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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第2章 リナの過去
22/147

第21話  絶体絶命(2008年)

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2012年、女子大生リナの妹が誘拐された。


霊能力を持つ1つ下の後輩・慎吾を連れて実家へと戻るリナ。誘拐犯から1週間以内に1億円を用意しろと要求され、羽鳥邸にいた面々は不安になる。


話は・・・ 4年前の2008年。

リナの新しいピアノ講師、そして彼氏となるヒロ・ハーグリーブス。


リナの父親・魁斗かいとが開発したセキュリティソフトを狙ったテロリストがいる。


リナは学校で、正体不明の覆面男達の襲撃を受ける。ヒロが現れ、リナと共に理科室に隠れた。しかし・・


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  第21話  絶体絶命(2008年)


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2008年12月5日(金)、午後9時35分。学習院女子高、駐車場。


安田「いえ・・・。ちょうど今、学校に着いたばかりですので。

    はい、えぇ。リナお嬢様を今から迎えにあがるところです」


携帯で会話しながら、閃光せんこうの放たれた教室を今一度見る。


安田「はい。わかりました。えぇ・・・」


携帯を切った安田は、今一度リナの携帯に電話をかけた。


安田「・・・ ・・・」


やはり呼び出し音すら鳴らない。


小さな溜息をついた安田は、駐車場の片隅に止めてあるヒロの車へと向かった。



・・・ ・・・。


5分前。


覆面男の1人が、手に小さなモニターを持ちながら理科室に入ってきた。教室のいたる所にモニターをかざして、何かを探すそぶりを見せる。


男「・・・」


教室の片隅にあるロッカーに向け、モニターをかざすと・・・男は小さく笑った。


男「いたぞ。中央の教室だ。2人ともいる」


小型通信機で仲間の男を呼ぶ。ロッカーにいたヒロは、その小さな声を聞き逃さなかった。


(ヒロ「・・・ロッカーの中にいるのが・・・わかってる?」)


数秒後、理科室に入ってきたもう1人の覆面男。手には麻酔銃を持っている。


2人の覆面男は、身振り手振りで意思疎通をした。モニターを持った男は、深くうなずくと、視線をロッカーに向ける。そして・・・


男「お前らがいるのはわかっている。両手を挙げ、静かに出てこい」


ロッカーの中にいる2人に、ドスのきいた声をかけた。


ヒロ「・・・ ・・・」


男達は教室内の廊下に近い方にいる・・・ヒロは男達の足音からその事を察知していた。


(ヒロ「まだ射程圏内に入っていない・・・」)


このままスタンガンのスイッチを入れても、雷は空振りにおわるだけだ。


リナは泣きそうになりながらも声を押し殺し、ヒロを強く抱きしめた。


(ヒロ「くそ・・・ もう少し近づいてくれなければ・・・」)


沈黙を保つヒロとリナに対し、再び覆面男は声をかける。


男「今から10秒数える。出てこなければ攻撃を仕掛ける」


ヒロ「・・・」


狙いはリナ。リナを危険な目に合わせず、 この窮地をどう乗り切るか・・・。


男「 10 9 8 」


しかし相手は、こちらに時間を与えてくれない。ヒロはリナにある物を手渡した。


男「 7 6 5 」


ヒロ「いいかリナ。

    もし俺以外の男が君の前に現れたら、迷わずそれを・・・」


男「 4 3 2 」


カウントダウン終了直前、ロッカーの扉が勢いよく開き、ヒロが大声を出した。


ヒロ「わかった! わかったよ! こちらの負けだ!!」


そう言うとヒロは両手を広げてゆっくりと出てくる。


ヒロ「・・・ ・・・」


覆面男が2人いるのを確認した。1人は麻酔銃、1人は小型モニターを持っている。


(ヒロ「サーモグラフィー!? 」)


電波妨害装置、位置を知らせる機能も付いた通信機、そしてサーモグラフィー装置。予想以上にハイテク装備している敵に、ヒロは驚きを隠せない。


それでも冷静に状況を確認した。


(ヒロ「駐車場で会った時、覆面連中は3人いた・・・」)


