第126話 反撃開始
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナ。誘拐された妹を追って、1つ下の後輩・慎吾と共に実家へ戻る。誘拐犯が警視庁捜査官の藤岡だと突きとめるも、彼等のアジトで捕まってしまった。
しかし殺されたはずの魁斗が現れ、皆を救出。
藤岡の属する秘密組織【Unknown】。彼等は、宇宙から降り注ぐ宇宙線に、特定の周波数をあて・・・地球上の人間のほとんどを抹殺する、恐ろしい計画を遂行しようとしていた。
リナとリゼットはモーツァルトの楽曲をピアノで演奏する事で、特定の周波数を遮断しようとしたが・・・ グランドマスターと宇宙服姿の藤岡が現れ、慎吾達は宇宙線を浴びてしまう。
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第126話 反撃開始
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2012年12月22日(土)、午前0時16分。
東京タワー東側、とある建物の地下150m。
(慎吾達が宇宙線を浴びて・・・ 8分)
ビャリラリラーン!!
勢いよくリナが鍵盤を叩くと・・・激しい音が部屋中に鳴り響いた。
ダリラリビャリラリダリラリダララーーン!!!
さらに高速で鍵盤を叩き続ける。
老人「ぐ・・・ っく・・・」
グランドマスターは、何かの衝撃に耐えているように足を踏ん張る。
リナ「・・・ ・・・」
赤い眼鏡の奥・・・白目をむいたままリナは、さらに加速度を増して鍵盤を叩き続けた。
老人「ぬ・・・ うぅ・・・ っく・・・」
少しずつ・・・グランドマスターは後ろへ退いていく。
慎吾「・・・ ・・・」
その様子を見ていた慎吾。リナの弾くグランドピアノから、青白く光る波のような物が立て続けにグランドマスターを襲っているのがわかる。そしてそれは、リナの後ろにいた魁斗、少し離れた位置にいる雛子や安田にもハッキリ見えた。
魁斗「音の・・・ 衝撃波・・・?」
雛子「音・・・? 光ってる・・・?」
慎吾「光の音だ・・・」
青白く光る波は、グランドマスターを包み込む球体を攻撃し続け・・・
老人「ぐぁ!!」
やがてその1つが球体を突き破り、グランドマスターは・・・5m程吹き飛ばされた。
ティロティロリン・・・
一転してリナは、軽やかな音の演奏を始める。
魁斗「・・・ ・・・」
リナのすぐ後ろにいる魁斗。娘の突然の行動を理解出来ないが・・・状況を見る限りグランドマスターに【音】で攻撃を与えたようだ。
安田「・・・ ・・・」
安田は時折、ドア付近で姿を見せる藤岡を相手に応戦しているが・・・やはりグランドマスターや慎吾、リナ達の方が気になる。
藤岡「・・・ ・・・」
一方藤岡も・・・廊下側から魁斗達を銃で狙いつつ・・・慎吾とグランドマスターのやりとりを見ていた。
(藤岡「あの連中は・・・ 本当に超能力があるのか・・・」)
今まで半信半疑だったグランドマスターの力。今更ながら、信じないわけにはいかない光景だった。
ティロティロティロ・・・ピリャリン・・・ピリャリン・・・
慎吾「・・・ ハァ・・・ ハァ・・・」
今、リナの弾いているピアノ。
(慎吾「リズム・・・? なんだか・・・」)
その音は、慎吾の心臓の乱れていた動悸を正常に戻していく。
そして・・・
(慎吾「なんだか・・・ 体が軽くなってきたような・・・」)
リナの奏でる音は、即効性のヒーリング効果も与えていた。
慎吾「・・・ ・・・」
ゆっくりと慎吾は立つ。
慎吾「スゥー・・・」
深呼吸をすると・・・
慎吾「唵!!」
パワーストーンに氣を送り込んだ。再び光の剣が表れる。
慎吾「・・・ ・・・」
そして、壁際で態勢を整えているグランドマスターを見た。
老人「・・・ ・・・」
リナの方を睨み付けるグランドマスター。
老人「ふ・・・ 【アロンのメシア】・・・ そして・・・」
その視線は慎吾の方を向く。
老人「【イスラエルのメシア】。2人揃ったというわけか・・・」
左手で杖をくるりと持ちかえると・・・円月刀が表れた。
慎吾「・・・ ・・・」
心なしか、さっきのそれよりも大きく見える。
老人「光と闇の戦い・・・ ここで決着だ・・・」
ダリラリラァラアーーーン!!!
グランドマスターの歩みと共に、リナがピアノを弾いて【攻撃の音】を奏でた。
老人「奔!!」
正面から来る衝撃波の1つ1つを、円月刀の刃先を飛ばしながら打ち落とす。そして・・・
慎吾「唵!!」
老人「ふん!!」
横から来る慎吾の攻撃を、円月刀で直接受け止めた。
デロデロデラリラィラリルラ!!!
