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パトリック・ブルックスの体面‐八


待機所の裏手から戻ってきたアーリヤとノア、それとカイル。

三人に気付いたパトリックが声をかける。


「三人とも、ちょっと耳に入れておきたいことがありまして……」


「パティ!なんだい?式の日程の確認かい?」

「しません。違います。」


アーリヤの戯言と、後ろの三姉妹の黄色い声を、パトリックは無視した。


「そうだ、こっちも伝えたいことがあるんだ。」


真剣な顔をするアーリヤに、パトリックは不思議そうな顔を浮かべる。


「この学園に――」


『次の種目は、騎馬戦です。参加者は校庭に集まってください。』

みんな、放送のした方へと視線を向けた。


「大事だろうけど、有事ではないはずだから、競技が終わったら話すね。」


「私の話も似たようなものなので、大丈夫です。」


三姉妹を置いて、四人は校庭へと向かった。


―――


しれっと赤組に混ざろうとしたアーリヤを、ノアが引きずって行く。

アーリヤたちと立ち代わるようにパトリックとカイルは、ヘーレーと合流した。


「……まずいことになりました。」

「まずいこと?」

カイルの二人三脚のペアだった先輩も加わり、四人は円陣を組んでいた。


「ええ、大分まずいですよ。」

パトリックはそう言うと、ちらりとアーリヤたちの方を見た。


――ノエルがいた。


何故、彼女が参加してるのか。

何故、彼女がアーリヤたちの騎手なのか。

パトリックは、ざわざわと騒ぎ出す胸の奥を、ぎゅっと押さえつける。


「さすがのパットも、婚約者殿と相対するのは怖いのか?」

ニヤニヤと茶化すようにカイルは、パトリックに尋ねた。


「違います」と間を置かずに反論して、深く息をつく。


「……いいですか。このメンバーはいわゆる、“接近戦特化”です。攻撃力ならば、負けることはないです。」

その後、再びアーリヤたちの方を見る。


「そして、あのチームは……“遠距離最強”と言っても過言ではないでしょう。」

パトリックの言葉に、ヘーレーが「そんなにか?」と懐疑的な目をアーリヤたちに向ける。


「詠唱に時間がかかりますが、高威力の魔法が打てるノア。」

ノアを見ていた先輩の頬に、たらりと汗が伝う。


「魔法も剣術も使える、まさに“万能”のアーリヤ王子。」

アーリヤに目線を移したヘーレーが、ごくりと生唾を飲み込んだ。


「そして……防御魔法が得意なノエル。彼女が入ったことで、あのチームに傷を付けることは、ほぼ不可能です。」


ノエルから目を離し、カイルがふむ、と顎に手を置く。

「たしかに……地下迷宮の時、彼女がいてくれたからオレも最小の怪我で済んだわけだしな……」


四人の中で重たい空気が流れる。


――パンッ

手を叩き、空気を変えたのはカイルだった。


「ここで考え込みすぎても仕方ない。」

それに、あれだ!とカイルは言葉を続ける。

「ノアが攻撃する前、なんなら婚約者殿が防御魔法を発動させる前に、大将の証を奪えばいい!」


太陽のような笑顔を浮かべるカイル。


「簡単に言ってくれますね……」

ため息をつき、しらけた顔でパトリックは、カイルを見た。


「――まあ、ごちゃごちゃ考えるより、わかりやすくて、いいですね。」


パトリックは、小さく笑った。

彼に言われると、なんでもない事のように思えるから不思議だな、とパトリックは考えていた。


「良いぞ、我もその考えに賛成だ。」

ヘーレーもニヤリと片側の口角を上げた。

「ぼ、僕も……」と先輩も控えめに賛同してくれた。


「それなら、どのチームよりも早く、王子たちを潰しに行くとしましょう。」

悪い顔をしながら、パトリックは言い放った。

――優勝をするのは、私たちだと。


―――

「……私に身長と筋力があれば、カイル兄さんを騎手にできたのに……」

パトリックはカイル、先輩そしてヘーレーから成る馬に乗る。

「そしたら優勝間違いなしでしたでしょうに。」

本当に残念だ、という顔をしながら彼女は呟いた。


「「それだと、別人だからやめてくれ。」」


カイルとヘーレーの声がキレイに重なった。


『それでは、始め!』

放送の声で、一斉に各チームが動き出す。


パトリックたちが目指すのは、もちろんアーリヤたちのチームだった。


「先輩殿!もっと早くできないか!?」

カイルが左後ろの先輩に声をかけた。

「む、無理……」

今のカイルの早さに、着いていくのがやっとだった。


「あははは!足がもげるぞ、これは!!」

あまりの早さにヘーレーは笑うしかできなかった。


アーリヤたちを見据えたカイルが、足の回転数を上げる。


「――貴方たちを制圧すれば、勝ったも同然です。……ノエルっ!」


パトリックが、ノエルが付けている大将の証へと手を伸ばす。


――バチンッ


伸ばした手が、少し痺れる。

何かに弾かれた音がした。


「……お前たちが考えそうなことは、お見通しなんだよ。」


そう言い放ったのは、悪い笑みを浮かべたノアだった。


「チッ、最初っから防御壁を張るとは、やりますね。」

「僕たちも、負けられないからね。」

パトリックの言葉に、アーリヤが爽やかな笑顔で答えた。


「というか、私のノエルになんて事させるんですか。」

パトリックはアーリヤに対して言ったつもりだったが、答えたのはノエルだった。


「私もっ……私も、」

ノエルは意を決したかのように、俯いていた顔を上げた。


「パディ様の横に並んでも、恥ずかしくない人間になりたいんですっ!」


「ノエルはそのままでも……」


「私が嫌なんですっ!」


周りでは、大将の証を奪い、奪われる激しい攻防が行われていた。

その中で、パトリックたちとノエルたちの周りだけは、どのチームも入り込もうとしなかった。


――が、それに声を張り上げた者がいた。


「こんなところで、いちゃついてんじゃないわよっ!“パトリシア・ブルックス”!!」


目を血走らせ、華美な装飾が施された短剣を持った、

――テイラーだった。


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