予測と対策
予測と対策
「――やっぱり相手が王子であろうとセレーネ様を芋扱いする人間は一人残らず海に沈めてこようかと思うのですが、どうでしょう?」
私の髪を梳かしながら、いつも通りの朗らかな笑顔でで物騒なことを言っている彼女は、
「うへへへ…やっぱりセレーネ様のお髪は本当に美しい…!はぁはぁ…」
8歳の少女の髪の毛をニッコニコの笑顔で吸う通りすがりの変態、ではなく私の専属メイドのシアである。彼女に出会ってまだ1ヶ月程度だが、出会った時以上に変態化していっているのを見るにとても仲良くなれた、と思う。(その判断基準もどうかとは思うが)
「セレーネ様。今日の王子とのお茶会、私もついて行ってよろしいですか?」
「さっきまで王子だろうがなんだろうが海に沈めてやると言っていた人が何言ってるの」
今日王宮で行われるのは、名目上は婚約者同士の団欒♡お茶会であるが、実際は先日私の王子に対する失言についてお父様が設けてくださった謝罪タイムである。正直頭に血が上り過ぎてしまったとはいえ、王子のことを『可哀想なやつ』呼ばわりしたことは反省している。王族だから、と私に対する暴言に関する追求はされなかったのが不満ではあるものの、王子との婚約を解消されて両親から愛される道筋がなくなってしまわないよう誠心誠意謝らなければいけない。
「でも、ほら…私の髪の毛は黒色ですから、謝罪をする時に場が引き締まる色合いじゃないですか?」
まだ引き下がって無かったか。
「ちょっと黙って」
まだブツブツと自分もお茶会へ参加させてくれと言いながら高速で私の身支度をしているシアを思考から完全に遮断し、頭の中で復習を念入りに行う。
カイン王子には、3つ下の第二王子がいる。側室の子ではあるものの、カイン王子と比べて物腰柔らかで学に対する姿勢も積極的であることから、一部の貴族たちから支持を受けている、レオン第二王子。カイン王子も、自分の席を脅かすかもしれない彼の存在のせいで焦って周囲に自分が次期国王だと見苦しく言いふらすハメになってしまっているのだろう。そこへ私が『王の器じゃない』とかいう特大ヒットを打ち込んでしまった今、彼の精神はボロボロに決まっている。
そこで、出番になるのが、大して役にも立っていないこの『公爵令嬢』の地位だ。家では腫れ物扱いされている私でも、下の身分のものに物を言って聞かせれる程度の地位についている。それに、一応この1ヶ月でマダム・エリザベート監修のもと、私は立派な淑女らしいマナーを身につけることができた。皇太子妃として十分ではないものの、不足はない、と思っている。自分のこの長所を王子にプレゼンして、認めてもらえれば円満な婚約関係を築けるのではないか。
私はコルセットを閉められながら、つぶやいた。
「良い考えね…」
「え?!私がセレーネ様の愛人としてお茶会に乱入する案がですか!?」
「違うわ」