リナの【音】の攻撃に対し、グランドマスターは光の壁を出現させてバリアを張る。
ダリラリビャリラリダリラリダララーーン!!!
リナはさらに強い【攻撃的な音】を奏でた。
ピキピキピキ・・・
グランドマスターのバリアにヒビが入ると同時に・・・
慎吾「せい!!」
慎吾は光の剣を横から水平に切りつける。
老人「おっと・・・」
それを円月刀でいなし・・・
老人「ふん!!」
正面から慎吾に突き刺そうとする。
慎吾「っく・・・」
間一髪背後にジャンプし、それをかわした・・・その瞬間。
老人「奔!!」
円月刀を慎吾の方へ振り抜き、刃先だけを飛ばす。さらに
ダリラリビャリラリダリラリダララーーン!!!
バリアを破ってきた【音】を、杖で全ていなし・・・
老人「スゥ・・・」
深く息を吸った後
老人「力の差を思い知れぃ!!」
杖を思い切り振り切ると、大きな円月刀の刃先がリナを襲った。
ダリラリラァラアーーーン!!!
リナは高速で鍵盤を叩くが・・・ それを突き破って刃先は襲ってくる。
そして・・・
勢いは弱まったものの、その刃先はグランドピアノごとリナを切り刻んだ。
魁斗「ぐっ!!」
リナの後ろにいた魁斗は、物理的な衝撃を受け、思わず尻餅をつく。
リナ「・・・ ・・・」
グランドマスターの攻撃を受けたものの、直前の音のバリアのおかげで、体の数ヶ所に切り傷をおっただけで済んだ。
リナ「・・・ ・・・」
リナの白目はジロリとグランドマスターを睨み付ける。
老人「スゥゥゥーー・・・」
さらに深い深呼吸をしたグランドマスター。
老人「奔!!!」
かけ声と共に・・・ 杖の先から3mもあろうかという円月刀が出てきた。
老人「この大きさでは・・・防ぎきれまい・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
その円月刀を見て唖然とする慎吾。
(慎吾「霊能力は・・・ 自らの命を削るはずなのに・・・」)
あれほど大きな武器を具現化すれば・・・霊能力の消費も大きいはず。
(慎吾「彼の・・・ 霊能力は無尽蔵なんだろうか・・・?」)
老人「奔!!」
円月刀を、リナに向けて振り抜いた。その刃先は勢いよく飛び出し・・・リナを襲う。
ダリラリラァラアーーーン!!!
音で防ごうとするが、刃先はそれらを蹴散らしリナに向かって行った。
慎吾「唵!!!」
横から現れた慎吾が、光の剣をバットのようにしてその刃先を打ち返そうとするが・・・
慎吾「ぐぐぐ・・・」
グランドマスターの攻撃の方が上で、徐々に差し込まれていく。
(慎吾「だ・・・ダメだ・・・」)
またしても心臓の動悸が不安定になり、力が抜けていく慎吾。
タリラリラララーーン!! ダリラリラァラアーーーン!!!
それを救ったのがリナの【音】。慎吾を後押しするように援護し・・・グランドマスターの攻撃を横へいなした。
ドッカーーン!!
部屋の側壁は大きな衝撃を受け、壁がはがれ落ちる。
老人「くっくっく・・・。よく防いだ。だが・・・」
左手の杖をくるりと回すと・・・
老人「奔!!!」
今度は先ほどよりも大きい、5mはあろうかという円月刀が表れる。
老人「これは2人がかりでも・・・防げまい・・・」
慎吾「な・・・・」
グランドマスターの霊能力の底が全く見えない。
老人「胸が苦しそうだな。宇宙線の症状もあと・・・15分で表れる」
慎吾「・・・ ・・・」
老人「お前達に勝ち目はない。宇宙線よりも早く・・・
あの世に送ってやろう・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
背後から聞こえる【声】に、慎吾は耳を傾けていた。
慎吾「わかりました・・・」
パワーストーンを前に出し、
慎吾「唵!!」
今ある霊能力の全てを注ぎ込む。若干大きめな光の剣が表れた。
老人「くっくっく。それが・・・限界のようだな・・・」
慎吾「これで・・・ 決着をつける・・・」
老人「面白い。負けを覚悟したか・・・」
慎吾「負けるのは・・・ あなただ・・・」
老人「ふ・・・。余の辞書に、【敗北】の2文字などない・・・」
ゆっくりと大きな円月刀を振りかぶると・・・
老人「奔!!!!」
慎吾、そしてその背後にいるリナに向けて振り降ろした。
5m近くある円月刀の刃先が・・・慎吾とリナを襲う。
慎吾「・・・ ・・・」
そして慎吾は・・・
(第127話へ続く)
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次回予告
慎吾とリナによる、光の剣と光の音のコラボレーション攻撃が・・・グランドマスターに襲いかかる。
そして・・・
とうとう霊能バトルに決着の時が訪れた。
次回 「 第127話 決着の時 」
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