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箱中鳥

作者: ぬぬ

「なんでそう強がるかなー」




試合後あまりの激痛に動けなくなった秋を見て無意識にため息が出る。




拗ねたのかこっちを頑なに見ない綺麗な顔は

トレードマークのアヒル口が一直線になってただひたすら

スコアボードを睨んでいる。






「トーナメントじゃないんだから今日無理して身体壊すより、

次の大会までに身体治す方を優先したほうがいいのはわかるだろ?」






あくまで冷静に努めつつも、

正直、秋の性格はこんなことじゃどうにもならないのはわかっているし、

諦めてる自分もいる。




誰よりも頭がいい秋はそういうリスク計算をした上で、

おそらくいいところをみせようとした。



いける、と勘違いしたんだろう。

アドレナリンなのかなんなのかなにがそうさせるのかわからないが、

秋は自分の限界を過信することがある。






だって、と重い口をやっと開いた秋。




「あと1分なかったし」




いけると思った。

少し掠れた女子にしてはハスキーな声。



汗がすっかり引いている秋はまだ真冬には少し寒そうなノースリーブのユニフォームを着ていて

見かねた俺は自分のセーターを肩にかけてやる。







惜しい敗戦。


残り20秒、1点差で負けてる場面で、ターンオーバーからの速攻、

という場面で秋は味方からのパスを貰い、

そのまま地面に崩れ落ちた。


少し遅れて追いかけてきた相手のディフェンスが崩れ落ちた秋から

ボールを無慈悲にも奪い、そのままレイアップを決められた。




秋は最後まで立っていた。

ただ結果として残ったのは格下の相手に敗戦という事実だった。







腰が弱い秋は、入念なストレッチや週2回の整体などできる限りのことをしても、

プレイに支障を来すほどの激痛に襲われることがある。






秋の学年が主体となってチームを引っ張ってく中で、

一番大きな大会がもうすぐ、始まる。



今日はその直前ということで急遽定められた練習試合だった。



勝つ必要は大してなかった。


爆弾を抱えたエースが無理して走り回る必要も。





それなのに秋は頑なにコートに立ち続けた。


ヘッドコーチに「大丈夫か?」と聞かれても静かに顎を引くだけで、

腰について一言も言及しなかった。





そこまでして秋が今日の試合で出たかった、

勝ちたかった理由はきっと。







「いいとこ見せたかった?」








またすっかり黙って人形に戻ってしまった秋にそう問いかけると、

無表情だった顔に少しだけ表情が宿った。







「大好きな人の誕生日だもんなー」







畳み掛けるように聞いてみるとみるみる眉間に皺がよっていく。







「っるさい。」






強がりで、校内でクールだの掴み所のないだの言われ、

先生にも少し扱いずらいとされている秋。



クールでもなんでもなく心には様々な感情が渦巻いているのを俺は知っている。

感情表現が苦手なだけなのも。


人一倍不安を感じやすい性格もそれを表に出せない頑固さも。






「お誕生日おめでとうくらい言えよ。秋ちゃん。」






浮世離れしていると言われる彼女の人間臭さも。







「…長生きしろよ、おじーちゃん。」














シリーズしたいです。


年上の魅力が一切かけてない(僕の中で)


こんな甘々なキャラにしたいわけではなく、

根は冷たいというか気にしてない風なのが前提なんです。


難しい。



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