第12話 私がドエーフです。
町の中で目立つ遺骸はシーツに使う布でぐるぐる巻きにして、冒険者組合まで持っていく。一応使えるかどうかの確認のためだ。憲兵に止められたら完全にアウトなのだが、遺骸は結構な年代物なので、何か言われたら祖父の墓の改装しようかとか何とか言おうかとかしょうもない事を考えながら、一行は受付窓口に到達した。受付の女性達は今日も無愛想に荒くれの冒険者処理をして居る。
一仕事終えての報告はジョンが行う。
「お姉さん。これ、依頼書。依頼を達成したんだが、依頼主に会えるかな?依頼品を渡す際に話したい事がある」
「ちょうど客間に居ますよ。新しい依頼をしに来たらしいです。ノックして入ったらどうですか?」
受付のお姉さんは笑いながらこちらを見ている。作り笑顔か何なのか、少し怖い感じの笑顔だった。
ノックして客間に入ると、
「俺が依頼主のドエーフだ。諸君大義であった」
「偉そうなオッサンだな」
「私はピエロのオッサンです」
今日は少しうざい性格なのかトルトが会話に割り込んでくる。
「少し違う。正確には偉いオッサンなんだな」
「私も少し違います。正確には素敵なピエロのオッサンです。あ、名前は何ですか?私はトルト・メタモルファンです」
「それはそれは、俺はドエーフ・ツー・ミエルヴァーショ。爵位は男爵。少し南のミエルヴァーショ島の領主をしている」
「うおっ、いや、失礼しました。貴族様でしたか。俺r……私はジョン・ジョガー・ジョーシャンク。しがない旅の剣士です。例のキノコをお持ちしました」
「うむ、助かる。どうしても助けたい者が居るので、万能薬を作らせているのだが、材料がどれもこれも手に入りにくいものでな」
「それなんですが、私達も病気を抱えている知り合いがおりまして、材料を多目に提供しますので万能薬を少し分けて貰える事出来ますか?」
「まぁ、出来上がる量にもよるが、余るようならば優先的に譲ると約束しよう。そして、もし共同戦線を張ると言うのなら残りの材料を集めるのを手伝って欲しい。勿論、依頼金は渡す」
「ミレイ、トルト、あーヘリミアもかな。どうする?」
「私は構わない」
「はい、問題ありません」
「私は口を挟む権利はありませんわ。早くトルト様を健康にしていただければ十分ですわ」
「ドエーフ・ツー・ミエルヴァーショ様、是非とも宜しくお願いします」
「ふむ。こちらこそ宜しく頼む。事務的な事になるが、一応この万能薬と言うのは材料は手に入りにくいものばかりで、1つ作るのにも費用がとんでもなく嵩むのでな、1個あたりの値段を決めようと思う。……そうだな。1つ1,000,000Gで譲ろう」
「今回の依頼金の倍ですか」
「まぁ、魔導師や錬金術師も雇っているからな。あと必要なのは不死鳥の嘴と二股ユニコーンの角だな。今回のキノコはランク的にB級アイテムになるが、不死鳥の嘴と二股ユニコーンの角はA級アイテムとなる。それなりに難しいだろうから覚悟していてくれ」
「あと、素材なんですけど……これで良いですか?」
トルトは袋から縮んだキノコを出す。
「うむ、これで間違いない。私が見た本には同じ物が書かれていた」
「実は14個あるんですが……」
「14……か、まぁ、買い取ろう。取り敢えずは預かっておくから、万能薬の代金代わりに持っておくとするよ」
「ありがとうございます」
「取り敢えず、500,000Gは渡しておこう。」
「助かります」
「ところでその人型の置物みたいな物はなんだ?」
「これは……その」
「盗掘は程々にな。何も見なかった事にしておこう。これも預かっておくか?」
「助かります」
◇ ◇ ◇ ◇
「偉い人なら依頼書に書いておいた方がいいですよねー」
離れた場所でトルトがミレイに愚痴る。
「冒険者組合は権力に対して平等だというポーズじゃない?」
ミレイはトルトに付き合って会話をしていた。
「不死鳥の嘴に二股ユニコーンの角か……。この状態じゃあ手に終負えないな。そもそも今回もかなり危なかった。何か準備してから行くか」
「そうですね。私も新しいピエロ服が欲しいですし」
「それいるか?」
◇ ◇ ◇ ◇
???「くんくんくん……。ほう、色、形、におい、全てにおいて最高のキノコだな。14個もあれば大量に出来るな……楽しみだ」




