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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第4章 世界の命運をかけて
123/147

第122話  世界の目

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗かいとが、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナ。誘拐された妹を追って、1つ下の後輩・慎吾と共に実家へ戻る。誘拐犯が警視庁捜査官の藤岡だと突きとめるも、彼等のアジトで捕まってしまった。


しかし殺されたはずの魁斗が現れ、皆を救出。


藤岡の属する秘密組織【Unknown】。彼等は、地球上の人間のほとんどを抹殺する、恐ろしい計画を遂行しようとしていた。


リナは【Unknown】に捕まったが、慎吾が救出。宇宙線飛来まで、あとわずかの時間だが・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第122話  世界の目


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2012年12月21日(金)、午後11時37分。

東京タワー西側、とある建物の地下150m。

(宇宙線が地球に飛来するまで・・・残り25分)



慎吾「ハァ・・・ ハァ・・・」


無事を確認した瞬間、どっと疲れが出た慎吾。崩れるように座りこみ、その右手は強く胸を抑え、額から汗が噴き出している。


リナ「・・・ 大丈夫?」


心配そうにリナが慎吾の顔を覗き込む。


慎吾「だ、大丈夫です。そ、それより・・・」


息を乱しながらも、リナが知らない現状を説明し始めた。


慎吾「【Unknown】が今、電波ジャックを行ってて・・・

    TVを通して、危険な周波数が流されています。


    そ、それを止めないと・・・ みんな死にます・・・」


それを聞いて息をのむリナ。慎吾の悪い顔色を気にしながらも・・・


リナ「・・・ ・・・ わかった」


眉毛をキリリとつり上げ、すっと立ち上がった。


慎吾「東京タワーに、リナ先輩のお父さんが・・・。

    今、必死でそれを止めようと・・・」


リナ「OK。慎吾はそこで休んでて。後は私がやる・・・」


そう言うとリナは、すぐに部屋を出て行く。


慎吾「・・・ ・・・」


ピアノの足に背を持たれ、慎吾はリナの後ろ姿を見ていた。


(慎吾「た・・・立たなきゃ・・・」)



・・・ ・・・。



(リナ「さっきの・・・ パソコンさえあれば・・・」)


部屋を出て、誰もいない廊下を歩き・・・隣の部屋へと入っていく。


リナ「・・・ ・・・」


ここへ来た時、最初に見た大型モニターやPCが数台並ぶ部屋だ。


すぐに1台のパソコンの前に座り、キーボードを操作する。


(リナ「ロックはされてない・・・」)


すぐにログイン出来たリナは、記憶している父親の携帯番号を入力し、IP電話をかけた。


リナ「・・・ ・・・」


しばらくのの後・・・


「・・・ ・・・」


電話は通じた。警戒しているのか、相手は無言のままだ。


リナ「パパ! 私よ! リナよ!!」


PC横のマイクを通して、電話の向こうの相手に声をかける。


魁斗「リナ! 無事だったか!!」


即座に返事が返ってきた。


リナ「慎吾に助けてもらった! 全然大丈夫!!」


魁斗「そうか・・・ よかった・・・ また彼に・・・」


感傷に浸りかけた父親を、リナが制止する。


リナ「それよりパパ! 電波ジャックの話聞いたわ。

    多分今私がいる部屋が・・・ 


    電波ジャックをしている場所だと思うの。

    でも、どうすればいいのか・・・」


リナの質問に魁斗は適切な返事を返す。


魁斗「今から指示する物を、コンピュータの中から探すんだ!

    TV局の外から映像を流しているから・・・


    FPUと呼ばれる中継電送装置を経由しているはず。

    FPUで検索し、それに関連づけられているプログラムを探せ!」


リナ「わかった」


すぐにLANで結ばれた全PCを検索し始める。


リナ「・・・ ・・・」


魁斗「今、リナのいる場所を突きとめた。

    5分でそちらに行く。それまでにFPU関連ファイルと・・・


    動画の保管場所を突きとめて欲しい」


リナ「うん。タワーの東側に小さな建物がある。

    私はそこから入ってきた。エレベーターを降りて」


魁斗「その建物も確認している。今から向かう。また後で!」


リナ「わか・・・」


慎吾「待ってください!!」


リナの言葉をさえぎって・・・ いつの間にか部屋に入ってきた慎吾が声をかけた。


リナ「慎吾・・・ パパ、ちょっと待って!!」


何か慎吾が伝えようとしているのを感じ取ったリナ。父親に待機するよう伝えた。


魁斗「どうした!?」


壁にもたれかけながら慎吾は・・・


慎吾「あの女性を・・・ モーツァルトの霊が乗りうつった女性も・・・

    ここへ連れてきてください」


リナ「ど・・・」


【どうして?】という言葉をのみ込んだリナ。ここまでの慎吾の言うことは、全て正しい道を指し示していた。


リナ「わかった。パパ! あの女性もここへ!!

