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これは、遠い遠い昔、とある国の王子様が自分の運命を切り開くお話しです


王子の名前はアルフレッド、小さい頃から王になるための勉強に明け暮れていました

午前中は剣の稽古、午後からは学問や政治の勉強、来客があったとしても王への謁見や将来の花嫁候補との会談ばかり、姫たちと話しをしてみるも気位が高く高慢でとても気の合いそうな人はいませんでした


そんなある日のこと


「アルフレッド、今回は東の国の姫を呼んでいる。美人で気立てのいい姫だ、きっとお前も気に入るぞ」


王が楽しそうに語るのを見て王子はため息をついて言いました


「父上、何度も申し上げましたが、私は自分の愛した人と結婚したいのです」


度重なる見合い話に王子は嫌気が指していました


「何をもうしておる、私や母上もこうして出会ったが、ちゃんと愛し合っておるぞ?」

「しかし、初めて会う姫を愛する自身がありません」

「気持ちはわかるが、お前は王子だ。見合った相手との結婚が一番よいのだ」


王の言葉の意味は理解していました、隣国の姫と結婚すれば隣の国と協定関係になり国の安泰に繋がるからなのです、つまりは政略結婚。自分の意思と自分の立場を考えるとうまく言葉が出てきません


「これもお前のためだ」


王子は、なんとかチャンスを得るために言葉を搾り出しました


「・・・・父上、私に時間をいただけないでしょうか・・・・」

「時間を?なぜだ」

「私は自分の結婚相手は自分で決めたい、その為に城を空ける時間を頂きたいのです」


急な申し出にカッとなり、王は声を上げました


「な・・・お前は王子なのだぞ!そこらの人間とは違うのだ!お前は選ばれた人間なのだ、それ相応の相手でなくては示しがつかん」

「しかし父上!」

「ダメだ、ダメだ!」


王は王子の言葉を聞こうともせずまくしたてていると、隣から穏やかな声が飛んできました


「あなた、まぁ良いではないですか」


王と王子の様子を隣で見ていた王妃が口を挟んだのです


「あなたも若い頃は親にはむかって自分の意見を通したいと思うこともあったでしょう?」

「それは、そうなのだが・・・それとこれとは・・・」


王妃の微笑みながらも強い口調に王はたじろいでしまいました


「ここは温かく見守りましょう、それがアルフレッドの為にもなりますわ」

「し・・しかし・・・」


何かいいたげな王を横目に王妃は続けます


「アルフレッド、一ヶ月の猶予を与えます。しかし、一ヶ月でお前が相手を見つけることが出来なければ、私たちの選んだ相手と結婚をしていただきます。よろしいですか?」

「はい!」

「では、一ヶ月後に結婚式を模様しますので、そのつもりでいなさい」

「ありがとうございます、母上」


王子は嬉しそうに一礼をし、部屋を後にした こうして王子は身分を隠し、街々を回り結婚相手を探すことになりました


数日が経ったある日のこと、馬を走らせ少し遠くの街までいっていた王子は暗がりを歩いていた時です


「ふぅ、帰りが遅くなってしまったな・・・、一ヶ月か・・・長いようで短いな・・・・」


思いにふけっていると、突然大きな声が飛んできました


「おうおう、いい馬に乗っているじゃないか」

「こいつ、高く売れそうな服着ているぜ」

「今日はいい稼ぎになりそうだ!身ぐるみ全部剝いでやるぜ」


現れたのは、この辺を縄張りとしている盗賊たちです


「こんなところで出会うとは・・・」


王子は逃げる為の隙を窺いながら後ずさります


「野郎ども逃がすなよ!行け!」

「おお!」


山賊たちは剣を片手に王子へ襲い掛かってきました


「くっ・・・捕まるわけにはいかない・・・」


急いで獣道へ入り木々の間を抜け走り王子は盗賊たちを引き離し岩陰に身を潜めました


「ちくしょう、やろう何処に行きやがった!」


後ろを走っていた盗賊の会話を聞きながら静かにその場離れ、ようやく一息ついた頃には自分の居場所すらわからなくなっていました


「なんとかを撒いたが、・・・、ここはいったいどこなんだ・・・」


ふと見ると、木々の間から光が見えました


「あれは・・・池?・・・、少し休むか」


馬を休ませるため池へ向かっていると人の足音が聞こえ急いで草陰に隠れ耳を澄まします


「また山賊か?・・・」


身を潜め足音の正体をうかがっていると、池のほとりに娘が姿を現したのです


「女?・・・美しい・・・」


王子が娘の美しさに目を奪われていると、娘が池のそばに座り呪文のような歌を歌い始め、すると池に映った月が揺れだし、目をこらしてみると妖精たちが歌に合わせ踊っています、ダンスに合わせ水しぶきが上がり月の光を反射して辺りが光に包まれた。それは美しい光景で、あまりのことに王子は言葉を忘れ、その場でよろけて小枝を踏んでしまいました


