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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第4章 世界の命運をかけて
126/147

第125話  霊能バトル 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗かいとが、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナ。誘拐された妹を追って、1つ下の後輩・慎吾と共に実家へ戻る。誘拐犯が警視庁捜査官の藤岡だと突きとめるも、彼等のアジトで捕まってしまった。


しかし殺されたはずの魁斗が現れ、皆を救出。


藤岡の属する秘密組織【Unknown】。彼等は、宇宙から降り注ぐ宇宙線に、特定の周波数をあて・・・地球上の人間のほとんどを抹殺する、恐ろしい計画を遂行しようとしていた。


リナとリゼットはモーツァルトの楽曲をピアノで演奏する事で、特定の周波数を遮断しようとしたが・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第125話  霊能バトル


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2012年12月22日(土)、午前0時6分。

東京タワー東側、とある建物の地下150m。



霊は・・・【霊核れいかく】とよばれる部分を攻撃されると、その姿を失い・・・天へ登るさだめにある。


(慎吾「霊核を・・・一発で撃ち抜いた・・・」)


グランドマスターの攻撃は、リゼットに宿る霊全体を攻撃。どこに霊核があるかなど問題にしない程、大きくて強烈な攻撃だった。


リゼットの体を借りたモーツァルトの姉・・・アンナ・マリア・モーツァルト。グランドマスターの攻撃により、その霊体は砂が崩れるように・・・粒子の細かい粒が竜巻のように天へと登っていく。


マリア「大丈夫・・・ 未来はまだ、あなた【達】の手に・・・」


その姿を崩す直前、最期の言葉を遺した。


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾はその言葉を受け取る。


グランドマスターもまた、その様子を見守り・・・マリアが完全に消えた後、慎吾に視線を合わせた。


老人「ふっふっふ。シールドをしいてないようだな。

    宇宙線はすでにお前達の体を貫いた。


    30分程で症状が出る・・・そして死に至る」


グランドマスターの体は、青白い球体に包まれている。


(慎吾「あれは・・・ 宇宙線を防ぐバリア・・・?」)


宇宙服姿の藤岡が部屋から出て行った事で、慎吾はグランドマスターに向かって身構えた。


魁斗「・・・ ・・・」


安田「・・・ ・・・」


特に何も感じはしないが・・・あの宇宙線は体を貫いているのだろう。


老人「すでに日本のほぼ全域も・・・ 宇宙線は降り注いでいる。

    1時間で日本は・・・ 壊滅的な状態に陥る」


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾はリナの方に視線を合わせた。


リナ「・・・ ・・・?」


ピアノを盾にするように、身を低くし・・・グランドマスターと慎吾の方を見ている。


慎吾「わかりました・・・」


リナの方を見て深く頷いた慎吾は、グランドマスターの方へ視線を合わせる。


慎吾「まだ・・・ 終わりじゃない。皆が助かる道は・・・ある・・・」


老人「・・・ ・・・」


魁斗はリナの肩に手を置いて、ピアノの下に身をかがめていた。


魁斗「まだ計画は完璧でない・・・?」


慎吾の言葉に反応する魁斗。


リナ「これまで慎吾の言うことは・・・ 全て正しかったわ」


魁斗「しかし・・・ 宇宙線を浴びて、どうやって・・・」


正直リナも、今回ばかりはどうしようもないと思う。だが・・・


リナ「私は慎吾を信じる。

    まだ・・・ 助かる道はあるのよ・・・ きっと・・・」


ピアノの反対側では、倒れるリゼットの側で・・・安田が雛子の肩を押さえていた。


雛子「・・・ ・・・」


未だに安田に対し不信感を持っている雛子。


安田「・・・ ・・・」


安田は銃を右手に握り、宇宙服の人物が出て行った入り口の方を警戒している。


慎吾「宇宙線を浴びても・・・助かる方法がある。

    そしてあなた【も】・・・それを知っている・・・」


老人「ふっ。面白い。の考えをよんだつもりか?

