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イクスアルディア戦記~俺とピエロと暗黒剣~  作者: 斎藤秋 & 弧滓 歩之雄 & 林集一 & 魔王さん
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第10話 決着


 

 「しかし、今度は2体同時ですか。きついですな」

 

 トルトが瓦礫に座って、膝の上に猫かなんかを撫でているモーションをしつつ突然呑気な事を言い出す。

 

 ジョンは地面にめり込んだモーニングスターを拾いながら呟く。

 

「石を投げるなり何なりして援護しろよ。また性格が変わったのか。まったく面倒な病気だぜ」

 

「元から期待してない」

 

 ミレイも呆れたように言った。

 

 しかし、ジョンもミレイも前回の性格変化の際の戦闘能力の上昇を見ている為、何だかんだでトルトのようすを窺っている。しかし様子から見るに、前回とは違い戦闘力の向上が見込める性格ではなさそうだと悟った。

 

 だが、元々鈍器の無いトルトは役立たず以外の何者でもないのでさほど問題は無かった。

 

 さて、あと2体のゴーレムをどうやって倒すべきか――ジョンは思考を巡らせた。ゴーレムの足を砕いた一撃から掌の痺れがある。いけそうだと言う手応えはあるが、何度も同じ手は使えないだろう。ゴーレムとて、そこまで馬鹿ではないはずだ。

 

 ゴーレムの華麗なる斜め上からのフックがジョンに迫る。ジョンはそれを右への横っ飛びで避けた。

 

「分断作戦か、伊達に歳は食ってないみたいだな」

 

 ミレイはミレイでもう一体のゴーレムのショートキックとジャブを織り混ぜた速度重視の攻撃をよけるだけで精一杯のようだった。

 

「おお、ゴーレムも頭を使いますね。大振りではなくコンパクトな攻撃に切り替えて来ましたね。しかし、あの2人頑張りますねぇ。ねぇ、ヘリミアさん」

 

「まったくそうね。婿殿」

 

 まるで縁側か何かに座りながら闘技場での戦いを見学しているかの様子に、ジョンとミレイは自然と首に青筋を立てた。

 

「ゴーレムって食べられるんですかねえ。そもそも、あれって生き物なのでしょうかね」

 

「さぁどうでしょうか。婿殿。でも、あれは鉄ですから美味しくないと思いますわ」

 

「ですよねえ。でも鉄と言う事は思ったより簡単に倒すことができるんじゃないですかね」

 

「どうやって倒すのです?」

 

「思いっきり冷やしてやればいいんですよ。鉄だからそれで脆くなります」

 

 必死でゴーレムの猛攻をいなしていたジョンは、それだ!と思った。問題はどうやって冷やすかである。ここはヘリミアの魔法に頼るしかないのだが、それを確実にさせると言う手段がなかった。

 

「ヘリミアー! 残りの魔力を使って、こいつらを思いっきり冷却してくれ。このままじゃやられちまう!」

 

「嫌ですわよ。だって、空になってしまうじゃあないですか。帰りらどうするのですか? 」

 

 ほらきた。

 

「こいつらを倒さないと帰りなんてない! てめぇらだけ帰ろうとするんじゃないぞ。そんなことしたら呪い殺してやるからな! 」

 

「まあ、呪い殺すですって。物騒ですねわえ」

 

 トルトはまるで世間話をするかの様な調子で言った。

 

「暗黒剣、死ぬ前に血が欲しくない?ピエロ居るけど」

 

「おー、ミレイそれには同意だ。ゴーレムに殺されるぐらいならあいつらを先に殺そう、という訳でトルトもヘリミアを説得してくれよ」

 

 そう言う間にもジョンは、ゴーレムの腰の入った右ストレートをかわす。周囲に砕け散った地面の破片が飛び散る中、伸びきったゴーレムの右腕にモーニングスターの鉄球を直撃させる。しかし、鉄球を振り回しながらの戦闘に疲れてきているのか、先程程の効果はなさそうだった。

 

「しょうがないなぁ。じゃあ、帰りの事はまた考えましょ。ヘリミアさん、もし宜しければゴーレムさんを冷やして下さいませ。2人が死んだらどのみち僕達も死にますし」

 

「しょうがないわね。凍結の魔法…」

 

 ヘリミアは虫を払うように手を動かし、2体のゴーレムに行き渡る様に8発程度の凍結している冷気の塊を放った。

 

 放物線を描いてゴーレムの各所に命中すると、乾いた音と共に冷気が立ち上るのが見える。ジョンは弾の命中した膝を狙い、渾身の力でモーニングスターを叩きつけた。ピキッ――

 

 ゴーレムに細い線が走った。

 

「さぁ!いけえ!ジョン。アイアンゴーレムを撃破せよ!(金タイトル)」

 

 トルトがよくわからない事を叫んでいたが、2人は気にしてはいなかった。

 

 ジョンは、最後の一撃だとでも言うかのようにゴーレムの腰に回転を加えた鉄球を振り下ろした。これはゴーレムにも耐えきれないダメージを与えられたのか、膝から縦に入った(ヒビ)と繋がるようにして割れ、崩れるように倒れた。

 

 一方、ミレイは暗黒剣の鞘での乱打に終始していた。ヘリミアの凍結弾の当たり所が良かったのか、ミレイと戦っていたゴーレムは肩と膝の関節付近がギリギリと鈍い音を出して素早い攻撃に移れない様子だった。それはミレイが常に移動しながら戦っていたのも影響していたのだろう。

 

 倒したゴーレムが動かない事を確認したジョンも参加して2対1の有利な状況で戦いを進めた。ミレイは頭付近に取り付き、鞘での攻撃を繰り返してゴーレムのヘイトをうまく集める。先程の様に、自身の頭を間違えて殴るような事は起こらなかったが、ジョンの補助とはなった。

 

 ジョンは敵の攻撃を気にしないで凍結箇所を狙える様になり、身体ごと一回転するような一撃を股関節に加えた。

 

「その位置に凍結弾を受けたのがお前の敗因だよ」

 

 その亀裂は瞬く間に広がり、ゴーレムの腰は砕け散った。


祝10話だよ。

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