パキッ


妖精たちがその音に気づき姿を消し、娘がそれに気づき立ち上がり立ち去ろうとしたのを見て王子は急いで声をかけました


「待ってくれ!邪魔をしてすまない、盗賊から逃げていたら道に迷ってしまったのだ、良かったら街への道を教えてはくれないだろうか」


すると娘は黙ってある方向を指差し、王子は娘の指したほうを確認しました


「あっちか、助かった」


礼を言おうと再び娘のほうを見ると、そこにはもう娘の姿はありませんでした


「美しい娘だったな・・・」


馬に水を飲ませてから娘に教えてもらった方向へ進むと、王子は街へとたどり着くことが出来ました


「また会えるだろうか・・・」


次の日、王子は兵士にいいました


「昨日盗賊に追われ、迷ったときにある娘に助けてもらった。その娘に礼を言いたい、探し出し城へ招待してくれ」


「承知いたしました」


兵士たちは娘を探すため、城下町から隣町まで走り回りました


「どうだ、見つかったか?」

「いえ、娘の情報は未だつかめておりません」

「そうか、引き続き捜索を続け娘を探し出せ」

「ははっ」


数日経っても娘の手がかりは一向につかめませんでした


「街を隅々まで探していると言うのに、一向に手がかりすら掴めぬとは・・・」


王子も兵士たちもどうしたら良いものかと困り果てていた、その頃一人の兵士が目に留まったのはマントを羽織、フードを目深に被った周りとは異色の存在でした


「ねぇ魔女よ」

「なんでも、顔を見た人は呪われるって噂よ」

「えー、そうなの?」

「誤って顔を見てしまった人が呪われて死んでしまったとか」

「いやー、怖いわ」

「あなたも気をつけてね」

「ええ、かかわらないようにしましょう」


その姿を見るなり口々に噂話が飛び交います


「また魔女が来ているわ」

「呪う相手でも探しているのかしら」

「怖いわねぇ」

「まったくだわ」

「呪われる前に向こうへ行きましょうよ」

「そうね、呪われるなんて恐ろしいものね」


さっきまで楽しそうに話しをしていた人も


「おい、魔女だぜ」

「魔女って言ったら、あの噂本当かな?」

「あれだろ、あまりにも恐ろしい顔をしていて顔を見た人間は呪われるってやつ」

「それそれ、本当かな?お前確かめてみろよ」

「嫌だよ、俺はまだ死にたくないぜ。言い出しっぺのお前がやれよ」

「えー、俺も嫌だよ。まだ遣り残したことあるもん」

「なら言うなよ、あっち行こうぜ。あいつ気持ち悪いしさ」


そう言っては、そそくさとその場を後にするのを目の当たりにした兵士は、近くにいた女性に声をかけました


「あの者は誰だ?」

「あれは魔女ですわ、数日もしくは数週間に一度街へ下りてきては何かしているようですが、みんな気味悪がって近づこうともしませんわ」

「魔女か・・・、魔女なら人探しなど簡単に出来るかもしれんな」

「確かに魔女なら出来るかもしれませんが危険ですわ。魔女の顔を見たものは呪われるとの噂もございます、お勧めはできません」

「の・・呪いか・・・」

「はい、死んだものもいるとか・・・お気をつけください」

「わかった、情報感謝する」


噂を聞き背中に冷たいものを感じながらも、他に当てもないので城へ戻り王子にこのことを報告しました


「娘の情報は未だつかめておりません。しかしながら、城下町に出没する魔女に人探しを頼んでみようと思っております」

「魔女?」


今まで近場に魔女がいるなんて聞いたことがないため王子は驚きました


「はい、数日か数週間に一度街へ現れるようで、少々悪い噂のある者ですが、魔女なら娘を探すことも出来るかと思い依頼をしてこようと思っております」


王子は少しの間考え込みました


「そうか、それなら私も行こう」


突然のことに兵士は慌てて言葉を返します


「王子!お言葉を返すようですが、呪われると噂のある相手にございます。王子の身に何かがあってからでは取り返しがつきません、私一人で行き依頼してまいります」


しかし王子は危険より興味の方が勝っていたため、食い下がりません


「いや、私も共に行き魔女殿に事情を説明する。その方が魔女殿も探しやすいかもしれない」

「ですが!」

「それに、そなただけ危険なところへ行かせるわけにはいかない」


兵士は、もう何を言っても無駄だと判断しため息を漏らした


「・・・・・わかりました、その代わり危険と判断したときには、私が盾になりますのでお逃げください」

「ああ、その時は頼りにしているよ」


こうして王子は兵士と共に魔女の住むと言う森へと向かうのでした

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