表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/63

パトリック・ブルックスの体面‐五


激しく木刀を打ち合い、二人とも身体をくるりと一回転させた。

息を整えるため、距離をとる。


「赤薔薇は……本当に強いのだな……」

ヘーレーが二人の攻防を見て、独り言のように呟いた。

カイルはヘーレーの言葉を聞いて、嬉しそうに「そうなんだっ!」と返事をした。


「パットとオレたちでは、どうしても身体的な差が生まれてしまう。それでも、オレたちと変わらない修行をこなしてきたんだ!」


目を輝かせ、自分の事のようにパトリックの自慢をするカイル。

ヘーレーは少し、気押されてしまった。

彼は再び、パトリックとアーリヤに視線を向けた。


パトリックの突きを、アーリヤは最小限の動きで躱す。

躱した勢いで、アーリヤが身体を右回転させ、横薙ぎをする。

咄嗟に反応して、パトリックは木刀で受け流す。


少し息を切らしながらも、アーリヤは楽しそうにパトリックに話しかける。


「やっぱり強いな、パティは。」


肩で息をしながら、パトリックが答えた。


「……自分でも驚いてるところですよ。」


――夢の中の未来では、剣術どころか運動なんて、殆どしなかった。

首を斬られたくない。

違う未来を掴み取るための、手段でしかなかった。


しかし、パトリック自身が思っていたよりも、彼女は身体が動く人間だったらしい。

剣術の修行は辛くはあったが、苦ではなかった。

勉強と一緒だ。

自分の身体が想像通りに動かせるのは、なんとも言えない達成感があった。


「ずっと続けばいいなぁ、そしたらパティを独り占めできるのに。」


まるでダンスを楽しむかのように、アーリヤは無邪気な笑顔で言い放った。


「嫌ですよ、やるならカイル兄さんとやっててください。」

パトリックは嫌そうな顔で、私より鍛錬になりますよ、と吐き捨てた。


「私は、一抜けです。」


そう言って、パトリックは木刀を構え直し、アーリヤに向かって低姿勢で走る。


アーリヤも勝敗を決めるつもりで、木刀を振りかぶる。

振り下ろされた木刀を避け、パトリックはアーリヤの首筋に木刀を当てた。


「次の試合も頑張ってね、パティ。」

「もちろんです。」


姿勢を直し、握手をするパトリックとアーリヤ。


『……ッ、勝負あり!勝者、パトリック・ブルックス!』


校庭内に、盛大な拍手の音だけが響き渡る。

いつまでも手を握っているアーリヤの手を振り払い、パトリックは踵を返す。


カイルが、よっ!と手を挙げた。

ニカッと効果音がつきそうな笑みを浮かべ、アーリヤとパトリックに声をかける。


「二人とも、お疲れさん!」

「お疲れ様です。」


アーリヤは、肩をすくめる仕草をする。


「パティに負けてしまったよ。」

「今までの、アーリヤとトリシアの戦績で言うなら、五分五分ってところじゃないか?」


「詳細に言うなら、千九十勝、千九十負。五引き分けだね。」


「王子、数えてるんですか?もっと有意義なことを覚えた方がいいですよ。」

「これ以上に有意義なことはないよ!」


「アッハッハッハッ!さすがに擁護できないぞ、アーリヤ!」


会話をしているとカイルの後ろから、暗い顔をしたヘーレーが、前に出てきた。


「赤薔薇よ……すまない。我は、赤薔薇を少々見くびっていたようだ。」


「……戦う前に謝らないでください。それだと、ヘーレーの方が強いみたいに聞こえるじゃないですか。」


ヘーレーが顔を上げる。

パトリックは、ニヤリと悪い顔を浮かべていた。


「私が、ヘーレーに負けた時になら、“想像よりも弱かった”って謝っていいですよ。」

ですが、とパトリックは、言葉を続ける。


「貴方にも勝つので、賞賛の言葉でも用意しておいてください。」


「……その前に、次の対戦者に勝ってくださいね。」

パトリックの言葉に、

ヘーレーは、きょとんとした顔を見せた後、笑いだした。


「大口を叩いたな、我が赤薔薇よ!よかろう、万が一我に勝てたなら、惜しみない賛辞を送ろう!」


『次!ヘーレー・イグニス、前へっ!』


先生に名前を呼ばれ、ヘーレーが歩き出した。

「我とて、負ける気はサラサラないがな!」

振り向きざまに、彼は笑顔を見せ、ひらりと手を振った。


―――

『そこまでっ!勝者、ヘーレー・イグニス!』


拍手と歓声が巻き起こる。


アーリヤは感情が読めない笑顔を浮かべていた。

カイルは感心した顔で、ヒューと口笛を鳴らす。

何かを感知したかのように、左の待機所を見たノア。

パトリックは拍手をしながら、ヘーレーの動きの癖を頭に叩き込んでいた。


こちらに近づいてくるヘーレーが、パトリックの前で止まった。


「楽しみにしているぞ、我が赤薔薇よ。」


「ええ、ご期待に添えてみせましょう。」


笑顔に威圧感を加え、ヘーレーに突っかかろうとするアーリヤ。

カイルは、「やめろ、国交間に関わりそうだからやめろ。」とアーリヤの首根っこを掴む。


――ノアだけが、待機所から漂う、妙な違和感に反応していた。



評価、ブクマ、レビュー、感想ありがとうございます!

大変励みになっております!

引き続き、どうかよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