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それからと言うもの王子は部屋にこもることが多くなりました
「王子の様子はどうだ」
「ここ数日自室にこもりで、たまにため息をつきながら何か考え事をしているご様子にございます」
「そうか、わかった。頭が痛いから医者に薬を持ってくるよう伝えてくれ」
「はい、失礼いたします」
兵士は報告を済ますと部屋から退出していきました
そして王と王妃が部屋に残りました
「また頭が痛いのですか?」
「ああ、これくらいどうと言うことはないさ。それよりアルのことどう思う?」
「そうですね~、人探しも終わりにしたようですし、探し人が見つかったか、そうでなければ諦めたか、まぁ引きこもっているみたいだから失敗したと見て間違いはないでしょうね」
「そうかそうか、たった一ヶ月で結婚相手を見つけるなんて無理に決まっておるからな、少しは世の中の厳しさがわかったであろうよ」
「そうですわね。国の為にも王妃に相応しい者のほうが良いですし」
次の日、王子は朝早くから一人街を散策していました
「いらっしゃいいらっしゃい、お兄さんお土産に一つ買っていかないかい?」
「綺麗だな、この辺では見ないものもある」
「旅をして色んなところの物を仕入れて回っているのさ、良かったら一つどうだい?」
綺麗な緑色の翡翠と銀の装飾を施したブレスレットをみつけると、アルは悩みます
「これを一つくれ」
「毎度あり、彼女へのプレゼントかい?」
「ああ、気に入ってくれると良いんだが」
「兄ちゃんからのプレゼントならきっと喜ぶさ、仲良くやりなよ」
「ありがとう」
ブレスレットを手に足取り軽く王子は城へと帰っていきました
王と王妃は王子を呼び出した
「父上、母上御用でしょうか」
「うむ、娘探しが難航しているようだな」
「その件は、全ての手段が八方塞になってしまい断念せざるを得ない状況になりました」
「ふむ、それでだ、来週には約束の期日となるわけだ」
「はい、存じております」
「そなたも承知の通り来週には結婚相手を決める式を執り行う予定になっておる」
「はい」
「そこで我々からの提案なのだが、来週花嫁のお披露目も兼ねたダンスパーティーを開催しようと思っておる。誰かいるのなら呼ぶもよし、パーティーでいい人を探すもよし、好きにするがよい」
「はい、またとない機会を与えてくださり感謝いたします」
そう言うと王子は部屋へと戻っていきました。
「いったか?」
「ええ、もう部屋へ戻ったみたいですわ」
「やはり娘探しは諦めたみたいであったな」
「そうですわね、あそこで躊躇なくパーティーの開催を宣言するなんて、流石はあなたね」
「そうであろう?これでパーティーに姫たちを呼べば街娘より姫たちの方がよいと気づくであろうよ」
王と王妃はそう言うと、微笑みあいました
城からのおふれが出てから、街は大騒ぎです
『五日後、城にて王子の妃を決めるためのパーティーを開催する。若い女性は挙って参加せよ。 なお、ダンスの相手を連れて参加することが条件である』
王子様の妃になるため女性たちが我先にと洋服選びに駆け回ります
「私が王子様の妃になってみせるわ!」
「いいえ、私よ!」
「負けないんだから!」
とお互いに競い合いながら買い物をしています
アルはパーティーのことを知らせるべく、急ぎルーンの家へと向かいました
「ルーン、久しぶり」
「アル、お久しぶり」
「今度城でパーティーをすることになった」
アルは少し寂しそうに続けます
「もし相手を見つけることが出来なかったら、親の決めた相手と結婚をすることになる。 こうして城を抜け出すのもできなくなるだろう・・・」
「そうですか、今日でお会いできるのは最後と言うことですね。人生には色々あります、決められた人生を生きるしか出来なくても、その中で必死にもがいた結果ならば受け入れることも出来るでしょう」
アルを諭すようにルーンが言います
