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王子と兵士は、街道を逸れ獣道を行き、うっそうと茂る草木をわけ進みます


「もっと良い道はないのか?」

「村人の情報ではこの道が近いと・・・・」

「街に来るくらいだから、ちゃんとした道がありそうなものだが」

「街の者は怖がって寄り付かないようで、この道も偶然見かけたとのことです」


などと言いながらもしばらく進むと、魔女の住む家を見つけることが出来ました


兵士はコンコンと扉を叩き中の様子を伺い声をかけました


「家のものはおられるか」


すると勝手に扉が開き、家の奥から声が聞こえてきました


「客人とは珍しい、何用でしょう?」


王子と兵士は息を呑みながら家の中へと足を進め、兵士は恐怖で引きつりながらも言葉を搾り出します


「ひ・・人探しを・・・頼みたい」


震えた兵士の声に王子は呆れたと言わんばかりにため息をつきながら付け加えたました


「私が道に迷ったとき助けてくれた娘に礼が言いたい、その娘を探してもらいたいのだ」


すると、奥のほうからマントを羽織フードを被った魔女が現れました


「なるほど、まぁそこへお座りなさい」


兵士はさっきまでの恐怖を忘れ、声を荒げます


「な・・なんと無礼な物言い!この方は我が国の王子であるぞ!」

「ふん、王子だろうが関係ない。嫌なら帰りなさい」


そんな兵士を魔女は冷たくあしらいます


「なっなにを~!」


更にヒートアップしそうな兵士を王子が止めに入りました


「よい、ここは魔女殿に従おう」

「しかし!」

「我々が魔女殿に頼みごとをしているのだ、かまわん」

「っ・・・わかりました・・・」


王子は席につき話し始めました


「数日前のことだ、隣町から城へ帰る途中盗賊に襲われ道に迷ったのだ、その時とある池に行き着いた。そこに居合わせた娘が道を教えてくれて城へ帰ることが出来たのだ」

「あそこは盗賊がよく出るから迷う人間が多いからねぇ」

「おお、魔女殿もご存知か!あの盗賊何とかしたいものだ・・・」


そう言うと王子は考え出しました


「魔女殿、盗賊のアジトの場所とかわかるだろうか?」


魔女は黙って水晶玉に手をかざした、すると水晶玉が静かに光を放ちだし


「ここから東の町、北の山の山頂にアジトがある、昼頃から動くから朝方に行けば何とか出来るかもしれないね」

「そうか!明日にでも兵を向かわせることにしよう」


意気揚々と立ち上がりその場を後にしようとしたときです


「王子、娘の捜索を・・・」

「おお、そうであった!」


王子は娘探しを思い出し席に座りなおしました


「魔女殿、今の感じで娘を探してくれないか」


魔女は再び水晶玉に手をかざしたが、さっきとは様子が違います


「おや?」

「どうされた」

「水晶が映し出さない・・・まるで霧がかかったように何も見えない・・・」


魔女は何度か試してみるも結果は同じだった


「何とかならないのか?」

「こんなこと初めてでどうしたものか・・・」


すると兵士が叫びます


「王子が頼んでいるのだ!何とかせよ!」


しかし魔女も負けてはいません


「無理なものは無理」

「貴様!誰に向かって口を聞いていると思っているのだ!」

「誰だろうと関係ないわ、無理なものを無理と言って何が悪い」

「なっなに~~~」


口論を止めたのは王子でした


「やめろ!」

「しかし王子!」

「黙れと言っているのだ!」

「は・・はい・・・」


王子の一喝で再び静けさを取り戻し、王子が続けます


「騒がせてすまない、しかし、この者たちが探しても見つからず、魔女殿が最後の頼みの綱なのだ、カッとなったことは私が謝る、わかってやってほしい」


王子はそういって頭を下げました


「王子!王子が頭を下げりなどなりません!」

「こちらが頼みごとをしているのに失礼な態度を取ったのだ頭を下げて当然だ」

「し、しかし・・・」

「良いから黙っておれ、本当に申し訳なかった」

「別にかまいません、ただ結果はかわらない、見つからないものは見つからない、それだけです」


王子はそれを聞くと深くため息をついてしまいました


「そうか・・・、他に探す方法はないものだろうか」


魔女は少し考えます


「探せばあるだろうけど、こんなケースは始めてだしそんな直ぐには・・・」


それを聞いた王子は嬉しそうに言いました


「そうか!わかった、また来させてもらうよ。そうそうここへ来るための道なのだが、道なき道を来るのはちと大変でな、他に道はないのか?」

「東の獣道をきたのですね、細い道ですが西のほうに道があるので、そっちでおかえりになるといいでしょう」