    仮にお前が言う事が正しいとしても・・・


    その方法を実行するには・・・」


慎吾「あなたを倒す・・・」


老人「・・・ ・・・」


グランドマスターは・・・青い眼を大きく見開くと、慎吾の背後に立つ守護霊を見た。


老人「なるほど。かつて日本の頂点に立った男が守護霊か。

    だが、余にも・・・強い祖先がついておる」


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾もまた、グランドマスターの背後に立つ守護霊を見た。黒装束・・・白い布を頭に巻き、大きな円月刀を左手に握っている。


老人「かつてクムランの英雄と呼ばれし、余の守護霊・・・

    勝負は避けられないようだな・・・」


慎吾「ふー・・・」


ぎゅっと握りしめたパワーストーンにを送り込むと・・・慎吾の定番武器となった光の剣が出てきた。


老人「多少修羅場はくぐり抜けてきただろうが・・・」


グランドマスターは左手の杖を逆さに持ちかえる。


老人「奔!!」


かけ声と共に・・・ 杖が青白く光り、守護霊と同じ円月刀が表れた。


老人「お前達が死ぬ事に変わりはない・・・」


そしてゆっくりと慎吾に近づいていく。


老人「久々の・・・【力】ある者との一戦。楽しませてもらおう」


左手で円月刀を振りかぶり・・・慎吾とは5m離れた状態で振り下ろした。刀の先だけが本体からはずれ・・・一直線に慎吾を襲う。


慎吾「唵!!」


慎吾は光の剣を、地面に突き刺し・・・そのまま攻撃が来る方向へゴルフスイングのように剣を振り上げた。


ガキィィーーーン・・・


相手の飛び道具を消滅させたが・・・


グランドマスターは、第2波・第3波の攻撃を繰り出している。


キィン、キィン・・・


その全てを剣で振り払い・・・慎吾もまた、ゆっくりとグランドマスターに近付いていった。



・・・ ・・・。


魁斗「・・・ ・・・」


呆然と2人の男の戦いを見守る魁斗。


魁斗「何だ・・・ 何が・・・ 起こってるんだ・・・?」


目の前で戦う2人の男。その光景が信じられないまま、ただただ目を離せず見守っている。


リナ「・・・ ・・・」


リナは霊能バトルを見るのは3度目。最初は江浜と風魔の戦い。2度目は慎吾や江浜、そして江浜の娘も加わり、リナ自身もバトルに参加した。


(リナ「あの時は・・・ 武器があったけど・・・」)


周りに武器として使えそうなものはなく、バトルに参加は出来ない。


魁斗「・・・ ・・・」


まさか娘が、隙あらばあのバトルに参加しようと思っているとは・・・考えもしない魁斗。


安田「・・・ ・・・」


雛子「・・・ ・・・」


安田と雛子もまた、慎吾達の戦いから目が離せなかった。


雛子「お姉ちゃんの彼氏・・・ すごい・・・」


特に雛子は、食い入るように慎吾を見つめている。


安田は慎吾を援護するため、銃をグランドマスターに向けて構えた。


慎吾「ダメです、安田さん!! ここは僕に任せて!!」


グランドマスターとやり合いながら、慎吾が声を出す。


安田「・・・ ・・・」


慎吾「また宇宙服を着た藤岡さんが来ます。

    部屋の入り口を警戒してください!」


老人「戦いの最中、どこを見ている!」


突如慎吾に向けて、グランドマスターが飛びかかってきた。円月刀を左手で振り下ろすが、慎吾は光の剣で受け止める。


老人「よく受け止めた。だがこれは、どうかな?」


見た目は70歳ぐらいだが、軽やかに体を反転させ蹴りを入れようとする。


慎吾「っく・・・」


相手の円月刀を受け止めつつ、体をひねって蹴りをかわそうとするが・・・慎吾の腰を蹴りがかすめた。


老人「ほう・・・ 予想以上の動きだ・・・」


グランドマスターは再び間合いを取ると、慎吾を睨み付けた。



・・・ ・・・。


魁斗は、倒れていたリゼットをピアノのこちら側に運んできた。ピアノ2つを隔てて、向こう側では2人の霊能力者によるバトルが続いている。


魁斗「・・・ ・・・」


宇宙線が日本中に降り注いでいる事も気になるが・・・今は慎吾の言葉を信じ、戦いを見守ることしかできない。



ズキューン!!



突如銃声が鳴り響く。入り口で宇宙服を着けた・・・


魁斗「マスターか・・・」


藤岡が体半分を出し、銃をこちらに向けていた。



パンパン!!



