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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第4章 世界の命運をかけて
107/147

第106話  死海文書

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗かいとが、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾と共に誘拐犯を追うリナ。


2人は黒幕が警視庁捜査官の藤岡である事を突きとめるが、彼等のアジトで捕まってしまう。死んでいたと思われた父親の魁斗が、皆を救出。


アジトを離れた藤岡は、グランドマスターと呼ばれる男と、墨田区にいた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第106話  死海文書


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2012年12月21日(金)、午後3時ちょうど。東京農工大、地下施設。



魁斗・リナ・慎吾の3人は、部屋の中央にある大画面の見つめていた。


リナ「あれが・・・」


慎吾「グランドマスター・・・」


大画面に映し出されたのは、スキンヘッドの老人。眼が青く、ヨーロッパ系の人間に見える。


魁斗「あぁ。【Unknown】のトップ・・・

    グランドマスターだ。


    彼等の言う【最後の式典】が・・・ 今、始まる・・・」


魁斗はスーパーコンピュータのキーボードを操作し、リナと慎吾に軽く説明した。


リナ「な、何をやっているの・・・?」


キーボードを高速で叩く父親に、リナが質問する。


魁斗「その【最後の式典】とやらが、どこに映像配信されているか・・・

    その場所を調べているんだ」


リナ「で、でも・・・この映像って、彼等身内だけに放送されているんでしょ?

    あちら側に侵入して、映像をハッキングしているって事?」


魁斗「ハッキングという言葉は、あまり好きではないが・・・

    まぁ、そういう事だ。


    世界にある彼等の根城を・・・ここで一気に暴く」


慎吾「【Unknown】や、新世界に行く人たちを・・・

    特定するって事ですか?」


魁斗「そうだ。私が中国に拉致されていた時・・・

    秘密裏に【Unknown】の情報を集めていたが・・・

 

    全てを集めたきれたわけではない。

    特に新世界に関しては、情報収拾の時間がなかった」


リナ「でも・・・ 逆探知でこちらを特定されたりしない?」


魁斗は小さく笑いながら、キーボードを叩く。


魁斗「大丈夫。ヒロのサイトを通じて侵入している。

    あのサイトはマスターに捕まる前、私自らが作った。


    万が一の場合を考え、ウォールを抜けられるよう用意した物だ。

    IPアドレス他、こちらの情報は一切侵入先にはわからない」


リナ「そ、そうなんだ・・・」


改めて、ヒロが256文字のパスワードを設定したそのサイトのすごさを知る。


魁斗「そのサイトへ行けるのは・・・ 今や2人だけだ・・・」


キーボードを叩きながら、魁斗はリナに視線を送った。


魁斗「・・・ ・・・」


(リナ「私と・・・ パパだけ・・・」)


ヒロが生きていれば・・・3人だっただろう。


(リナ「あのサイトは・・・ それほどすごいものだったんだ・・・」)


敵がそのパスワードを破棄した理由を、今になって理解した。


(リナ「簡単に言えば・・・どんなサイトにも、痕跡を残さず侵入できる。

     スパイなら、喉から手が出るほど欲しい代物・・・」)


逆に、手に入らないとわかれば・・・それを破棄したくなるサイトだ。だがサイトはハドリアンズ・ウォールが守り通している。サイトを破壊する方法があるとすれば・・・1つはリナか魁斗、すなわちサイトにログイン出来る者が、直接破棄する。もう1つの方法は、サイトが置かれているサーバを、直接物理的破壊するしかない。


(リナ「でもあのサイトは・・・

     サーバがどこにあるかさえ、判別できないようになっている・・・」)


慎吾「は、始まります・・・ 【最後の式典】が・・・」


映像はグランドマスターのアップだけだが、周りには数名の人がいるように思われる。


魁斗「彼等の全て・・・  テロ計画を含めたその全てが・・・

 

    今、おおやけになる・・・」


3人が映像を見つめる中、グランドマスターが語り始めた。


老人「世界にいる我が息子達・・・ 【選ばれし者】達よ・・・。

    我々が長い間、待ち望んでいた・・・


    きたるべき【審判の時】が、ようやく訪れる」


グランドマスターの青い眼は、じっと正面のカメラ目つめ、けして視線をそらすことはない。


老人「【選ばれし者】以外は全て死に絶え・・・

    【選ばれし者】だけが生き残る。


    そして新世界で我々は・・・理想世界を作るだろう」


慎吾「・・・ ・・・」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾もリナも、老人の不気味な青い眼に吸い込まれそうになった。


