表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第5章 回想
131/147

第130話  回 想(2)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗かいとが、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナ。誘拐された妹を追って、1つ下の後輩・慎吾と共に実家へ戻る。誘拐犯が警視庁捜査官の藤岡だと突きとめるも、彼等のアジトで捕まってしまった。


しかし殺されたはずの魁斗が現れ、皆を救出。


藤岡の属する秘密組織【Unknown】。そのTOPであるグランドマスターを倒した慎吾は、リナに衝撃の事実を告げる。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第130話  回 想(2)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~ 第59話「月光に隠されたもの」より ~


12月15日(土)午後5時43分。羽鳥邸、リナの部屋。


秋津駅、分倍河原駅、調布駅で連続殺人事件が起きた。駅名のアルファベットが【A】【B】【C】順になっている事に気づいた慎吾は、リナに【D】駅を調べさせる。


リナ「OK! 【D】で始まる駅を検索してみる」


駅名を検索したリナは、都内で【D】から始まる駅を表示した。


代官山 大師前 代田橋 台場 大門 田園調布


リナ「この6つね。

    しかも、どの駅もここから近いっちゃ近いわよ・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


ディスプレイに映し出された、6つの駅を見つめる慎吾。


慎吾「ど、どこだろう・・・?

    犯人が次に・・・ 事件を起こそうとする駅は・・・?」


候補が多すぎる。


リナ「さすがにあたしにも、わからないわよ。

    殺人犯の考える事なんて・・・」


しばらく駅名を見ていた慎吾。


(ヒロ「ミスターカイトは・・・4年前、敵の手から自力で脱出した。

     場所は目黒。その付近にしぼるんだ」)


不意にヒロの声が聞こえてくる。


慎吾「・・・ ・・・」


姿は見えないが・・・その声は、慎吾にだけハッキリと聞こえた。


慎吾「目黒?」


リナ「え?」


慎吾「あ、いや・・・ すいません、リナ先輩。

    目黒に近い駅って、この中にあります?」


リナ「目黒駅に近いなら代官山・・・ いや、田園調布の方が近いわね」


慎吾「田園調布・・・ですか・・・」


リナ「ちょっと・・・ 何よ、目黒って?

    どっからそんな単語出てきたの?」


慎吾「あー・・・ 何でだろう? 

    突然頭の中に【目黒】って言葉が・・・入ってきたみたいな?」


リナの守護霊であるヒロの存在は・・・リナには絶対言わぬよう、強く口止めされている。


リナ「・・・ ・・・」


じっと慎吾を睨むが、視線を合わせようとしない。


(リナ「・・・ 変だ・・・。 ここ数日、何か変だ」)


思えば、箱根で荒らされたリナの部屋にいた時からだ。普段引っ込み思案な慎吾が


慎吾「一騎当千・・・ 僕がいれば千人力です!」


絶対に言わないようなセリフを口にした。翌日には文字化けしたメールを、誰かからの暗号だと指摘し・・・昨日は死体の第一発見者。そして今日は、突然目黒を口にして、明日の殺害現場を予想している。


リナ「あんたさぁ・・・ 最近、様子が変よ。何かあったの?」


リナはズバリ聞いてみた。


慎吾「・・・ ・・・」


しばらく沈黙を保っていた慎吾は、窓を見ながら口を開く。


慎吾「・・・ 江浜さんが亡くなった時・・・ 僕はこう言われました」


以前、徳川埋蔵金を巡る事件で世話になった・・・今は亡き霊能力者、江浜。彼は慎吾に言葉をのこしている。


江浜「君の前には、君しか助ける事ができない人たちが現れるだろう。

    そういう人たちを・・・君には救って欲しい」

 

リナ「覚えてるわよ。私もその時、側にいたし。じゃ、何?

