聖女テイラーの内心
雨の多い時期を過ぎ、
夏休みも終えて、夏の暑さが名残を残す頃。
テイラーは、自室で頭を抱えていた。
「攻略キャラたちのガード硬すぎない……?」
競技大会での攻略イベントでは、誰とも一緒にチームになれなかった。
……それは仕方ない。
くじ運がなかったと、自分自身に言い聞かせることにした。
同じチームじゃなかったから、二人三脚でペアになれなかっただけ。
――同じチームでも二人三脚に選ばれたのか怪しい、という事実を、テイラーは知らない。
同じチームじゃなかったから、借り物競争で私を選びづらかっただけ……そうに違いない。
――同チームじゃなくても、手を取ってゴールしたパトリックとノエルのことを、テイラーは考えないようにしていた。
「(……というか、イライジャよ!)」
テイラーは、騎馬戦の記憶がすっぽりと抜け落ちていた。
しかし、その前のイライジャとのやり取りは、覚えていた。
「絶対、イライジャは、わたしを保健室に誘い出し、後からイライジャが保健室に来てたはずなのよね……」
――あまりにも都合よく記憶を捏造するテイラー。
テイラーは、ゲームでのイライジャルートのシーンを思い出す。
――校庭に響き渡るアナウンス。
保健室では、その歓声はただのBGMの変わりだった。
『やっと、二人きりだ……』
「イライジャ……先生……?」
『君が、誰かに手を引かれて走る姿なんて、見たくなかった。』
イライジャに手を掴まれた後、
どさり、と保健室のベッドに、押し倒される貴方――
「……その後、好感度次第でちょっと“大人”な展開になるのよね。」
「激重愛情持ちの魔王、最高!」
テイラーは、うふふっと思わずニヤけてしまった。
――テイラーは自分が借り物競争で、誰にも選ばれなかったことを都合よく忘れた。
部屋の中で、くるりと踊るように回り、テイラーはベッドへ仰向けにダイブした。
「一から好感度を上げるのは面倒臭いけど……好きになったら、すぐのイライジャがいるんだもん!」
“逆ハーエンドも夢じゃない!”
テイラーは、右手を天井へ伸ばした。
「あともう一人、好感度が上がればいいんだけど、みんなゲームとちょっとずつ性格が違うのよね……」
ベッドから起き上がり、テイラーは机に向かう。
紙とペンを用意して、ゲームの攻略キャラたちの性格を書き出していく。
「一番変わってないのは、カイルよね!」
“頼れる兄貴肌!”
テイラーは、紙に簡潔に書いていく。
「アーリヤも、あんまり変わってない気がするけど……」
“ちょっと近寄り難い雰囲気なのよね”
アーリヤのことを書き足す。
「最初、ヘーレーが無口キャラになっちゃったって思ったけど、地下迷宮イベントでクラスのみんなと話すようになったし。」
“恥ずかしがって、わたしとはあんまり話してくれないけど!あと、ツンデレではないかも?”
ヘーレーに思ったことを書いていく、テイラー。
「ノアが一番、変わってる!なんで小悪魔系が高飛車な感じになってるのよっ!」
“かっこいいのは変わらないけど”
ノアのことを書き足して、テイラーは手を止めた。
「……あれ?ペイジ先生とイライジャって、ゲーム通りじゃない……?」
大人の優しいながらも、妖艶な雰囲気を醸し出すペイジ。
周りに人がいる時は素っ気ないが、二人きりになろうと画策したイライジャ。
「もしかして、先生たちを狙うのが“正解”だったりする……!?」
――ペイジもイライジャも、ゲームとはまるっきり変わっているが、テイラーが知る由はなかった。
「同い年の攻略キャラをしか目になかったけど、先生か……うん!いいかもっ!」
“これから、先生たちに積極的にアプローチをする!”
と、大きく書いて、テイラーはぐるぐると丸をつけた。
テイラーは、ぐーっと腕を上に伸ばし身体を解した。
一息つき、暦を確認する。
「次の好感度上昇イベントは、学園祭かぁ。」
学園祭まで一ヶ月。
「アーリヤたち、同い年組には悪いけど、先生二人を攻略していくぞ!」
よしっ、と呟いてペンを机に置いた。
「先生たちを攻略したら、みんなを攻略したも同然。」
待っててね、みんなー!と、テイラーはやる気を目に宿した。
――テイラーのやる気だけが、見事に空回っていた。
評価、ブクマ、レビュー、感想ありがとうございます!
大変励みになっております!
引き続き、どうかよろしくお願いいたします!