老人「【選ばれし者】達よ・・・ 

    今、お前達は新世界の扉に集結しているはずだ。


    その扉が開くのは、まず日本。今日の夜11時に扉が開き・・・

    そして全ての扉は、お前達を招きいれる為、順次開いていく」


魁斗は映像を見ながら、スーパーコンピュータを扱っている。


魁斗「中国に3つ。日本に2つ。アメリカに3つ。ロシアに2つ。

    そしてヨーロッパ各地に3つ。その新世界と呼ばれる施設はある。


    そしてその近くにある、大きなホールに・・・

    【選ばれし者】は集結し、彼の声明を聞いているはずだ」


慎吾「に、日本の・・・その2つの施設は、どこにあるんですか?」


魁斗「それを今、調べている・・・。

     新世界の場所も、担当以外はトップシークレット。


     住人にですら、2日前に知らされたらしい。

     痕跡が残らぬよう、直接な・・・」


リナ「場所は特定できそう?」


魁斗「今やっているが・・・。新世界の情報は・・・

     ハドリアンズ・ウォールを何重にも張り巡らしている。


     【那由他】をもってしても・・・

     少し時間がかかりそうだ・・・」


※ 那由他 = スーパーコンピュータの名前


リナ「私も・・・ 手伝おうか?」


魁斗は小さく笑った。


魁斗「ありがとう。でも人間がやる事はほんのわずか。

    場所を特定するための、アルゴリズムを与えてやるだけ。


    後は膨大な計算を、【那由他】がやってくれるさ」


リナ「そう・・・」


慎吾「あ、あの・・・。グランドマスターの演説って日本語ですよね?

    日本語で、世界各地へ・・・?」


リナ「バカ。同時通訳してるに決まってるでしょ」


慎吾「そ、そうか・・・ そうですよね・・・」


魁斗「ダミー施設と・・・ 各国フリーメーソン・ロッジにも・・・

    この映像は配信されているようだ」


慎吾「フリーメーソン?」


魁斗「あぁ。フリーメーソンは場所がすでに特定されているから・・・

    そこに映像が流れている事だけは、すぐにわかった」


慎吾「何故、フリーメーソンに?

    【Unknown】はフリーメーソンを破門されたんですよね?」


魁斗「おそらく・・・ リベンジ」


慎吾「リベンジ?」


魁斗「あぁ。かつて【プロパガンダ2(ドゥエ)】は・・・

     フリーメーソンの中でも、大きな力を持っていた。


     その力を奪った連中に、これから起こる事を伝え・・・

     絶望に陥れる。そういうつもりだろう」


慎吾「・・・ ・・・」


魁斗「まぁ、グランドマスターの話を聞くんだ。

    彼等の全てが・・・ 明らかになるはずだ・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


再び慎吾は、巨大スクリーンへと目を映した。




老人「今日の夜12時。

    日本を起点として、世界各国にその時はおとずれる」


老人は人差し指を縦にして、力強い視線をカメラに送る。


以降・・・老人は、大げさな身振り手振りを交えて語り続けた。




「我々は、お前達を【選ばれし者】として選定した」


「これから地球で起こる・・・大洪水から救うために」


「大洪水は何故、起こるのか? どのようにして起こるのか?

  そして何故我々が、お前達を・・・ 選んだのか?」


「今からそれを語る。心して聞くがよい」


「その前に・・・  我々は自ら選んだ者をよく知っているが・・・

 【選ばれし者】の中には、我々を知らぬ者も多い」


「新世界を作る仲間として・・・

 我々の事も知っておく義務がある」


「少しばかり・・・ 我々【知られざる者】について語ろう」


「我々【知られざる者】の前身であるフリーメーソン・・・」


「その言葉の意味は【自由な石工】というのは周知であろう」


「フリーメーソンの起源・・・

  それは中世ヨーロッパにおける、石工職人のギルド」


※ 現在フリーメーソンの起源として、有力な説である。


「そう勘違いしている者も多いはずだ。だがそれは大いなる誤解」


「我々の祖先は、もっと・・・ 遙か過去から存在している。

  それはかつて、【セラピス教団】と言われていた」


「その教団は、聖牛セラピスを崇拝する神秘主義宗教結社であり・・・」




慎吾「セ、セラピス教団・・・」


リナ「知ってるの?」


慎吾「えぇ・・・。伝説の教団です。彼等は・・・」




「フリーメーソンはイギリス発祥・・・そう唱える者は多い・・・

  それは無知な人間の、浅はかな言動に過ぎない・・・」


「そう。我々祖先は・・・ 古代エジプトに、すでに存在した。

  今から5000年以上も前に・・・」

 



