第14話 高い買い物
ごめんなさいまた遅れました
「よし、それじゃあ依頼の金も入ったし、武器でも買いに行くか」
ジョンはみんなに言った。
「どこか、良い店を知っているのですか?」
トルトがジョンに聞いた。
「いや、知らねぇ。ミレイどこか知らないか?」
「可愛いものが沢山あるお店なら知ってる」
「よし、じゃあとりあえずそこにいこうか」
ミレイが2人を連れて行った先は、ボロボロな廃墟の様な、いやまさに廃墟の店だった。ジョンはミレイに聞いた。
「おい、ミレイ。お化け屋敷か?ここ。ここであっているのか?ボロさが広陵遺跡と大して変わらねーぞ」
ミレイは平然と言い返す。
「この店であってる」
「なんだか、怖いですね……」
3人は店内に入っていった。店内は薄暗く、飾っている武器や防具も埃を被っており、中には蜘蛛の巣が掛かっている物や乾燥したヤモリの死骸がくっついてるのもあった。
「こんな所に良い武器なんかあるのか?」
ジョンはガサガサと剣を探しながら言った。手に取る剣は錆びていたり、金具が外れていたり、その割に刀身はギラギラと鉛色に輝いていたりしてそれはまるで……。
「もしや、暗黒剣ここで手に入れたのか?」
「そう、ここで拾った」
予想外の展開にジョンとトルトは苦笑する。
「俺たちにも呪いの武器を持たす気だったんかい!」
「呪いが弱い物もある」
「いや、呪いとか怖いから。勘弁」
トルトは一本の短剣を手に取って眺める。
「でも、よく探してみれば良さそうな武器もありますよ。ほら、この短剣とか」
そう言ってトルトは短剣を手でくるくるとバトンの様に回す。次第に短剣はトルトの手の甲や指の間をするする抜けて生き物の様に動き出す。人差し指と中指で摘まんで上に回転させて投げ、人差し指と親指で摘まむようにキャッチする。その動きはいつぞやの透明なプレートを投げた時よりスムーズであった。
「お客さん。良い目をしているね。それはかなりの逸品だよ」
トルトはギョッとして短剣を落とし掛けたが、慌てて空中でキャッチして声のする方向を見た。そこには怪しげな店主らしき老婆の姿があった。
「そうなのですか」
トルトは短剣の柄にある穴に人差し指を突っ込み、くるくると振り回しながら答える。
「その短剣は思いを果たすことが出来なかった少女が、自らの喉を突いて死ぬのに使った短剣で、それ以来その短剣には、女の霊が取り憑いていると言われている」
「トルト、それはやめとけ。いざと言う時に戦えない可能性がある。短剣は殴りにくそうだぞ」
「はーい、あれ。あれ……」
トルトは短剣を置こうとするもどうにも手にペタリと引っ掛かって取れない。
「どうしましょう」
「早くひっぺがしてから置いとけ、取れないならミレイに殴ってもらえ」
「ミレイさ~ん」
「自分で殴って」
「そんな無茶な」
「おっ、この剣良さそうじゃねえか」
「お客さんもお目が高い。その剣はあの伝説のジョン・ケッチ王の剣ですぞ」
「ジョン?ダメな方のジョン王の剣か。そいつは残念」
「因みに呪われてますが」
「どの道ろくなものがないな。他の店にいくぞ」
「この短剣どうしましょう」
トルトが切実そうな声でジョンに聞く。
「お客様は、その短剣になつかれたようですね。お代はいりません。差し上げますのでどうか大切にしてやってください」
するとトルトの手から短剣は離れて勝手に腰のベルトに差し込まれた。
「何これ怖い。勝手に動きますね」
その時、店の入り口から野太い男の声が聞こえた。新しく来た客の様だ。
「ここはやめたほうがいいぞ。呪われた武器しかないからな」
3人の目線の先にはマサカリ・大鋏・大太刀・ハルバード等を背中に差した半裸の大男が立っていた。頭髪はなく、身に纏う布も僅かに腰に掛かる程度。腰のベルトにも背中と同じく大小様々な武器が差してある。まぁ、恐らく武器商人か頭のおかしい奴のどちらかなんだろう。両方の可能性もあるが、恐らく後者の可能性が高い。
「だ、そうだ。2人とも行くぞ」
そうなれば話は簡単だ。絡まなければ良いのだ。いや、全力で絡まれないようにすれば良いのだ。気配を消して意識を反対側に持ってきてゆっくり且つ素早く通り過ぎる。
が、そうは問屋が卸さない。変質者は変質者たる素養をもって変質者足り得るのだ。スルースキルを全開にしたジョンの肩は無残にも変質者に鷲掴みにされて、動きを止められてしまう。そして、つい振り返ってしまったジョンは満面の笑みの変質者と眼が合ってしまう。
「お嬢さん、これが大胸筋。そしてこれが三角筋。これが全て繋がって何て言うか分かりますか?私の名前はトラヴィス・サザーランド。これからも宜しく!」
(い……いかん。引き込まれる……。キャラが濃い……!)




