表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第1章 始まり
4/147

第3話  計画的犯行

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


      「アマデウスの謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2012年12月。

リナの携帯に、妹を誘拐したという電話が届く。


その電話が、自宅のマンションからかけられている事を知ったリナ。急いで部屋に戻るが・・・


部屋の中は何者かに荒らされていた。

慎吾はリナの部屋で、何者かの気配を感じるのだが・・・?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


     第3話  計画的犯行  


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

マンションの玄関を出たその時。


リナ「ちょっと待って」


後ろからついてくる慎吾を制したリナは、玄関横の非常口から再びマンションの中に入る。


慎吾「え? なんでまた中に?」


リナの背中を追いかけ、慎吾も非常口から中へ入り直す。


リナ「ここから入れば防犯カメラに映らないのよ」


そう言うとリナはエレベーターとは反対側にある管理人室へと歩いて行った。黙ってついてくる慎吾にリナが声をかける。


リナ「今から管理人室に入る。

    ロビーとエレベーター内部の防犯映像見てくるためにね。


    管理人は5時以降いないはずだけど、念のため誰かこないか見張ってて」


驚いた声をあげる慎吾。


慎吾「え!? ちょっと・・ だって、管理人室ってカギ閉まってますよ?」


リナは背負っていたリュックのポケットからカードキーを取り出すと、管理人室の手前にあるカードリーダーにそれを通した。


カチャッ


1秒ほどの間をおき、管理人室のドアが静かに開いた。


慎吾「え!? な、なんで・・・?」


驚いた声を出す慎吾を無視したリナは、背後を気にしながら静かに中に入る。その際に小さな声を慎吾にかけた。


リナ「スキミング」


そういうとリナは内側からドアを閉める。オートロックが「カチャリ」という音をたて、ロックした事を知らせる。


慎吾「す・・・ すきみんぐ?」



・・・ ・・・。



5分ほどすると、リナが静かに管理人室から出てきた。


リナ「ダメ・・・。どのカメラにも侵入者らしき人物は映ってなかった」


小さなため息をつきながら、ドアを閉める。


リナ「防犯カメラのない非常階段から侵入したか・・・

    あるいは窓から侵入したかね。


    いずれにしても、場当たり的な侵入じゃない。計画的だわ」


2人は再びマンションの外へと出ていった。


慎吾「あの・・・ スキミングって何ですか?」


後ろからついてくる慎吾がリナに声をかける。


リナ「後でね。さ、まずは駅に行くわよ」


リナは周りに気を配りながらも、スタスタと早足で駅に向かった。


時折慎吾が声をかけるが、リナは誘拐犯と同一人物であろう自分の部屋への侵入者の事で頭がいっぱいだ。


部屋の窓の鍵が完全に閉まっていたを考えると、外からの侵入は考えにくい。だとすると直接玄関から入ってきた事になる。


慎吾とリナが住むマンションは、全ての玄関はカードキーで開ける。


月1回、防犯のためカードキーのDATAは更新する決まりになっていて、古いカードキーで玄関を開ける事は出来ない。


カードキーを更新したのはつい3日前。


(リナ「なのに侵入された・・・。考えられる可能性は2つか・・・」 )


2人は小田急特急はこね48号に乗り込み、リナの実家があるひばりヶ丘へと向かった。


車内で慎吾は今一度リナに尋ねる。


慎吾「リナ先輩。今回の事件は僕の力も必要になってくると思います。

    だから僕にも情報を下さい」


リナは自分の髪の毛を指でいじりながらあれこれ悩んでいる表情を見せていたが、慎吾に視線を合わせると口を開いた。


リナ「うん。ラーメン食べてる時に妹から電話がかかってきて・・・。

    出たら、全く知らない声で妹を誘拐したと言われた。


    そして1週間以内に1億を用意しろって・・・」


慎吾「1億!? 身代金目的とはいえ、あまりにも法外な金額ですね・・・。

    犯人の声の特徴とかは?」


リナ「何かの機械を通しての電子音声だった。性別も分からないわ。

    急いで妹の携帯GPSを追跡したら、私の部屋だった・・・」


慎吾「犯人はリナ先輩の部屋から、電話をかけてきたって事ですね」


リナ「えぇ。誘拐した妹の携帯を使ってね」


慎吾は左手の指先を頭にあて悩んむそぶりをした。


慎吾「う~ん・・・。不可解な行動ですね・・・。

    犯人の意図が全くわからない」


リナ「犯人は、おそらく玄関から私の部屋に入っている。

    私はカードキーを1枚しか持たないし、肌身離さず持っているから・・・」


リナは慎吾にVサインを見せた。


リナ「考えられるのは2つ。1つは管理人さんが犯人だって事」


慎吾「えぇ? 確かに住人の部屋のスペアキーは保管してあるでしょうけど・・・

    可能性はだいぶ低い気がします」


リナ「えぇ。だとしたらもう1つ。犯人は私のカードキーのDATAを盗んだ。

    いわゆるスキミングってヤツね」


慎吾「えっと・・・ カードキーのDATAって盗めるんですか?」


リナ「当たり前よ! クレジットカードやキャッシュカードだって盗める!