    あなたしか助ける事が出来ない人ってのが・・・


    私って事?」


慎吾はリナに視線を合わせると、無言で微笑んでみせた。


(慎吾「その人は・・・ヒロさんです・・・。リナ先輩。

     でも、すいません。今、その存在は言えないんです・・・」)




・・・ ・・・。


~ 第64話「嫉妬」より ~


12月17日(月)、午前11時38分。羽鳥邸、リナの部屋。


4年前の事件。その警察側の報告書をリナは警視庁サイトから違法にダウンロードし、慎吾にそれを読ませた。


リナ「ひどいでしょ? 私の彼氏。ピアノ講師を装って私に近づき・・・

    パパも誘拐して、私も危険な目に合った・・・」


思い切り慎吾が、眉をひそめた。


慎吾「何言ってるんですか? リナ先輩? 何でそんな事を?」


今度はリナが眉をひそめる。


リナ「なんでって・・・ 報告書読んだんでしょ? 

    私の元カレが・・・誘拐犯だったのよ!?」


今度は笑って見せる慎吾。リナは慎吾の表情の意味を理解できない。


慎吾「リナ先輩でも、そんな冗談言うんですね」


守護霊となってまでリナを守ろうとするヒロが・・・4年前に起こった一連の事件の犯人であるはずが無い。


慎吾の返事に眉をひそめたリナが聞き返す。


リナ「冗談って・・? あんた、何言ってるの?

    話がかみ合わないんだけど・・・」


笑ったまま慎吾が、リナの目を見て声をかけた。


慎吾「だって、このヒロさんが犯人のわけないじゃないですか」


その言葉を聞いたリナは、反射的に右手で胸を抑える。


リナ「・・・ ・・・」


パラパラと報告書をめくる慎吾。


リナ「な、なんで・・・? その報告書・・・

    嘘が書かれているって言うの?」


慎吾はリナの目を真っ直ぐ見つめて、確信めいた表情で口を開いた。


慎吾「当たり前ですよ。

    警察が犯人に逃げられたとあらば、面目丸つぶれですからね。


    典型的な【誰かを犯人に仕立てあげる】ってパターンです」


リナ「・・・ ・・・」


突然リナの中で、何かの感情がわき起こる。


リナ「なんでわかるのよ!?」


そして興奮気味に大きな声を出した。


リナ「このヒロって男は4年前、スパイを装って私に近づき・・・ 

    パパを誘拐したのよ!


    私だって銃撃戦に巻き込まれたんだから!」


どこからか、怒りに似た感情がわき起こる。何に対して、自分が起こっているのかわからない。


リナ「会った事もない・・・その場にもいなかったあんたが・・・

    何で確信を持って、彼を犯人じゃないって言えるのよ!!」


涙目になりながら、慎吾に怒鳴りつけるように言い続けた。


リナ「あんたに・・・ 何がわかるのよ!!」


そう言うと慎吾に背中を向け、目に溜まった涙をぬぐう。


(リナ「私・・・ 」)