「なるほど、魔女殿には助けてもらってばかりだな、助かるよ」


そう言って王子は城へ帰っていきました


それから王子は毎日のように魔女の家を訪ねました


「これもダメですね」

「そうか・・・」

「また別のも探してみますよ」

「ああ、頼むよ」


占い道具の片づけをしている魔女を見つめながら、王子は疑問を投げかけた


「なぁ魔女殿、本当に顔を見た物を呪ったりするのか?」


魔女は笑いながら答えました


「そんな事するわけないじゃないですか」

「でも、噂が流れていたりするぞ?」


魔女は王子のほうへ向き直ります


「噂では呪ったり石にしたり殺したりしているみたいですが、そんなことしたらここにいられなくなるじゃないですか」

「それもそうか」


そう言って二人で笑いあいました


数日経っても結果は同じでした


「これもダメみたいです・・・」

「そうか・・・」

「また別の方法を探してみます」

「ああ、助かるよ」


そう言うとため息をついた、重い空気を換えようと魔女は片づけをしながら話しかけました


「こんな嫌われ者の魔女のところに通うくらいだもの、相当いい女だったのね」

「う~ん、彼女はとても美しくて神秘的な人だったよ」


王子は嬉しそうにそう答えました


「もしかしたら、彼女は女神様だったのかもしれないな。彼女と会わなかったら君とも会えなかったかもしれないし」


嬉しそうな王子をみて、魔女も嬉しそうに微笑みます


「本当にそうなら素敵なね」


少し間をおいてから王子が質問します


「なぁ、魔女殿は自分のことを見たりできないのか?」

「急にどうしたの?」

「いや、自分のことが見えたら便利だな~って思ってさ」


魔女は少し考え込み答えます


「自分のことは見ることが出来ないのよ」

「そうなのか?」

「ええ、自分の未来をみたり変えたりしたら運命に背いてしまうし、自然の理から外れてしまうことだってある、だから自分の未来を見ることは神に禁じられたと言われているの」

「ふ~ん、魔法って便利なことばかりじゃないんだな」

「こればかりは仕方ないわ」

「おっとそろそろ帰るよ、また明日」

「ええ、また明日」


魔女も王子も毎日娘の捜索の後はたわいのない話をしました


「これもダメだわ・・・」


魔女はため息をつきながら片づけを始めます


「そういえば魔女殿の名前は何て言うんだ?」

「急にどうしたの?」

「いや、ずっと魔女殿だと呼び難いし、聞いてなかったからな」


魔女は確かに、と笑い悪戯っぽく言いました


「人に名前を尋ねるときは、まず自分が名乗るものでしょう?」

「確かに!私はアルフレッド、アルと呼んでくれ、で魔女殿の名前は?」

「ルーン」

「ルーンか、綺麗な名前だ」


ルーンは恥ずかしがりながら慌てて言いました


「こっこんな魔女の名前を綺麗だなんて、物好きね」

「綺麗だと思ったから綺麗と言ったのさ、照れているのか?」

「なっ・・照れていないわ!バカらしい・・・」


王子は笑いながら答えます


「そういう事にしとくよ」

「もう、いじわるなんだから」


王子は街での噂を思い出した


「なぁルーン、君はどうして街のみんなに嫌われているんだ?呪われるとかって噂もあるくらいだ」

「人間は異色の存在を許さないものだから仕方ないわ、私も好んで話をするわけでもないしね」


寂しそうに答える魔女をみて、王子は急に彼女が心配になってきました


「それで平気なのか?」

「もう・・慣れたわ・・・」


アルはどう言葉をかけたらいいかわからず沈黙してしまいました


「ずっとフードを被っているけど、どうして顔を出さないんだ?」

「あまり人と接したことがなくて、顔を見て話しをするのが苦手なの」

「私でもダメか?顔見てみたいのだが・・・」

「それは・・・アルとは話をしているだけで楽しいから、それだけじゃダメかな?」

「まぁ嫌がるのを無理やりみるつもりはないよ」

「ごめんなさい、ありがとう」


こうしてまた数日が過ぎた日のことです


「アル、これが最後の方法だったのだけど、あなたの想い人を探すことは出来なかったわ・・・」

「・・・そうか・・・ルーン、今までありがとう」

「ごめんなさい、力に慣れなくて」

「そんなことないさ、ルーンは十分力になってくれた、君がいてくれなかったらもっと早くに諦めていたかもしれない、本当にありがとう」

「こちらこそありがとう、アルが訪ねてくれて嬉しかった」

「また来てもいいかな?」

「ええ、何か困ったことがあったらいつでも相談に乗るわ」


この日を最後に王子の妃探しは終わりを告げることになりました

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