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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第5章 回想
139/147

第138話  回 想(10)

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗かいとが、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナ。誘拐された妹を追って、1つ下の後輩・慎吾と共に実家へ戻る。誘拐犯が警視庁捜査官の藤岡だと突きとめるも、彼等のアジトで捕まってしまった。


しかし殺されたはずの魁斗が現れ、皆を救出。


藤岡の属する秘密組織【Unknown】は、全世界の人間を抹殺する恐ろしいテロを計画。慎吾は組織のTOP、グランドマスターを倒し・・・リナの守護霊がヒロであると告げた。


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   第138話  回 想(10)


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~ 第124話「マリア・アンナ・モーツァルト」より ~


12月22日(土)、午前0時1分。東京タワー付近にある建物、地下150m。


宇宙線飛来まで・・・ あと1分。



リナ「も、もう・・・ いいの? 演奏しても・・・?」


いったん慎吾は、リナと反対側のピアノに座るリゼット・・・の守護霊であるマリアを見た。


慎吾「・・・ ・・・」


(マリア「準備は整っています。

      彼女が弾けば・・・合わせてこちらが弾きます」)


日本人ではないマリアだが・・・彼女の言わんとしている事は、直接慎吾の頭に入ってくる。


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾は深く頷き・・・再びリナに視線を合わせた。


慎吾「えぇ。リナ先輩が弾き始めたら・・・

    マリアさんが合わせるそうです」


リナ「わかった・・・」


慎吾の横で、魁斗と安田がヒソヒソと話す。


魁斗「慎吾君は・・・ その・・・ モーツァルトが見えている?」


安田「みたいですね・・・ モーツァルトの姉だとか・・・?」


2人の男達は今一度リゼットの方を見るが・・・ 慎吾の言う女性・マリアは見えない。


魁斗「・・・ ・・・」


安田「・・・ ・・・」


首をかしげながらも、慎吾の指示通り・・・魁斗と安田はリナのピアノ音声を拾うため、マイクとPCを繋げてキーボードを打つ準備をした。



ポーン・・・



リナがピアノを演奏し始めた。


マリア「・・・ ・・・」


音を聞いたとたん、マリアの目が厳しくつり上がる。


ビャララーン!!


リナに続くように、リゼットの体を借りたマリアが演奏を始める。


慎吾「・・・ ・・・」


リナがゆったりと演奏しているのに対し、リゼット・・・いや、マリアの演奏は目にも止まらぬ速さで鍵盤を叩き続ける。2人の演奏が合わさり・・・ 単純な音だが・・・美しいメロディが部屋中を満たした。


魁斗「・・・ ・・・」


雛子「・・・ ・・・」


父親も妹も・・・リナの演奏に聴き入った。


リナとマリアの演奏は・・・マイクを経由して光回線を伝っていく。日本国内のみならず、世界中の通信回線を通し、あらゆるメディアに配信された。


リナ「・・・ ・・・」


不思議だった。確かに数分前、この曲を1度演奏はした。


リナ「・・・ ・・・」


しかし数字を覚えるのが得意なリナでも、楽譜はそうではない。たった1度しか弾いてない、しかもスコア(楽譜)がない状況で・・・


(リナ「完璧に演奏できている・・・」)


慎吾の言う、モーツァルトの姉・マリアと・・・完全にシンクロした状態で演奏を続けている。


(ヒロ「・・・ ・・・」)


リナの手を使い・・・ヒロが鍵盤を叩いている。ヒロとリナもまたシンクロして演奏しているのだが・・・リナは気づかない。


そして・・・


リナ「気持ちいい・・・」


演奏しながら、思わず本音が出た。ずっとこわばっていた表情が、少しずつ和らぎ・・・いつしか笑顔になっているリナ。


(リナ「これなら・・・ 1時間でも弾き続けられる・・・」)


(マリア「・・・ ・・・」)


ピアノを弾くマリアの表情が若干険しくなった。


(ヒロ「・・・ ・・・」)


そしてヒロも。


(ヒロ「・・・ 危険が・・・ 迫っている・・・」)


リナとは対照的に・・・ヒロとマリアはこれから起こりうるであろう危険を察知する。


(ヒロ「・・・ ・・・」)


演奏に集中しつつも、数分後に現れるであろうあの男に対し・・・どうすべきか策を講じ始めた。



・・・ ・・・。


数分後。


バタン!!


突然部屋のドアが開いた。


慎吾「 !? 」


魁斗「 !? 」


一斉に男達がドアの方を向くと・・・


安田「グ・・・ グランドマスター!?」


青い眼、スキンヘッド・・・左手に杖をついたグランドマスターが、青白い球体に包まれて現れた。


老人「集結せし、光の者達よ・・・」


グランドマスターの視線は、慎吾・ヒロ・マリアを捉える。


(ヒロ「ミスターシンゴ!!」)


演奏を続けつつ、ヒロが慎吾に声をかけた。


右手を強く握りしめたグランドマスターは・・・


老人「奔!!」


その右手を勢いよく前に押し出す。すると右手から、直径30cmほどの光の球体が表れ・・・勢いよく真っ直ぐに放たれた。その先には・・・


(ヒロ「狙いはマリアだ! 守れ!!」)


