゲのオッサンによく分からない説明を受ける。そこで以前聞いた声が掛かる。
「トラヴィスじゃねえか!」
「ゴロツキか?久しぶりだな」
そこに思いもよらない乱入者が表わる。ミレイを仲間にした時に絡んできたゴロツキだ。久々の再会だったらしくピシピシグッグッハンドシェイクか何かをしている。
「何やってんだお前急に居なくなって!」
「今は呪いの十徳武器背負ってストーカーやってんだ」
「もしかして……ミレイの武器か?」
「ああ、持てば俺でも役に立てるかと思ってな」
「そうか、ならまぁ何も言うまい」
ゴロツキはジョンに向き合ってこう言った。
「ジョンさん!ミレイとトラヴィスを宜しくお願いします!」
「え、何で名前知ってるの?ちょっと怖いけど」
「(ヒソヒソ)ジョンさん、例の教会での話の通りでしたらゴロツキさんはミレイさんの周りの人を呪われて無いかどうかとか調べてるのかと、それくらいはするんじゃないですかね?」
「あー、そうか。うん、わかった。ミレイは俺が何とかする」
「宜しくお願いします!」
「何の話?」
「ミレイの昔からの友達なんだろ? コイツら? これからは俺のパーティーで面倒を見るって言ったのよ」
「そう」
「そうと決まったらあまり┃可愛くない《呪われてない》装備品を買いに行くか!」
再び4人となったパーティーはゴロツキに見送られ、『馬の横顔亭』の主人に聞いた普通の武器防具屋へ向かい、買い物をした。トルトはピエロ服と靴の新調、俺はサーコートの上に羽織る軽い鎖帷子と薄いブレストプレートとレッグアーマー・ガントレットを買った。それから長旅で歯零れした長剣も店で一番高くて新しいのに新調した。ブレストプレートは高級品を買ったので防具と言うより服を着重ねしている感覚で軽い。ミレイはビキニアーマー以外の防具を着けるとビキニアーマーが嫉妬して怒ると言う理由で靴と下着だけの新調となった。それから、ユニコーンの角を落とす為のノコギリも購入した。
「結構買ったな」
「主にジョンさんが重装備になっただけで、私達は小物を入れ替えた程度ですからね」
「ピエロの格好辞めて鎧か何か着たらどうだ?」
「重いのはちょっと……」
何が重いのかと言われたらその腹の脂肪じゃないのかと言いたいがまぁ傷付きやすい性格だったら困るから言わないべきか、まぁ視線で気付いてるだろう。チラッとミレイを見るに特に装備が変わった様子はない。
「ミレイは……まぁ聞くまでもなく駄目か」
「私は? 私は聞かないのですか?」
「トラヴィスさんはどーして鎧を着ないんですか?」
「これよ(スパーン)」
トラヴィスは自慢の筋肉に平手打ちをして満面な笑顔で対応する。
「これってなんですかー(棒)」
「これは上腕二頭筋。(スパーン)惚れ惚れしないか?お嬢さん(スパーン)」
トラヴィスは力瘤をペチペチ叩いて返事する。
「そーですね。それと俺は男だ」
「それは失礼した。(スパーン)」
「ミレイ、トラヴィスって昔からこうだったのか?」
「多分……」
「そうか、じゃあ行くか」
「おう!(スパーン)」
「また濃いのが加入しましたね」
「直ぐに脱退させるよ。ユニコーン取っ捕まえてみんな解呪してやる」
「そう言えば、ユニコーンは清らかな乙女しか捕まえられないと聞きましたが、その点どうでしょうか?」
「あ?そんなもんミレイが居るだろうが」
「呪われてますけど良いんですかね?見た目完全に恥女ですよ?」
「中身が処女ならいーんだろ?」
ミレイが暗黒剣の柄に手を掛ける。何となく空気感でトルトのセクハラに気付いたっぽいな。「呪い」には反応しなかったが「恥女」の部分で頭に?が出てるが反応はあった、……フォローしてやるか。
「つまり、トルトは俺に“清らかな”――かどうか聞いてると取って良いのか?」
「そうですね」
「まぁ、それなりに貞操は守られては居るな。俺男だし」
「いざと言う時には頼りにしてますよ。ジョンさん。ユニコーンは迷いの森に居ると聞いた事があります。さっさと行きましょうか」
トルトは半ば強引に話を終わらせて、馬車で迷いの森へと向かった。
その馬車の中でトルトはヒソヒソ話をしてくる。
「(ヒソヒソ)実は『呪われてますけど良いんですかね?見た目完全に恥女ですよ?』と言った時に鳩尾に呪いの短剣を仕込んでおいたんですが、多少言い過ぎたのか暗黒剣に手を掛けたので、どーなるかと思ってました。助かりましたよジョンさん」
ああ、殴られようとしたのね。
「(ヒソヒソ)トルト……お前……そんなに危ない橋を渡ろうとしてたのか……」
旅は続いていく……。