リナ「古代エジプト!? 5000年も前!?」


慎吾「えぇ・・・ 今なお、多くの謎に包まれているピラミッド。

    それも、セラピス教団が作ったものです」


魁斗「あの巨大な石を積み重ねる技術は、現代建築工学でも高度な技術。

    【フリーメーソン】は・・・


    自由自在に石を操る・・・そういう意味も、あるかもしれないな」


リナ「フリーメーソンの祖先が・・・ ピラミッドを造った・・・?」


慎吾「【セラピス教団】は・・・

    高度な数学や天文の知識に加え、神秘的な能力を持つ集団です。


    た、確か中学校で習う【三平方の定理】。

    彼らは、古代エジプトからその定理を使っています」


リナ「マジ!? ピタゴラスが発見した定理じゃないの?」


魁斗「三平方の定理が、古代エジプトで使われていたのは有名な話だ。

    その証拠もちゃんとある」



グランドマスターの声明からわずか5分。驚くべき事実を聞かされる慎吾達。だが、さらに驚く内容をグランドマスターは語り続ける。




「かつてマレオティス湖に住む、【テラペウタイ】と呼ばれる人々がいた」


「【テラペウタイ】とは、【セラピウム】のギリシア読みだ・・・

 つまり、【セラピス教団】の一派なのだ」


※ 【セラピウム】・・・セラピス神のいる神殿



エジプトの首都・カイロ。そこから北西180キロメートルの位置に、アレクサンドリアという都市がある。地中海とマレオティス湖に挟まれた有名な都市だ。



「マレオティス湖のほとりに移り住んだ我々の祖先・・・

 【テラペウタイ】。 彼れは後にエジプトだけでなく・・・


 ギリシアや各国にも散らばっていく・・・」


「その一部は・・・ パレスチナで【エッセネ】と呼ばれるようになった」




魁斗「【エッセネ】は、昔からその存在自体はよく知られていた。

    しかし、彼等についての記録が全くなくて・・・

 

    謎に包まれていたんだ。だが・・・」


慎吾「1947年。彼等に関する記録が、偶然発見されたんです。

    それが・・・」





「【死海文書】の発見により、我々は自身のルーツを紐解くことが出来た。

  周知だろうが、【死海文書】には・・・


  それが書かれた紀元前当時のユダヤや、エッセネについて・・・

  詳細な記録が、膨大な量の文章として記述されている」



グランドマスターの話によれば・・・


死海文書を記したのは【クムラン教団】。ユダヤ教一派である【エッセネ派】に属する教団である。厳格な戒律がしかれ、厳しい修行を行っていた彼等は、あらゆる技術や驚くべき能力を持っていたとも言われている。例えば【クムラン教団】のある者は、神の言葉を直接聞くことが出来た・・・とも伝えられている。一説には、奇跡を起こしたイエスキリストもクムラン教団であるとされている。


実際彼等は、当時大勢力をほこっていたローマ軍から【死海文書】を守り通し、高度な防腐処理を行っている。それゆえ2000年以上前に記されたにも関わらず、その文字は鮮明に残り、現代の人間にその内容を伝えたのだ。


そしてその防腐処理の技術は・・・ 現代科学者が、あらゆる化学分析を行ったにも関わらず、その成分を突きとめるに至っていない。今なお、その防腐処理技術は謎とされている。



「我らの祖先は全てをかけ、【死海文書】を記し、守り通し・・・

  未来の我々へそれを残した。その内容の多くは・・・


  すでに公開され、一般にもよく知られたもの・・・」


【死海文書】に記された主な内容は・・・


・エッセネ派に関する記述。

・他の宗派に関しての記述。

・ヘブライ語聖書

・ユダヤ教の宗教文書

・聖書の注釈


などである。




「だが・・・

  【死海文書】には、おおやけにされていない部分もある・・・。


  それは未知の言葉で書かれ、解読が不可能だからと・・・

  そう言われておる」


視線を動かさず、グランドマスターは首を横に振る。


「未知の言葉で書かれていたのは事実だが・・・

 すでに解読は終了している。一般には知られていないだけ。


 バチカンが、おおやけになる事を必死に止めているからだ・・・」


「何故バチカンは公表を止めるのか? それ以前に・・・

 バチカンは【死海文書】に関しては、その内容を全く認めていない。


 いわゆる彼等からしたら、デタラメな文書に過ぎない。

 なのに何故・・・? 彼等は、その公表を必死に止めようとするのか?」



「死海文書を残したクムラン教団は・・・

  超人的な能力を持っていたという事で、非常によく知られている。


  特に・・・ 彼等のある能力は、誰もが驚くほどの力だったという」


「それは・・・ 予言。いわゆる、予知能力だ・・・」




魁斗・リナ・慎吾の3人は、くいいるようにグランドマスターの映像を見つめている。



「我々は数年前、【死海文書】の全DATAを入手した。

 バチカンが隠そうとした、未公開の部分もだ・・・。


 世の中には、我々を盗人という者もいるが・・・。

 元々の持ち主は我々。それが手元に戻ってきただけの事・・・」


「そして我々はとうとう知った・・・。

 我らの祖先が、真に伝えたかった・・・


 その大いなる予言を・・・」


「今からが・・・  その内容を初めて、公開する。

 よく聞くがよい・・・」


「もうすぐ起こる大洪水・・・  人類終焉・・・

  そして・・・


  2人のメシア(救世主)の話を・・・」





           (第107話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


グランドマスターはとうとう・・・


人類終焉について語り始める。


そして・・・ 2人のメシアが現れるという。


次回 「 第107話  2人の救世主 」

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