#16
来客の正体は、シドさんより少し下…20代前半くらいの女性でした。
神妙な面持ちだったので、シリアスな依頼だということはすぐに分かりました。
私は、依頼人を応接スペースに案内し、お茶の用意をしました。
シドさんが話を聞きます。
「本日は如何なさいましたか?」
「あの…ちゃんが…って」
女性は声が震えていて、上手く喋れていません。
すかさずシドさんが声を掛けます。
「ゆっくりで大丈夫ですよ…?お茶も是非飲んでください」
「…す…すみません…」
女性はお茶を飲むと、少し落ち着きを取り戻したようです。
これは、シリアスな依頼に違いありません…
まさか…さっきアカネさんが言っていた、薬物関連の…!?
私は姿勢を正し、依頼者さんの話を聞く準備をしました。
「では…改めて…あの…キィちゃんが居なくなっちゃったんです…」
行方不明者…ですか…
「それで…普段は1日の内、1回は家に帰ってくるんですけど…もう3日も帰ってこないんです…」
3日も音信不通…何か事件に巻き込まれたのでしょうか…
「普段のお散歩コースとか…溜まり場になってる所とか…色々探したんですけど…全然いなくって…近所の木の上とかも…1本1本…全部…見たのに…」
ん?
私は依頼主さんに聞いてみたのです。
「キィちゃんって…もしかして猫ですか…?」
「…?…はい…そうですが…」
私は思わずずっこけそうになってしまいました。
シドさんが表情一つ変えていないのを見て、何とか耐えましたが。
「なるほど…では飼い猫のキィさんの捜索依頼ということですね…?」
シドさんは猫にまで『さん』を付けるんだ…
「はい…そうです…探偵事務所にも行ってみたんですけど…忙しいみたいで、相手にしてもらえなくて…」
「お任せください!依頼料さえ頂ければ何でもしますよ!『何でも屋』ですから!」
依頼主さんの顔が晴れました。
「ほ…ほんとですか…!?あ…ありがとうございます…!!」
その後、キィちゃんに関する情報を聞き取り、すぐに捜索を開始する旨、見つかったら連絡する旨をお伝えしました。
依頼主さんもご自身での捜索は続けるみたいでしたので、依頼が成立すると、すぐに事務所を出ていかれました。
私は、お茶を片付けながら、シドさんに言いました。
「私…てっきり薬物関連の依頼かと思いました…」
「ふふ…そうですか…たしかにアカネさんから話を聞いた直後でしたからね…!」
「はい…」
「でもウチは『何でも屋』ですから…!依頼も多岐に渡りますし…そうそう予想は出来ないものですよ?」
シドさんはニコリと笑いました。
早とちりしていた自分が何だか恥ずかしいです…
「とにかくキィさんを探しに行きましょう…すぐに見つけられると思います…ミカさんも出る準備をして下さい!」
「分かりました!」