    道具さえあれば一発で同じもの作れるんだから!」


慎吾「でも、どうやってリナ先輩のカードキーをスキミングしたんですか?」


リナ「うん。ずっとそれ考えていたんだけど・・・。 

    私のは絶対スキミングされたとは思えないから・・・。


    スペアキーしか考えられない。管理人室にあるヤツね」


慎吾「じゃぁ、その電話の声のぬしは管理人室に忍び込んだ?」


リナ「えぇ。業者か何かを装って管理人室に入ったか・・・

    あるいは私みたいに・・・ あ、いや・・・」


リナは言葉をにごした。


リナ「とにかく頭のキレる人物ってのは間違いないわね」


今ある情報で、少しずつ犯人像をイメージしていく。

小田原駅で新幹線こだま630号に乗り換えた2人は、品川へと向かった。


慎吾「あの・・・ 妹さんの情報が欲しいんですが」


リナは慎吾の顔を見つめる。


身内の話を他人にした事が無いリナは、妹の話をするのに抵抗があった。


リナ「・・・ ・・・」


しかし今は少しでも犯人につながる情報が欲しい。初めて家族の話を、慎吾にし始めた。


リナ「雛子ひなこ って名前で、まだ高校1年生・・・」


慎吾「差し支えなければ、どの高校かを教えてください。

    今日は平日だし、学校から家の間で誘拐されたという可能性も強いですし」


リナ「・・・・・・」


しばらく黙っていたリナだが、妹の身を案じて口を開く。


リナ「学習院女子高・・・」


慎吾は驚いた。


慎吾「え!? が、学習院!? あの超お嬢様学校!?」


リナは慎吾を睨み付ける。


リナ「だから言いたくなかったのよね・・・」

    

慎吾「皇族関係者はほとんど学習院ですよ・・・。 

    え? え? リナ先輩って皇族系列の人!?」


リナ「まさか・・・。親がね・・、金持ってんのよ・・・」


非常に言いづらそうに言うリナ。


慎吾「えぇ? だってリナ先輩、大学の学費は自分で稼いでるって・・・」


リナ「それは本当。親の金は1円も使ってない。学費も家賃もね。

    お金ってのは自分のウデで稼いでこそのお金よ!」


リナは半年前にも同じセリフを慎吾に言った事があった。


慎吾「あ、じゃぁ・・・」


慎吾がさらに質問を投げかけようとしたところで、リナはそれを制する。


リナ「私の家に着いたら、またその話をするから・・・」


品川駅で山の手線に乗り換え池袋へ。

さらに西武池袋線に乗り換え、目的地のひばりヶ丘へと向かった。



駅を出たリナはすぐにタクシーを拾い目的地を告げる。


慎吾「しかしリナ先輩がお金持ちの娘だったなんて・・・」


後部座席に座った慎吾は、隣に座るリナをまじまじと見つめる。


リナ「わかってるわよ。お嬢様らしくないってんでしょ?

    ま、私も柄じゃないんだけどさ」


慎吾「そんな事ないですよ。

    リナ先輩、美人だしお嬢様って言われれば絶対信じます!」


リナは一瞬慎吾と目を合わせた。相変わらず嘘のつけない瞳を見せる慎吾。


リナ「ふん・・・」


慎吾から視線をそらし窓の外の景色を見る。少しばかり照れた表情を悟られないように。



・・・ ・・・。



タクシーに乗って10分が過ぎた頃・・・。


3mもの高い塀が数10mも続く光景が目に入った。

しばらくそれをぼーっと見つめていた慎吾だったが「はっ」とした表情を浮かべる。


慎吾「まさか・・・ ひょっとして、このつらつらと長い塀って・・・」


慎吾がリナの顔をのぞいた。


リナ「そ・・・。私の実家」


リナは前を向きながら無表情で応える。


真上から見ると100m四方はあるのではないかと思われる広大な敷地。

そこは高い塀で囲まれていて、道路からは中に何があるのかを知ることは出来ない。



リナはとある場所でタクシーを止めた。

タクシーから降りた2人の目の前には立派な門がある。


街頭が明るく、銀色の頑丈そうな門が確認出来た。

そして表札には「羽鳥」と書かれてある。


羽鳥はどりリナ。 


よくリナのレポートを代筆していた慎吾は、特に気にもとめなかった「羽鳥」という名字。


慎吾「待てよ・・・ 羽鳥でお金持ちって・・・」


「羽鳥」という名字に「お金持ち」という情報が加わった事で、慎吾は何かを思い出した。

 

慎吾「あのネットセキュリティシステムを開発した、羽鳥コーポレーション!?」


リナ「 そ 」


表情を変えることなく、リナは静かに門の横にある赤いボタンを押した。




             (第4話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


「Wing-Bird-Corporation」。

通称「WBC」は、世界一と言われるネットセキュリティソフトを開発したソフトウェア会社である。


リナはWBC社長の娘だった。


妹の誘拐に関しては警察に任せるべきという母親と、警察に知らせたら妹が危険になると主張するリナ。そんな中、箱根から持ち帰った妹の携帯が突然鳴り響く。


次回 「 第4話 羽鳥家の面々 」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