魁斗サイドで唯一武器を持っている安田が、銃を入り口に向けて応戦する。


(魁斗「武器が・・・ 何か武器が欲しい・・・」)


ピアノを盾に銃弾を凌いでいるが、このままでは2人の娘共々、いつ撃たれるかわからない。


(魁斗「何か・・・ ないか・・・?」)




・・・ ・・・。


老人「どうした!? 動きが鈍ってきたぞ?」


左手で杖を振りかぶりながら・・・円月刀を出現させ、攻撃を続ける。防戦一方の慎吾だが・・・


(慎吾「あの杖だ・・・ あの杖が、パワーストーンのような物・・・」)


グランドマスターの攻撃の源が、あの杖だと確信する。


(慎吾「あの杖を・・・ 何とか出来れば・・・」)


慎吾の思いとは裏腹に、グランドマスターの攻撃は勢いを増すばかり。その動きは20代のアスリートのように軽やかだ。


慎吾「ぐ・・・」


グランドマスターの円月刀が、体重をのせて攻撃されてくる。連続攻撃を耐え続けているが・・・


慎吾「ハァ・・・ ハァ・・・」


老人「どうした? 顔色が悪いぞ?」


慎吾「ハァ・・・ ハ・・・ カ・・・ハァ・・・」


光の剣を振り回しながら、徐々に後退していく。そして・・・背中に壁がついた。


(慎吾「こんな時に・・・」)


心臓の動悸が・・・明らかに不規則だ。同時に、呼吸も不規則になっていく。


老人「ここまでだ。光の者よ・・・。を相手によくやった方だ。

    だがもう、動く力は残っていまい・・・」


グランドマスターはゆっくりと間合いを詰め、円月刀を振りかぶる。


リナ「・・・ ・・・」


慎吾の危険を察知したリナが、思わずグランドマスターの方へ飛び出した。時折、部屋の入り口から藤岡の発砲があるものの、リナは構わず行動に出る。


魁斗「リナ!?」


突然の娘の行動に、魁斗は出遅れる。


リナは無言で、リゼットが弾いていたピアノの屋根を支える突上棒という棒を取り上げ・・・グランドマスターに投げつけた。


老人「こざかしい・・・」


杖を持ってない右手をリナの方へ向けると・・・その棒は空中で止まり、下へと落ちる。


老人「奔!!」


そして右手を握りしめた後、勢いよくリナの方へつきだした。


リナ「・・・ ・・・」


相手の攻撃を予想して、右へジャンプするが・・・


老人「少しは考えているようだが・・・ まだ甘い!」


リナ「ぐ!?」


腹部に強烈な衝撃がはしる。同時に、体が今来た方向へと吹っ飛ばされた。


リナ「くあ・・・」


グランドマスターの攻撃を予想してよけたつもりが、あちらはリナがよける事まで計算に入れて攻撃していた。


魁斗「リナ!!」


フロアを滑ってきたリナの体を受け止める。


リナ「う・・・ う~ん・・・」


最初グランドマスターにこの攻撃を受けた時と同様・・・リナは気を失う。


いや・・・


魁斗「・・・ リナ?」


リナの目が半開きになり・・・ 白目をむく。


リナ「・・・ ・・・」


意識があるのかないのか・・・リナは立ち上がり・・・ピアノの前に座った。


魁斗「な・・・ 何を・・・?」



・・・ ・・・。


老人「マリアは天に昇った。お前も続くがよい・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


右手のパワーストーンからはすでに光の剣が消えている。そして胸を押さえつけたまま慎吾は・・・フロアに尻をついた。


慎吾「ハ・・・ ハア・・・ カハ・・・」


老人「苦しそうだな。楽に死なせてやる!」


左手の杖を包み込むような円月刀が・・・ 慎吾の真上に振り上げられた。



瞬間・・・



ビャラーーン!!!



老人「ぐぅ!?」


円月刀を振り上げたグランドマスターの、左脇腹を激痛が襲う。


その左方向に視線を移すと・・・


リナ「・・・ ・・・」


白目をむき、青白いオーラに包まれたリナの姿があった。


老人「・・・ ・・・」


グランドマスターは脇腹を押さえながら・・・リナを睨み付けた。


老人「ふん・・・」


そして慎吾からリナの方へと、体も反転させる。


老人「どちらが本当の・・・【アロンのメシア】なのか・・・


    わからせてやろう・・・」


慎吾「ハァ・・・ カ・・・ ハァ・・・」


慎吾もリナの方を見た。


リナ「・・・ ・・・」


リナの横に立つ魁斗。リナからあふれるような青白いオーラに、頭の整理がつかないままだ。


(魁斗「【アロンのメシア】・・・? リナが・・・?」)


死海文書によれば、【アロンのメシア】は・・・


(魁斗「クムラン・・・?」)


超能力の集団と言われる、クムランの出身のはずだ。


リナ「・・・ ・・・」


白目をむいたままリナは・・・ 両手を真上にあげたかと思うと、勢いよくグランドピアノの鍵盤に振り下ろした。





           (第126話へ続く)

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次回予告


慎吾が絶体絶命の状況で・・・突如覚醒したリナ。


リナの武器は・・・ 【音】だった。


次回 「 第126話  反撃開始 」

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