ポッキーの日
「それはどういう状況なんだ…」
アロウは呆れた。
「うむぅ」
「はいはい、食べながらしゃべらない。」
シンの口にはパン生地をねじって焼いた棒状の菓子が咥えられている。
しかし右手はインクでべたべた、左手にはゴミ満載のちりとりを握っていて、菓子をいったん置くことも難しかったようだ。
結果、もくもくと口だけで棒菓子を食している。
「ながら食いはダメって言っただろ」
「ふみゅう…」
しょんぼりした顔になるシン。
きっと口に入れた後で何かトラブルがあったのだろう。
「手伝ってやるよ」
「う?」
アロウはシンの肩に手を置くと、棒菓子の先端にぱくっとかじりついた。
「むー!?」
びっくりして固まっているシンをよそに、端から食べ進めていく。
ぽきん、と棒菓子がシンの口元で折れた。
菓子のほとんどがアロウの手元に残り、さくさくと音を立ててあっという間に菓子がなくなる。
ぺろりと指に残った菓子くずまで食べると、アロウはにやっと笑った。
「ごちそうさま」
「あ……アロウのばかー!!ボクのお菓子!!」
シンがインク付きの手を振り回すので、アロウはさっさと部屋から退散する。
耳まで赤くなったシンを間近で見れて、彼は満足だった。
あとでインクをふき取るための水桶と布巾を持っていこう、と井戸のある裏へ上機嫌で降りて行く。
菓子そのものは、かごの中にあと数本残っていたのだ。
きいきいとシンが怒るのは、単に菓子を食べられたせいだけじゃないはず……きっと。たぶん。




