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風に乗って[6.5話]

弓使いの冒険者・アロウと一緒に仕事をすることになったみなしごのシン。

昨晩の不始末の罰として、アロウに課題を与えられている。

一方のアロウはというと、二段ベッドの上の段に登って片づけをしていたのだが…

 ごんっと音がした。

「―ってぇ…」

 二段ベッドの上から身を乗り出していたアロウが奥に引っ込む。

「ぷっ…」

 思わずシンは吹き出した。

「ばーかばーか」

 ケラケラ笑うシン。

「お前なあ…」

 アロウは座り込んで頭をさすりつつ、シンが投げ入れてきたたくさんの紙屑を見下ろした。

 せっかく片付けていたのに、またちょっと散らかってしまった。

 そのまま投げ返してやろうかと思ったが、ふと思いついて丸まった紙の一つを広げる。


 静かになった上を見上げてシンは不安そうに眉を寄せた。

 怒らせただろうか?

 そう思ったとき、ふわりと空気が動いた。

 すいっと顔の横を何かが飛んで行った。

 その軌跡は軽く、見慣れたごみや石つぶてとは動きが全く違う。

 後ろの壁に当たってかさりと音を立てて落ちたそれは、折れ曲げられた紙だった。

 上から次々と紙が飛んでくる。

 風を受けふわふわと飛ぶ光景に、シンはぽかんと口を開けて見入っている。

 ペーパーダーツと呼ばれる紙製の矢だ。

 シンは初めて見たらしい。

 アロウは満足そうに唇を緩め、片付け終わった上の段から降りた。

「なにこれ!!」

 途端にシンが目を輝かせて駆け寄る。

「折り紙だよ」

「おりがみ…」

「紙を折っていろんな形を作る。この形は風を受けて飛ぶ"紙の矢"」

 そう言って先ほど落ちた紙を拾い上げて、開く。

 元の形は普通の四角い紙だった。

「やってみるか?」

「うん!」

 シンは元気に返事をする。

 折り方を教えながら、アロウは「それくらい素直に課題もやってほしいもんだ」と呟いた。

 部屋をシンが折った紙飛行機が飛び交う。

 その一つは風に乗って、窓から外へと飛び出していった。

 自由に外の世界へ。

 その最初の一歩が始まろうとしていた。

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