「・・・そうだな・・・、私はこの数週間で沢山のことを学んできたと思う、しかし君の知識にはとても及ばない」
「私の場合は、知識を得ることで色々とやりたいことがあったから・・・」
「そこでルーンには私の妻として、私を、いやこの国を一緒に支えていってくれないか。ルーン私と結婚して欲しい」
「結婚!?私とアルが?」
「嫌か?」
「嫌じゃないわ、嫌じゃないけど、忌み嫌われた私が王子様のお嫁さんになるなんて今まで考えたことも無かったから」
急な申し出にルーンは戸惑いました
「考えて欲しい。私は君と一緒に笑いあっているときが一番幸せだ。私の妻になって欲しい」
「でも、私は嫌われ者、こんな私を妃にしたら国の評判が落ちてしまうわ。私はなれているから平気だけど、国となると話は変わってくるわ。もし反乱などが起こってしまったらどうするの?そう考えるととても決断できないわ」
アルの申し出が嬉しい反面、今までの民衆の反応を思うと決断が出来なかったのです
「大丈夫だ。もし何かあってもルーンは必ず私が守ってみせる!」
「でも・・・もし、あなたまで嫌われてしまったらどうするの?」
「その時はその時だ、私はどうにでもなる。だから君は気にすることはない」
「でも・・・」
「そんなに私のことが信用できないか?」
「ううん、そんなことない!」
「じゃあ決まりだ、約束する君は私が守るよ」
「わかったわ、じゃああなたに何かあったら私が守るわね」
「期待しているよ」
それからアルとルーンは時間が許すまで語り合いました
「じゃあ、城で待っているから」
「ええ、必ず行くわ」
「そうだ!これを渡すのを忘れていたよ」
アルは街で見つけたブレスレットをルーンに渡します
「まぁなんて綺麗なのかしら」
「君に似合うと思って、良かったら受け取ってくれ」
ルーンは嬉しそうに胸に抱き喜びました
「ありがとう、大切にするわ」
パーティーの夜がやってきました
「王子お誘いいただきまして光栄にございます」
「ああ、楽しんでいってくれ」
やってきた者から王や王妃、そして主役の王子へと挨拶をしにきます
「王子様カッコいいわ~」
「本当にステキね~」
「私を選んでくれないかしら」
「王子が選ぶのは私よ」
「いいえ、私よ」
城内は人でいっぱいになっていきます
「あ、王子がこっちにきたわ」
「王子こっち向いて~」
「王子~」
音楽が鳴り始め、パーティーが盛り上がっていきました
「・・・彼女はまだきていないのか・・・」
アルがキョロキョロと周りを見回していると、遅れてルーンが会場に現れ会場がざわめき始めました
「魔女よ、何でこんなところに・・・」
「何を考えているのかしら」
口々に心無い言葉が飛び交います
「場違いなのがわからないのかしら」
「何処か行ってくれないかしら、これじゃ楽しめないわ」
「衛兵は何をしているのかしら、王子が呪われたらどうするつもりよ」
「まさか、王家を呪うためにきたのかしら」
その場を収めたのはアルでした
「静まれ!彼女は私が招待したのだ、無礼は許さぬ」
静まり返った人々の間を抜けルーンがアルの前までやってきました
「アルフレッド王子、お招きいただきありがとうございます」
「ルーンよくぞきてくれた」
「お約束ですから」
「そうか、嬉しいよ。」
挨拶を済ませ、王子が宣言をします
「皆のもの、彼女は私の友人だ仲良くしてやってくれ」
それを快く思わないものもいたが、パーティー会場に音が戻りました
「ルーン、せっかくだし私と踊らないか?」
「こういう場所初めてだから、少し見て回っても良いかしら?こんなにドキドキするのは久しぶりだわ」
「お・・おい、ルーン」
アルが止めるまもなくルーンは人の間を縫うように進んでいきます
ドンッと言う音と共に辺りがざわつき始めました
「あら、ごめんなさいね、気がつかなかったわ」
「用もないのにフラフラしているからだよ」
それは気づかない振りをしてルーンを押し倒したのでした。その様子をみていた周囲も、クスクスと笑い出すしまつ。そこに様子をみていたアルが慌ててやってきました