リゼットがいる。


慎吾「唵!!」


いち早く反応したのは慎吾。直径2mの大きな光の円盤をパワーストーンから出現させ、グランドマスターの手から放たれた光の塊をはじき飛ばす。


老人「・・・。お前のような者が、まだ残っていたとは・・・」


慎吾を睨み付けたグランドマスターは、部屋の中へゆっくりと入ってきた。



・・・ ・・・。


~ 第125話「霊能バトル」より ~


12月22日(土)、午前0時6分。東京タワー付近にある建物、地下150m。


グランドマスターの攻撃により、リゼットの体に乗り移っていたマリアがやられてしまう。そして慎吾達は・・・高エネルギーの宇宙線を浴びてしまった。



マリア「大丈夫・・・ 未来はまだ、あなた【達】の手に・・・」


その姿を崩す直前、最期の言葉を遺した。


(ヒロ「マリア・・・」)


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾はその言葉を受け取る。


グランドマスターもまた、その様子を見守り・・・マリアが完全に消えた後、慎吾に視線を合わせた。


老人「ふっふっふ。シールドをしいてないようだな。

    宇宙線はすでにお前達の体を貫いた。


    30分程で症状が出る・・・そして死に至る」


慎吾はグランドマスターに向かって身構えた。


老人「すでに日本のほぼ全域も・・・ 宇宙線は降り注いでいる。

    1時間で日本は・・・ 壊滅的な状態に陥る」


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾はリナの方に視線を合わせる。


(ヒロ「まだだ。宇宙線を浴びてしまったが・・・

     助かる道はまだある!!」)


リナ「・・・ ・・・?」


ピアノを盾にするように、身を低くし・・・グランドマスターと慎吾の方を見ているリナ。慎吾は無言で自分の方を向いたままだ。


(ヒロ「あの楽譜には・・・もう1つの曲が隠されている。

     それを演奏すれば、みな助かる。


     そのためには・・・」)


グランドマスターを睨み付けたヒロ。


(ヒロ「倒すべきヤツを倒さないとな・・・」)


慎吾「わかりました・・・」


リナの方を見て深く頷いた慎吾は、グランドマスターの方へ視線を合わせる。


慎吾「まだ・・・ 終わりじゃない。皆が助かる道は・・・ある・・・」


老人「・・・ ・・・」


慎吾「宇宙線を浴びても・・・助かる方法がある。

    そしてあなた【も】・・・それを知っている・・・」


グランドマスターもまた、ヒロの姿を見る事が出来れば・・・その声を聞くことも出来る。


老人「ふっ。面白い。の考えをよんだつもりか?

    仮にお前が言う事が正しいとしても・・・


    その方法を実行するには・・・」


慎吾「あなたを倒す・・・」


老人「・・・ ・・・」



こうして・・・2人の男による霊能バトルが始まる。グランドマスターに押され気味の慎吾を見ていたリナは、慎吾のサポートに回ろうとするが・・・



リナ「ぐ!?」


腹部に強烈な衝撃がはしる。同時に、体が今来た方向へと吹っ飛ばされた。


リナ「くあ・・・」


グランドマスターの攻撃を予想してよけたつもりが、あちらはリナがよける事まで計算に入れて攻撃していた。


魁斗「リナ!!」


フロアを滑ってきたリナの体を受け止める。


リナ「う・・・ う~ん・・・」


最初グランドマスターにこの攻撃を受けた時と同様・・・リナは気を失う。


いや・・・


魁斗「・・・ リナ?」


リナの目が半開きになり・・・ 白目をむく。


リナ「・・・ ・・・」


(ヒロ「・・・ ・・・」)


意識を失ったリナは、霊能力なるものを全く持っていない。それゆえヒロがリナの体に乗り移ることはほぼ不可能だが・・・


今はリナの命が危ない。ヒロは守護霊として・・・無理矢理リナの体に乗り移ることを試みた。


(ヒロ「リナ・・・ 守って・・・ みせる・・・」)


そして・・・


意識があるのかないのか・・・リナは立ち上がり・・・ピアノの前に座った。


魁斗「な・・・ 何を・・・?」


魁斗には何が起こっているのかわからないが・・・


(ヒロ「・・・ ・・・」)


リナの体を操るヒロは・・・慎吾を殺そうとしているグランドマスターを睨み付ける。



・・・ ・・・。


慎吾「・・・ ・・・」


右手のパワーストーンからはすでに光の剣が消えている。そして胸を押さえつけたまま慎吾は・・・フロアに尻をついた。


慎吾「ハ・・・ ハア・・・ カハ・・・」


老人「苦しそうだな。楽に死なせてやる!」


左手の杖を包み込むような円月刀が・・・ 慎吾の真上に振り上げられた。



瞬間・・・



ビャラーーン!!!



老人「ぐぅ!?」


円月刀を振り上げたグランドマスターの、左脇腹を激痛が襲う。


その左方向に視線を移すと・・・


(ヒロ「・・・ ・・・」 )


白目をむき、青白いオーラに包まれたリナの姿があった。


老人「・・・ ・・・」


いや、リナの体を借りたヒロの姿があった。


老人「・・・ ・・・」


グランドマスターは脇腹を押さえながら・・・ヒロを睨み付ける。


老人「ふん・・・」


そして慎吾からリナの方へと、体も反転させた。


老人「どちらが本当の・・・【アロンのメシア】なのか・・・


    わからせてやろう・・・」


慎吾「ハァ・・・ カ・・・ ハァ・・・」


慎吾もリナの方を見た。


リナ「・・・ ・・・」


(ヒロ「・・・ ・・・」)


(慎吾「ヒロさん・・・」)


青い眼のヒロが、リナの体を操っているのがわかる。


リナ「・・・ ・・・」


(ヒロ「いくぞ・・・」)


リナの体を操るヒロは・・・ 両手を真上にあげたかと思うと、勢いよくグランドピアノの鍵盤に振り下ろした。





           (第139話へ続く)

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次回 「 第139話  回 想(11) 」


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