1度もヒロと会った事のない慎吾。ヒロの事をわかった風に語るその口調が、気に入らなかったのだろうか・・・感情の整理がつかなくなってしまった。


リナ「あんたに・・・ 何がわかるのよ・・・」


大声から一転、かすれる声を出した。慎吾に背中を向けたまま・・・目に溜まる涙を、手でぬぐい続ける。


リナの背中を見ながら慎吾は、リナの予想外の態度に少し戸惑っていた。


慎吾「す、すいません。何か気に障る事を言ったようで・・・。

    でも・・・ わかるんです。だってそのヒロさん、し・・・」


思わず「ヒロさん、守護霊ですから」と言おうとした慎吾。突然リナの背後でその姿を現した【ヒロに】睨み付けられる。


ヒロ「・・・ ・・・」


ヒロが守護霊である事は・・・リナに言わぬよう、強く口止めされている。


慎吾「あ・・・ 死んでしまったけど・・・ 

    今でもリナ先輩、愛してるんですよね?」


睨み付けられた慎吾は、少し萎縮しながら言葉を続けた。


ヒロ「・・・ ・・・」


ヒロは慎吾を睨み続ける。


リナ「・・・ 愛なんて、知らないくせに・・・」


普段リナの方が冷静だが、ヒロの事が絡むと感情がうまくコントロールできない。


慎吾「す、すいません・・・ 」


リナとヒロ・・・2人に謝った。


ヒロ「・・・ ・・・」


ヒロは小さな溜息をつく。やがてその姿は、慎吾に視線を合わせたままスゥっと消えていった。


慎吾「・・・ ・・・」


重い空気が流れる中、しばらく慎吾とリナの2人は沈黙を保つ。


慎吾はリナの背中を見つめたまま、静かに声をかけた。


慎吾「あの・・・ 少しを取りましょう・・・

    僕、部屋に戻って、もう1度報告書を読みます。


    そして今回の件も絡めて、今一度情報を整理してみます」


そう言うと小さくリナの背中にお辞儀をして、静かにベランダの外へ出て行った。去り際に、今一度リナに声をかける。


慎吾「気を悪くされたら失礼します。でも一言だけ・・・ 

    ヒロさんは、100%犯人じゃないです。


    リナ先輩もわかってるように・・・」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾が出て行くのを、扉が閉まる音で確認したリナ。ベッドで横になり、枕に顔をうずめた。


リナ「・・・ ・・・」


頭の中・・・いろいろな事がぐるぐると回っている。


ヒロの事、妹の事、慎吾の事、パスワードの事、これからの事・・・


そして自分の事・・・


リナ「っう・・・」


モヤモヤとした心の中・・・自分の意志で制御できない。


(リナ「ヒロ・・・ 先生・・・」)


頭も感情も整理の着かないリナは枕に顔をうずめたまま、涙を流し続けた。


ヒロ「・・・ ・・・」


そのリナを・・・ ヒロは静かに見守っている。


(ヒロ「リナ・・・ 直接守ってやれなくて・・・ すまない・・・」)



・・・ ・・・。


~ 第76話「銃を向ける者、向けられる者」より ~


12月18日(火)、午後9時46分。羽鳥邸、玄関前。


本来、羽鳥邸の中へ入るときは・・・厳重なセキュリティチェックを受けるのだが、本来いるはずの警備担当井上がいなかった。


慎吾とリナは不審に思いながらも、玄関へ向かうが・・・。



リナ「井上さん。何で姿を見せないのかしら?」


慎吾「・・・ ・・・」


やがて2人は、玄関の前に辿り着いた。


慎吾「・・・ ・・・」


ふと慎吾が立ち止まる。


(ヒロ「中で何か悪い事が起こっているようだ・・・」)


突如ヒロの声が聞こえてきた。


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾はドアノブに手を伸ばさず、何かを考えている。


リナ「 ? 」


慎吾の斜め後ろに立ち、慎吾の背中を押していたリナが首をかしげた。


(ヒロ「ここは引き返した方がいい・・・」)


慎吾「リナ先輩・・・」


リナ「どうかした?」


ヒロが慎吾に危険を知らせている・・・リナは気づかない。


慎吾「いったん外に出ましょう。なんだか気分が悪くなっちゃって・・・」


そう言うと慎吾は、きびすを返した。


慎吾「!?」


しかし・・・ 振り返った瞬間、慎吾は目を丸くする。


(ヒロ「遅かったか・・・」)


制服を着けた男・・・ 井上ではない男が、慎吾に銃を向けていたからだ。


リナ「な・・・」


リナも振り返り、男を見た瞬間、目を大きく見開いた。


リナ「・・・ ・・・」


慎吾もリナも、その男に見覚えがある。


(慎吾「布田駅で会った警察官だ・・・」)


堂島「安全装置はすでにハズしている」


その男・・・堂島は銃を慎吾に向けたまま、静かに口を開いた。


堂島「中に入れ。外へ出ることは許さん」


冷静だが・・・ 強い口調で2人に言い放つ。


堂島「これは脅しじゃない。早く中に入るんだ」


堂島の握る銃の先は・・・ 慎吾に真っ直ぐ向けられたまま。


つい2時間前も慎吾は、銃を向けられた。しかしそれは麻酔銃・・・本物の銃ではなかった。


慎吾「・・・ ・・・」





           (第131話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次回 「 第130話  回 想(3) 」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