昴
昔から不思議なものをちらほら見かけていたシンだが、身近にそういったものがあれば、当然それに注視する。
最近では意識的に「見えないもの」を見ることができるようになっていた。
「……すっごいぴかぴかしてる」
空気中にふわふわと、青白い光が残滓となって漂っている。
それは点々と路地裏へと続き……
「アロウみっけ」
「……ん?なんだ、シンか」
納品帰りのアロウが振り返る。相変わらず気配には敏感だが、痕跡はだだ漏れなのがシンにはなんだかおかしい。
「おかえりぃ。待ってたよー」
「お前の目当てはこっちだろ」
駆け寄るシンに、アロウは荷物を抱えなおしてお土産の袋を取り出す。
「えっへへーばれた?」
悪びれないシンに肩をすくめてアロウは宿へと歩き出した。
髪から、裾からふわふわと人には見えない青い光が漏れていく。
(きれいだなあ)
土産のほかほかの蒸しパンをさっそくかじりつつシンは眺める。
あんなに光っていては、いいエサになってしまうのではないかと心配になるが、幸いちょっとした「悪いもの」はその光に焼かれて消えてしまうようだ。
「……シン?」
遅れているシンをアロウが振り返るので、シンは足を速めた。
「今行く」
通りの先、坂道の向こうにとっぷりと暮れた夜空が見えている。
そこには青白い六連星が明るく輝いていた。
星は旅するときには目印の一つとなるという。
(ボクの昴星だ)
差し伸べられた光まとう手に向かって、シンは駆け寄った。




