プロローグ
「お待ちください!セレーネ様!そのお怪我で動いてはなりません!」
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ずっと、ずっと、『愛』が欲しかった。
家の周りは夕食の匂いに包まれて、家の中へ入れば母親が笑顔で『おかえり』と言う。父親も帰ってきたらみんなで机を囲んで食事をする。寝る時には両親に挟まれて、ぬくもりを一身に感じながら眠りにつく。
古ぼけた離れの家で、読んでいた絵本に描かれていた、そんな『愛』。
けれど、神は私にそれを与えてはくれなかった。
だから、私は自らの手で『愛』を掴み取ろうと努力した。
『セレーネ。この王子と結婚すれば、まだお前には価値がある。』
分かりました。お父様。必ず、彼と結婚いたします。そうすれば、私を見てくれますか?
『感情がないみたいで気味が悪いのよ』
分かりました。お母様。ありったけ前髪を伸ばして、死ぬまであなたにこの醜い顔を隠しましょう。そうすれば、私を見てくれますか?
愛してくれますか?お父様。お母様。
――それでも、私が家族の肖像画に描かれることは無かった。
あぁ。どうしても、どうやっても、掴み取れない。私はただ、『愛』が欲しいだけなのに。
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――だんだん薄れる視界の中、私は一筋の光を見た。
私の体を暖かく包んで彼は言った。
「この馬鹿!俺がいるだろう?!あんな奴らじゃなくて…俺の妻に…家族になれ!俺はお前を愛している!」