    確かあいつらも言ってたわ・・・


    モーツァルトがこの計画を止めるって・・・」


魁斗「承知した! 連れて行く!!」


そう言うと通信が途絶えた。


リナ「・・・ ・・・」


背後に慎吾を感じながらも・・・リナは必要なファイルをPCの中から検索し始める。ディスプレイ右下の時計を確認すると・・・


リナ「11時43分・・・ あと20分もない・・・」


しかし・・・


リナ「パパさえいれば・・・ 絶対・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


リナの後ろに立つ慎吾は・・・


胸を抑えながら、部屋の中に延長コードがないか探していた。



・・・ ・・・。


午後11時49分。

(宇宙線が地球に飛来するまで・・・残り13分)


魁斗「リナ!!」


ようやく姿を見せた父親と抱き合うリナ。すぐに抱擁を解いて


リナ「パパ! これ!!」


すでに見つけていたファイルを示した。


魁斗「よくやった! 後は私が・・・」


言葉よりも早く、魁斗は席に座りキーボードを操作する。


魁斗の後ろには、モーツァルトの霊が乗りうつった女性を背負う安田。そして・・・


雛子「お姉ちゃん!!」


一緒に来ていた妹がリナに抱きついてきた。


リナ「よかった・・・ 無事で・・・」


雛子「うん・・・」


死線を乗り越えた雛子は・・・ これまた死線を乗り越えた姉に抱きつきながら涙を流した。


慎吾「安田さん・・・」


安田「ん?」


背後から声をかけられる安田。振り返ると、額に汗をにじませる慎吾が立っていた。


安田「慎吾君・・・ 大丈夫か? 顔色悪いぞ・・・?」


慎吾「えぇ・・・ それより・・・ その女性を、隣の部屋へ」


安田「どうして?」


リナが言わなかったセリフを、安田が言う。


慎吾「・・・ ・・・」



・・・ ・・・。


午後11時53分。

(宇宙線が地球に飛来するまで・・・残り9分)



魁斗「よし!!」


部屋に設置されたTVモニター10台が・・・


一斉に各TV局の報道局を映し始めた。


リナ「やった!!」


【Unknown】の式典映像が消えて、リナも初めて笑顔を見せる。


どの局もニュース番組だ。


「ちょっと・・・待ってください! 今! 復旧しました!

  午後11時53分! 何者かによるTV回線の占拠が・・・」


「あ! い、今・・・11時53分現在! 映像が・・・

  大丈夫・・・ えぇ、この放送はつい先ほど・・・」


「今・・・見えて・・・ いるようですね・・・はい。

  緊急ニュースです。つい先ほど、テロ組織によるものと思われる・・・」


「映ってる? ホントに? 間違いなく・・・?

 え、あー・・・ つい先ほど電波ジャックによる・・・」


「警察の発表は? え!? 今、映ってるの!?」


どのニュース番組のアナウンサーも、慌てて報道を開始している。


魁斗「もう・・・ 大丈夫のはず・・・」


リナ「パパ・・・」


リナは後ろから父親を抱きしめた。



これで・・・


宇宙線を殺人光線に変える周波数・・・いわゆる固有の電磁波はシャットアウトした・・・


はずだった。




だが・・・


魁斗「・・・ ・・・」


しばらくモニターを見ていた魁斗の表情が青ざめる。


魁斗「まさか・・・」


その表情はさらに暗くなっていった。


リナ「どうしたの・・・?」


魁斗「や・・・ やめろ・・・」


リナ「?」


モニター画面を見るリナ。


リナ「嘘・・・」



「では。先ほどジャックされた映像を見てみましょう・・・」


「専門家の方に来ていただいてます。テロ組織にくわしい松尾先生。

  この映像を見て何か・・・」


「TV史上初。前代未聞の電波ジャックにより・・・」


「宇宙物理学専門の先生に来ていただいてます。

 宇宙線飛来による人類への影響ですが・・・映像映りますでしょうか?」



各放送局は・・・ 【Unknown】の式典映像を、再び放送し始めた。


それだけではない。


かつて日本で惨劇をもたらした地下鉄サリン事件。それ以上の前代未聞のテロという事で、世界各国がニュース速報として・・・


【Unknown】の式典映像をTOPニュースとして流し始めた。



さらには、Youtubeのトップにもその映像が流れ・・・世界最速でのアクセス数を記録し始める。



【TOKYOがテロ組織に乗っ取られた】



その参考映像として・・・ あらゆる報道機関、動画配信サイトが・・・


魁斗「超低周波音も・・・ 流れている・・・」


宇宙線を殺人光線に変える電磁波と共に・・・


世界に流れていた。




宇宙線飛来まで・・・ あと6分。

 


           (第123話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


【Unknown】の狙い通り・・・


東京を中心とした放送局の電波ジャックの映像は・・・世界に流される事になった。


魁斗を持ってしても、世界中の映像配信を止める事は不可能。しかし慎吾は、殺人光線を止める方法を知っていた。



次回 「 第123話  モーツァルトのカノン 」

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