1人は5階の家庭科室でヒロが倒し、麻酔により気を失っている。


(ヒロ「って事は、この2人さえ倒せば・・・」)


モニターを持っていた覆面男はそれを置き、もう1人の男に指示を出す。


男「お前は女の確保だ。俺はこいつを・・・」


そう言うと男はふところから・・・銃を出し、ヒロに向けた。


ヒロ「・・・」


それが麻酔銃でない事は、すぐにわかった。


もう1人の覆面男は麻酔銃を片手に、ロッカーに向かって歩いて行くが・・・本物の銃を向けられたヒロは動く事が出来ない。


ヒロに銃を向けた男は、安全装置を外した。


男「女はもらっていく。残念だったな、ジェームズボンド」


トリガーを握る指に力が入る。


ヒロは自分に銃を向けている男を、細い眼で睨み付けた。無表情になると、頭の中でバッハの【G線上のアリア】が流れ始める。


ヒロ「・・・ ・・・」


極限にまで高まったヒロの集中力は、男が銃の引き金に力を入れる瞬間の、わずかな音を聞き逃さない。


音を聞きとった瞬間、ヒロは銃口から身をそらした。


ダン!!


ヒロが身をかがめた直後に、銃声が鳴り響く。


男の放った銃弾はヒロの耳をかすめ・・・ 背後のガラス窓を粉砕した。

ヒロの耳からは一筋の血が鮮やかに吹き出る。


割れた窓から侵入した横殴りの雨は・・・ヒロだけでなく、リナを狙ったロッカーの側にいる男も襲う。


そしてその激しい雨は・・・銃を撃った男にも降り注いだ。


ヒロ「・・・ ・・・」


全ての動きがスローモーションに見えていたヒロは、1つ1つの状況を全て察知する。


ヒロ「God bless you!」


一言呟つぶやくと、足下のスタンガンを小突いた。


スタンガンが地面に倒れた瞬間。


強烈な光を放った小さな雷がヴァンデグラフ装置から放たれ・・・ ロッカーの横にいた覆面男を直撃した。


と、同時に水浸しになった雨水を伝ってヒロも強烈な電気ショックを受ける。


ヒロ「ぐぅ!!」


激しい電流が、体中を走り抜けた。


リナは開いたロッカーの中から、強烈な光と共に倒れるヒロの姿を見た。


リナ「ヒ・・・」


声が出ない。ヒロはゆっくりとリナを見つめながら笑顔で倒れていった。

同時にロッカーの真横にいた覆面男が・・・ リナの目の前の床に倒れてきた。


倒れた男は激しい痙攣を起こした後・・・ 静かになった。


男「くそー!!」


まだ動ける男が1人いた。ヒロに向けて発砲した男だ。雷の直撃を避け、雨水による感電も大きな衝撃は伝わらなかった。


しかし利き腕の右手・・・ 銃を握っていた右手だけが、ビリビリと激しくしびれている。


男「くそ!!」


男は倒れたヒロに銃を向けるが・・・ 痺れた右手では狙いが定まらない。銃を左手に持ち直すと、ゆっくりとヒロに向かって歩いて行った。


ロッカーで怯えるだけのリナ。視線の先、倒れたヒロを・・・横から現れた覆面男がさえぎる。


左手に銃を握る男は、ロッカーの前で倒れた仲間を見た後、ロッカーの中にいるリナを睨み付けた。


男「はぁ、はぁ・・・ 手間かけやがって。

   お前のボディガード、ぶっ殺してやる!」


そう言うと男はリナに背を向け、銃口をヒロの頭に向けた。


男「はぁ、はぁ・・・。今度こそサヨナラだ。ジェームズボンド!」


男は・・・ 静かに引き金をひいた。





             (第22話へ続く)

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次回予告


絶体絶命のピンチを乗り切った2人だが・・・

ヒロは動けない状態だった。


裏門で待機していた追っ手が、校舎内へと忍び寄る。


まだ続く危機的状況で・・・、

ヒロは声を振り絞って、リナに言葉を告げた。



次回 「 第22話  追っ手(2008年) 」

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